13-5
「接近戦に持ち込んだぞ!」
ジュンはついにヒューイとの間合いを詰めた。鋼の大型剣を構え、目の前の敵に渾身の一撃を狙う。
「ふん、接近戦に持ち込んだところで、このオレが有利なのは変わらないぜ!」
ヒューイの顔に不敵な笑みが浮かぶ。次の瞬間――斧からバチバチと雷光がほとばしり、ジュンの大型剣に伝わる。
「うわっ!」
電流の衝撃に耐え切れず、ジュンは剣を手放した。
「ジュン!」
後方からルイーザの叫びが響く。
「何だ、今のは……!」
手の痺れを押さえながらジュンが問いかける。
「オレの武器には雷の魔法が組み込まれているんだよ。この斧の名はライジング・アックス。お前の鉄の剣じゃ、雷を受け止めることしかできねぇ!」
ヒューイの斧から放たれる雷光が地面を焼き焦がす。その恐ろしい威力に、ジュンは思わず唇を噛んだ。
「クソッ……」
剣を失ったジュンに残されたのは、逃げることしか選択肢がなかった。
「どうした?もうおしまいか?勝負の行方は見えてるぜ!」
ヒューイが再び斧を振りかざし、風の刃を飛ばす。その攻撃にジュンは辛うじて身をかわしたものの、形勢は圧倒的に不利だ。
――何か打開策が必要だ。
焦るジュンの目に、ふと周囲の倒木が映る。
「この木……ヒューイの風の刃で倒れたのか?」
木々は同じ方向に倒れている。風圧によって倒れたようだが、それが規則的に並んでいることに気づく。
「これを使えば……!」
ジュンの瞳に光が宿った。彼はカカオ山の斜面へ向かって駆け出す。
「また逃げるのか!いい加減にしろ!」
ヒューイが追いかける。
「さあ、ここだ!」
ジュンは意図的に倒木の前で立ち止まり、挑発的にヒューイを指さした。
「そこだな!まとめて切り裂いてやる!」
ヒューイが斧を一振りし、風の刃を放つ。その刃は木に命中し、大きな音を立てて倒木が崩れ落ちた。
「なっ!?」
木はヒューイの正面に倒れかかる。彼は慌てて右側に回避するが、思いのほか隙が生じた。
「悪いな。お前の技、少し借りさせてもらったよ!」
ジュンはその隙を見逃さず、落ちていた大型剣を拾い上げた。
「チッ、そんな小細工がオレに通用すると思うなよ!」
ヒューイが怒りの声を上げる。しかし、ジュンは落ち着き払っていた。
「通用してたみたいだな。その表情を見る限り、な」
彼は剣をしっかりと握り直し、ヒューイを睨む。
「これで武器は戻った。本番はここからだ!」
ジュンの声には揺るぎない決意が込められていた。その目は恐れを乗り越え、次なる一手を狙って輝いている。
「いいだろう。お前がどれほどやれるか、このライジング・アックスで叩き潰してやる!」
ヒューイの斧から雷が再びほとばしる。




