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サウスエンドランドのその後は、アスター軍とディンゴ率いるレジスタンスの人たちに任せ、自分たちはアスター軍の船で、西洋町まで送ってもらうことになった。
この町は、ここへ来るときにも立ち寄った場所だ。
「ジュン、朗報よ! 私たちの探検隊のランク、シルバー+ランクに上がったわ!」
探検隊用のタブレットを見ていたルイーザが、弾むような声で報告してくる。
だが、聞き捨てならない単語があった。
「ん? シルバー+? なんか半端な感じがするんだけど……」
「そうね。ゴールドランクに上がるには、シルバー+++ まで昇格しないとダメみたい」
――なんだそれ。
「いや、ゴールドまで遠すぎない!? てっきり、シルバーの次はゴールドだと思ってたのに」
「それだと簡単すぎるじゃない? ほら、ちゃんと段階を踏んで強くならないと」
「うーん……まあ、ブロンズ → シルバー → ゴールド っていう三段階だけじゃ、ちょっと安っぽいか」
確かに、すでにゴールドになってたら「伝説の探検隊!」って感じはしない。
でも、シルバー+++ってなんだよ……。
「それとね、私たちのレベルも上がったの!」
「おおっ! ついにレベル6か! ……って、上がるの早くないか?」
そういえば、クルールはレベル8だった気がするが、そこにもう少しで追いつくのか。
「まあ、これまでの冒険が濃すぎたからね。舟堀の戦い、クリスタル洞窟、サウスエンドランド奪還戦……どれもヤバい戦いだったし」
「確かに……。普通の探検隊がやる仕事じゃないな」
僕たち、本当に探検してるのか? っていう疑問すら湧いてくる。
「レベル7くらいまでは、わりとすぐ上がると思うわよ。そこが、一人前と見習いの境目 だから」
「そっか。レベル7になれば……クラスチェンジ もできるんだよな」
この世界の探検隊は、レベル7になると特定の職業に進むことができる。
それによって能力も変化し、より専門的な戦いができるようになる。
「そうなれば、やっと“見習い”って肩書きが外れるのか……」
「そうね。だから、“見習いヒーロー” って肩書きともお別れよ!」
「……いや、“見習いヒーロー”って、そもそもなんなんだよ……」
まあ、どんなクラスになるかは楽しみだけどな。
これまであっという間だったけど、ルイーザと探検隊を組んでもうすぐ一年か……。
色々あったな、本当に。
「とりあえず、西洋町に戻ったら……次はどこに向かう?」
「うーん……どうしようかねぇ」
僕たちの旅に、最初から明確な目的なんてなかった。
ただ、なんとなく進んで、行く先々でトラブルに巻き込まれて……気づけば戦ってばかりだった。
「“始まり異界” の手がかりも、結局何も見つからなかったしな……」
今のところ得たものは、鶴小島で見つけたタグ だけ。
けど、その正体も分からないままだ。
「このタグ……何なんだろうな」
すると、船の甲板から顔を出していたウェンディが、俺たちを呼んだ。
「おーい、二人とも! そろそろ船が出るってさ」
「あ、もうそんな時間か。……よし、じゃあ行こうか」
――まあ、次の旅のことは、またその時考えればいいか。




