表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【20章】目指すは始まりの異界!探検隊ルイーザと不思議な物語  作者: 旅立 マス
11章~17章 サウスエンドランド編 エビローグ 海の静けさ
192/203

2

――さようなら、サウスエンドランド。


色々あったけれど、今ではいい思い出だ。

船の上でそんなことを考えていると、クロックが近づいてきた。


さっきまで、フーラン村の人たちと再会していたようだ。

頬には涙の跡が残っている。


「フーラン村のみんなとも、ちゃんと話せたみたいだな」

「ああ、懐かしい顔ばかりだったよ。嬉しかったけど、やっぱり寂しくもあったな」


クロックは小さく笑いながら、少しだけ空を見上げた。


「これから、どうするんだ?」

「オイラかい? まだ詳しくは考えてないけど……村に戻ったら、旅立ちの準備 をしようと思う」

「旅立ち?」

「うん。オイラ、世界一の鍛冶師 になるのが夢なんだ。そのためには、色んなものを見て、学ばないといけないと思ってさ」


クロックの声には、迷いのない力強さがあった。


「自分の村の中だけじゃ、視野が狭い。だから、もっと広い世界を知りたいんだ」

「そっか……」


改めて思う。クロックは本当にすごいな。

自分の道をしっかり見つめていて、それに向かって歩き出そうとしている。


「なんだかんだ言って、クロックの装備には何度も助けられたよ。きっと、お前なら最高の鍛冶師 になれるさ」

「本当か? それなら、またいつかオイラが作った装備を使ってくれよ!」

「もちろん。楽しみにしてる」


そう言うと、クロックは嬉しそうに笑って、フーラン村の人たちのもとへ戻っていった。


自分はしばらく、ただ海を眺めていた。

どれくらいの時間が経っただろうか。


ふと思う。


もし自分も、クロックくらいの年齢のときに、こんな風に大きな夢を持てていたら――人生は違っていただろうか。

まっすぐ前を向いて、自分の進むべき道を信じられていたら、今とは違う自分になっていたかもしれない。


クロックが、少し眩しく見えた。


でも――

今の自分にだって、夢がないわけじゃない。


「始まり異界に行く」


そんな途方もない目標だけど、それでも俺は、そのために本気で頑張っている。

ここまで一つのことに熱中したのは、たぶん初めてだ。


これまでは、色々なことに手をつけても、どこかで挫折して、諦めてしまうことばかりだった。

けど、今の探検隊の旅は違う。


これは、僕が 初めて本気で向き合えるもの なんだ。


だったら、立ち止まっている場合じゃない。

この旅を、何としても乗り切る。

そうして、必ず自分の夢を掴んでみせる。


僕は、船の上で静かに拳を握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ