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しばらく歩くと、洞窟の出口にたどり着いた。目の前には即席で作られたような集落が広がっている。
建物は簡素だが、どこか力強さを感じさせる。広さはそれほどでもないが、20人ほどの人々が忙しそうに動き回っているのが見えた。
「驚いたわ、こんなところに集落があるなんて・・・」
ウェンディでさえ、この村の存在を知らなかったようだ。
「こちらです。我が主人がお待ちです」
シュークに案内され、ジュンたちは集落の中心にある最も大きな建物へと向かった。
中に入ると、テーブルの奥に1人の若い男性が座っていた。年齢はジュンと同じくらいだろうか。赤い髪と鋭い目が印象的だが、その表情には疲労の色も見える。
「突然の案内で驚かせてしまったね。僕はティム。ティム・アスター。アスター軍の隊長だ」
「アスター軍・・・」ジュンはその名に聞き覚えがなかったが、クロックがすぐに反応した。
「アスター軍って、ブライウ同盟に所属する正規軍だよね!オイラの故郷と同じ異界の軍だ!」
「本当か、クロック?」
「うん!少なくとも敵じゃないよ」
ジュンは少し安心しつつも、ティムに問いかけた。
「それで、そんなアスター軍の隊長が、どうしてこんなところに?」
ティムは深く息をつき、話し始めた。
「世界改変後、僕たちはこの世界の調査を進めていた。そして偶然、このサウスエンドランドにたどり着き、ここの人々と協力関係を築いたんだ。しかしある日、謎の軍団が侵略してきた。僕たちはこの島の人々を守るために戦ったけれど、相手の勢いが強すぎて、ここまで撤退するしかなかったんだ」
「その侵略者って・・・」ジュンが口を開く。
「カラスカ団だろうな」ティムは頷いた。
だが、ティムの話はそれだけでは終わらなかった。
「ただ、カラスカ団は単なる駒に過ぎない可能性がある。僕たちの密偵によると、彼らの背後には別の組織がいるらしい」
「別の組織・・・?」ジュンの表情が険しくなる。
「そうだ。残念ながら、その正体まではまだ掴めていない。ただ、このサウスエンドランドを支配しようとしているのは確かだ」
フーラン村の人々を救うために始まった旅が、いつの間にか世界規模の陰謀に巻き込まれつつある。ジュンたちは重い沈黙に包まれた。
「それで・・・僕たちをここに案内した理由は何なんだ?」ジュンが静かに尋ねると、ティムの目が真剣さを増した。
「単刀直入に言おう。僕たちと協力してほしい。君たちの力を貸してほしいんだ」
「僕たちの力・・・?」
「正式な軍人としてではなく、一時的な協力者で構わない。この島を取り戻すために、君たちの力が必要なんだ」
ジュンは仲間たちを見渡した。皆の顔には迷いが浮かんでいるが、その中に決意の色も見えた。ルイーザが静かに頷く。ジュンも深く息をついて答えた。
「分かった。協力するよ」
「ありがとう。本当に感謝する」
ティムは深く頭を下げた。その姿を見て、ジュンたちも自然と気持ちが引き締まる。
こうして、ジュンたちはアスター軍の一時的な仲間として、サウスエンドランドの解放に向けて動き出すことになった。
だが、この決断が彼らの運命を大きく変えることになるとは、この時まだ誰も知る由もなかった。
新たな戦いが始まる――ルイーザ探検隊とアスター軍の共闘が、世界の未来を照らす光となるのか、それともさらなる闇を呼ぶのか。その答えは、彼ら自身の手で切り開くしかない。




