17−5
「させるか!」
突如、飛び込んできた影が巨大な炎を盾で弾き返した。
「ティム!?」
「やっと追いついた。まさか、こんな激しい戦いになっているなんてな……!」
ティムは盾を構えたまま、炎の余熱を振り払うように腕を振った。
「人の姿だったのに、いきなりドラゴンに変わったんだ!」
「人がドラゴンに……? まるで御伽話に出てくる人龍族みたいな話だな……」
人龍族――聞き覚えのない言葉だったが、ティムがいた世界では幻の存在として伝わっているらしい。だが今は、そんなことを深掘りしている暇はない。
ティムに、このドラゴンを倒せば戦争が終わることを伝えた。そして、ドラゴンを残して逃げた張本人の存在も。
「……逃げた奴も気になるが、今はこいつを倒せばいいんだな?」
ティムの言葉に、アスター軍の兵士たちが次々と集結してきた。
「みんな、これが最後の戦いだ! こいつを倒せば、この大陸に平和が戻るぞ!」
ジュンの叫びに、兵士たちが力強く雄叫びを上げた。士気は最高潮に達した。
全軍、突撃――!
「おおおおおおおお!!!」
戦士たちが一斉に武器を振りかざし、ドラゴンへと殺到する。しかし――
ゴォォォォォォッ!!!
灼熱の炎が戦場を覆い尽くし、突撃してきた兵士たちは一瞬にして跳ね飛ばされた。
「ぐあっ!」
「な、なんだこの力は……!?」
「闇雲に戦っても勝てる相手ではないわ!」
ウェンディの声が響く。だが、ドラゴンはその隙すら与えない。
(まずい……以前戦ったドラゴンとはレベルが違う!)
タルテン鉱山での戦いのように翼を狙って動きを封じるのは難しい。あの時の相手は本能のまま暴れていただけだった。だが今度の敵は――理性を持つドラゴン。
「最悪だな……隙を見せるとは思えない……!」
そして、事態はさらに悪化する。
バサッ――ッ!!!
「アイツ、飛ぶのかよ!!!」
ドラゴンが空へ舞い上がると、眼下のジュンたちを見下ろし、口内に灼熱のエネルギーを溜め始めた。
「ヤバい……ブレスが来る!」
ゴォォォォォ!!!
巨大な火球が降り注ぎ、建物が一瞬で崩れ去る。
「みんな、避けろ!!!」
ティムが咄嗟に退避命令を出し、なんとか全員が火球を回避した。しかし……
「クソッ……! こんな威力、どうすれば……!」
未だ、奴を倒す手段が見つかっていない。
ジュンが歯を食いしばる中、ルイーザがふと何かを思い出したように言った。
「ねえ、ジュン。私たちの武器って、確か――」
「……!」
ジュンはハッとした。
「貫通能力……!!」
そうだ。自分たちの武器は特殊な魔力を帯びており、防御を貫通する能力を持っていた。
「ってことは……あのドラゴンにも通用するんじゃない?」
ルイーザの言葉に、ジュンの頭にある戦法が浮かぶ。
「ウェンディ、鶴小島の時と同じ戦法ならいけるかもしれない!」
――ルイーザの弓を命中させ、その矢をウェンディの魔法で強化する。
この作戦なら、あのドラゴンに対抗できる可能性がある。
「でも、以前よりも素早い相手よ? 本当にできるの?」
「大丈夫かどうかじゃない。やるしかないんだろ?」
ルイーザが力強く弓を構える。
「……本当に、あなたたちの戦いはいつもギリギリね……」
ウェンディはため息をつきながらも、すでに魔力を高め始めていた。
「アイツの動きを制限すればいいんだよね? だったら、オイラに任せてよ!」
クロックが自信満々に言う。
「……何か策があるのか?」
「へへっ、まあな! あのデカブツが自由に飛び回れなくすれば、狙うのも楽になるだろ?」
ジュンはクロックの表情を見て決断した。
「――よし、頼んだ!」
ここからが反撃の始まりだ!!!




