15-5
ジュンは探検隊のメンバーとヒロ、ケンを集め、翌日の作戦を説明した。
「というわけで、明日、僕たちはタルテン鉱山に向かう。」
ジュンの言葉に、全員が一斉に顔を上げた。
ビレア側からの攻撃はアスター軍の本隊が行うが、マルクス側は少人数での奇襲になる。その役目を探検隊が担うのだ。
「いや、待てよ。本当にこれだけの人数で大丈夫なのか?」
ケンが眉をひそめる。
「分かるよ、無謀だって言いたいんだろう。」
ジュンは頷きながら続ける。
「でも、不安定な土地を攻めるのはこれしか方法がないんだ。相手も油断してるはずだよ。不意打ちで決めるしかない。」
「そんな都合良く行くのかしらね…」
ウェンディが溜息をつく。そのとき、何かに気づいたように目を見開いた。
「まさか、ワッフルで突撃する気?」
「正解!」
ジュンは満面の笑みを浮かべる。
「えぇ…」
ウェンディは頭を抱えた。
「つまり、ワッフルで派手に暴れて陽動する間に、鉱山の指揮官を仕留める作戦ね。」
「そういうこと!僕らが注意を引きつけるから、その間にみんなで仕上げを頼むよ。」
「適当すぎない…?」
ウェンディが呆れるが、ジュンは気にする様子もなく笑顔を浮かべている。
「ティムたちも後から援軍として来るって言ってたから、大丈夫だよ。」
そう言われても、不安は拭えない。それでも、この状況ではやるしかないのだ。
ヒロは静かに決意を固めた。
「…ねえ、ウェンディ。ジュンたちって、いつもあんな感じなの?」
「そうね。」
ウェンディは小さく笑う。
「あの似た者夫婦には、鶴小島のときから振り回されっぱなし。でも、なんだかんだで結果を出してくれるのよ。不思議な人たちよね。」
そんな話を聞きながら、ジュンはクロックに向き直った。
「クロック、タルテン鉱山の次はいよいよフーラン村の人たちを助けるぞ。」
「え?村の人たちの居場所が分かったの?」
「ああ、以前戦ったドーガンから聞いたんだ。どうやら中央都市で奴隷として働かされているらしい。」
クロックは拳を握りしめた。
「…だったら、次の戦いは絶対に負けられないね。オイラも全力で頑張るよ!」
「そうだな。絶対に助けよう。」
その言葉に、他のメンバーもそれぞれの思いを抱く。
「リフィリア王国軍がタルテン鉱山で何をしているのか…僕らの任務が本当に開拓のためだったのか、確かめる必要がある。」
ヒロの目は真剣だった。
「ラティスの村は無事かしら…タルテン鉱山は故郷の近くだもの。どうしても気になるわ。」
ウェンディは胸に手を当ててつぶやく。
それぞれの想いが交錯する中、夜は更けていく。
明日――タルテン鉱山の攻略が始まる。
運命の歯車は、大きく動き出そうとしていた。




