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リフィリア王国を出発して数日後、ヒロたちは西洋町に到着した。
「まさか、この街までこの世界に飛ばされてるとはな……」
ケンは懐かしそうに街並みを眺めながらつぶやく。
「そういえば、ケンさんはこの街の出身だっけ?」
「そうだよ。だから、こっちの世界に来た時、地元がどうなったか心配だったけど……まあ、見た感じ平和そうだな」
そんな会話をしていると、東城戦士団の一人が慌てて駆け寄ってきた。
「ケンさん、大変だ!」
「どうした?」
息を切らしながら彼が伝えたのは、サウスエンドランドに向かうための船が奪われたという知らせだった。
「カラスカ団とかいう連中が港を襲って、船を全部持っていったらしいです」
「なんだと……?」
ヒロたちは顔を見合わせた。サウスエンドランドに渡る唯一の手段が断たれたとなれば、任務は大きく遅れる。
「仕方ない。船が戻るまで一旦解散するしかないか……」
ケンがそう言いかけた時、別の戦士団メンバーが駆け寄ってきた。
「いや、ケンさん!別の方法があるかもしれません!」
案内された先にいたのは、見覚えのある顔だった。
「ヒロじゃん!こんなところで会うなんてな!」
そこにいたのはジュンとルイーザ探検隊のメンバーだった。
「ジュン!どうしてここに?」
「こっちもサウスエンドランドに行く予定なんだよ。でも、カラスカ団に船を奪われてさ。仕方なく、自力でイカダを作って渡ろうとしてたんだ」
ジュンたちが作ったイカダは簡素ながらもよくできており、なんとか海を越えられそうだった。しかし、問題はスペースだった。
「残念だけど、このイカダじゃ乗れるのはあと2人が限界だな」
ジュンの言葉に、リフィリア兵の一人が激昂した。
「ふざけるな!俺たちは国の命令で動いてるんだぞ!そのイカダをこちらに譲るべきだろう!」
その態度にルイーザ探検隊のジュンの相棒、ルイーザが冷たい視線を向けた。
「……引くわ、それ。何様のつもり?」
「なんだと!」
兵士が声を荒げる。緊張が高まり、このままでは喧嘩が起きそうだった。
「待て!」
ヒロが割って入った。
「無理を言って悪かった。イカダのことは譲るよ。ただし、2人だけでも先行させてほしい。この場はそれで収めてくれないか?」
ヒロの言葉に、なんとか場は収まった。だが、次に問題となるのは「誰が行くか」だった。
「まあ、身近な知り合いがいるなら決まりだろう。ヒロとケンで行ってこいよ」
仲間たちの了承を得て、ヒロとケンが先行することになった。
翌朝、ジュンたちと合流したヒロとケンは、簡素なイカダに乗り込む。波が穏やかなうちに出発しようという算段だ。
「こんなイカダで大丈夫なのか……?」
「まあ、なんとかなるさ」
ケンが笑って肩を叩く。
しかし、彼らはまだ知らなかった。この先、サウスエンドランドで待ち受けているのは、彼らの想像を超える大きな戦いだということを――。




