12-9
ジュンは牢屋で唖然としているウェンディとクロックを見つけ、すぐに声をかけた。
「ウェンディ、クロック!」
ジュンの呼びかけに2人がハッと顔を上げる。
「あ、ジュン!無事だったんだね!」
「まあな、クロックがくれたこのグローブのおかげで勝てたよ」
「そうか…役に立ったみたいで良かったよ」
だが、ウェンディとクロックの表情はどこか暗い。ジュンたちは状況を察した。
「そっちは…あまり良い状況じゃなさそうだね」
「見ての通りだよ。捕まっていた村人たちが、誰も残っていないんだ」
クロックの声は悔しさに震えていた。
「完全に後手を踏んじまった…くそっ!」
それでも、ジュンはタコスミから得た情報を伝え、希望を示す。
「でもさ、タコスミが言ってたんだ。村人たちはここから南にある大陸に連れて行かれたって」
「南の大陸…?」クロックが顔を上げる。
「そう。どんな場所か分からないけど、きっとカラスカ団の拠点がそこにある。奴らは村人たちを奴隷にして使うつもりだって言ってた。どうする?」
クロックは即答した。
「決まってる!助けに行くよ!オイラ、このまま引き下がれないよ。みんな、力を貸してほしい!」
その言葉にジュンも笑顔で応える。
「もちろんだよ。僕らもここで諦めるなんてあり得ない。絶対に村人を助け出そう!」
その時、ウェンディが口を開いた。
「南の大陸へ行く方法なら知ってるわ」
全員が彼女の言葉に驚き、目を向ける。
「どういうこと?」
ウェンディは静かに答えた。
「南の大陸って、多分サウスエンドランドのことだと思う。南方三島とも呼ばれている場所よ。間違いないわね」
「よくそんなこと分かったね!」ジュンが感心して尋ねる。
「それはね…あそこが私の故郷だからよ」
その一言に全員が目を見開く。思わぬ事実に戸惑いながらも、ウェンディの真剣な表情に誰もが気持ちを引き締めた。
「とにかく、これで向かうべき場所は決まったね」ジュンが改めて声を張り上げる。
「フーラン村の人たちを助けるために、サウスエンドランドへ行こう!」
全員が力強く頷いた。
だが、心の片隅で誰もが感じていた。
「サウスエンドランド――一体どんな場所なんだろう?」
その地が、さらなる困難と陰謀の渦巻く舞台になることを、この時ジュンたちはまだ知らなかった。




