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3

騎士団の宿舎を出たヒロとケンは、近くの食堂へと向かった。

その食堂はリフィリア王国でも有名な場所で、騎士団やギルドのメンバーたちが集う活気あふれる場所だった。


店内に入ると、ざわめきと笑い声が混じり合う中、2人は適当な席を見つけて腰を下ろした。


「まさかヒロもサウスエンドランドの任務に参加するとはな。」

ケンが笑いながら言う。


「うん、この世界のことをもっと知りたいと思ったからね。ちょうどいい機会かなって。」


「そんなに世界を知りたいなら、ギルドの探検隊にでも入ればよかったんじゃないか?」


「まあ、そういう考えもあるよね。でも…」


ヒロは少し言葉を詰まらせながら続けた。

「俺にとって騎士団は、右も左もわからなかった時に居場所をくれた場所なんだ。だから、恩を返したいって気持ちが強いんだよ。」


ケンはその言葉に感心したようにうなずく。

「義理堅いな、お前は。まあ、それがヒロらしいけどさ。」


「褒め言葉として受け取っておくよ。」


その後も2人は話題を変えながら、久しぶりにゆっくりと雑談を楽しんだ。

高校時代の思い出、世界改変後の混乱、そして鶴小島の戦いのこと。


懐かしい話題に、ヒロはこの世界に来てから初めてと言えるほど落ち着いた気分を味わっていた。


「しかし、一番驚いたのはやっぱりジュンだよな。」

ケンがぽつりと口にする。


高校時代のジュンを知る2人にとって、彼がこの世界で成し遂げたことは信じられないものだった。


「なんか、異世界小説の主人公みたいな感じだよな。無双してるわけじゃないけど。」


「むしろ、敵の攻撃で死にかけたり、本拠地で捕まったりして、割と悲惨な目にあってたよね。」


それでも、ジュンは敵のボスを倒し、国を救った英雄となった。

その姿は、かつての平凡な高校生のジュンからは想像もつかないものだった。


「いや、でもさ、ジュンって別の意味で存在感はあったよな。」


ケンが思い出すように言う。


「確かに。成績も普通、特に目立つわけでもないのに、なぜか学年中で名前を知られてたし、先生たちにもやたら覚えられてたよね。」


「本当だよな。なんでだろうな、あれ。」


2人は顔を見合わせて笑い合う。どうでもいい話だが、それが今は心地よかった。


気づけば外は夕暮れ時になっていた。


「そろそろお開きにするか。」


「そうだね。また明日ね。」


「おう、またな!」


ケンと別れたヒロは、宿舎に戻ると明日の準備を始めた。

もっとも、特別な準備と言っても、装備の確認ぐらいしかやることはない。


「なんだか、遠足の前日みたいな気分だな。」


初めての任務に対する不安も少しはあったが、それ以上に新しい場所へ行く期待感が大きかった。


ヒロはワクワクした気持ちを胸に、その夜は深い眠りについた。

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