17-6
「任せてよ!」
クロックはニヤリと笑いながら、ドラゴンに向かって一気に駆け出した。
「ね、ねえ、あの子、大丈夫なの!?」
ウェンディが不安げに叫ぶ。無理もない。目の前には巨体のドラゴン。対するクロックは小柄な少年。普通なら勝負にならない。
だが、クロックの目は真剣そのものだった。
その瞳には、確かな自信と覚悟が宿っている。
「クロックなら……きっとやってくれる。」
ジュンは確信はなかったが、なぜかそう信じた。
ドラゴンが咆哮を上げ、クロックに向かって鋭い爪を振り下ろす。
「見切った!」
クロックは寸前でしゃがみ込み、ドラゴンの股をすり抜けるように回避した。
「おお!よけた!」
「いや、クロックが小さくて当たらなかっただけじゃ……?」
しかし、結果としてクロックはドラゴンの背後を取ることに成功した。
──だが、相手はドラゴン。
巨体とは思えない俊敏な動きで振り返り、鋭い目でクロックを睨みつける。
「まずい!正面に戻られた!」
次の瞬間、ドラゴンが大きく息を吸い込み、クロックに向かって灼熱の炎を吐き出した。
「クロック!!」
「いや、ちょっと待って!様子が!?」
──ドカァン!!!
轟音と共に、ドラゴンの体が突然爆発した。
「えっ!? 何が起きたの!?」
ジュンは驚きの声を上げたが、すぐに思い出した。
──あの戦い方。
「……あれは!」
エドガー平原でハイゴブリンを倒した時の戦法だった。
そういえば、どこかでクロックにこの話をしたっけ。それを実践したのか!?
「彼、爆発物なんて持ってたんだ……」
クロックはしたり顔で笑いながら、ドラゴンの怯んだ隙を見逃さなかった。
「よし、今だ!」
クロックは勢いよく飛び上がり、ドラゴンの翼に槍を深く突き刺した。
「決まった!」
クロックは槍がしっかり刺さったのを確認すると、すぐにウェンディに叫んだ。
「ウェンディ!雷属性限定だけど、避雷針の要領で攻撃を当てられるかも!」
「なるほどね。わかった、任せて!」
ウェンディは両手を掲げ、強力な雷を呼び寄せる。
「雷よ、貫け!!」
雷撃が一直線に放たれ、クロックの槍を伝ってドラゴンの体を貫いた。
「グオオオォォォッ!!」
ドラゴンが激しくのたうち回る。空を飛ぶ力を失い、そのまま地面へと墜落した。
「やった! うまくいった!」
ジュンはこの一瞬を逃さなかった。
「よくやった、クロック。このチャンスを活かすよ!」
ジュンは全速力で駆け寄ると、渾身の力で剣を振り下ろした。
──ドラゴンの翼を、一刀のもとに切り落とす!
「これで、とどめだ!!」
ジュンは力強く叫びながら、ドラゴンの頭に剣を深々と突き立てた。
「グアアアアアア……!」
──ドラゴンの悲鳴が響く。
やがて、その巨体がガクリと力なく崩れ落ちた。
長い戦いの果てに、ついにドラゴンは討ち取られたのだ。
「……終わった?」
ルイーザが息を切らしながら確認する。
「ああ、おかげで勝つことができたよ」
ジュンとルイーザは互いにハイタッチを交わした。
全員の顔には達成感と安堵の色が浮かんでいる。
──この瞬間、サウスエンドランドの戦いは終結した。
──ジュンたちアスター軍の、勝利で。




