12-5
右へ、左へ──。
ワッフルは迫りくるモンスターたちを蹴散らしながら駆け抜けていく。
「クロック、道はこれで合ってるのか?」
「わ、わ、分からない〜!」
激しい揺れに耐えきれず、クロックは完全に目を回してしまっていた。
「おい、ルイーザ、クロックが酔ってるぞ!」
「マジで!?参ったわね……クロックだけが道を分かるのに!」
ルイーザは舌打ちするが、足を止めるわけにはいかない。
ワッフルのダッシュを止めれば、背後から追いかけてくるモンスターの餌食になる可能性が高い。
全力で突っ切らなければ、この状況を突破することは難しいのだ。
「こうなったら、勘で行くしかないわね!」
「勘ねぇ……。だったらモンスターがたくさん集まりそうな場所を探せばいいんじゃないか?」
ジュンが周囲を見渡しながら言った。その目がある扉に留まる。
「あそこなんか怪しくないか?」
「確かに、クロックが言ってた条件にピッタリ合いそうね!」
ルイーザは迷わずワッフルに指示を出し、一行はその扉を目指して突進する。
勢いよく扉を突き破り、ワッフルがようやく足を止めた。
「や、やっと止まった……」
初めて声を発したウェンディは息を整えながら、顔をしかめる。
彼女もまた、クロック同様にワッフルの猛スピードに酔わされていた。
「ここにボスがいるのか?」
ジュンが辺りを見回すと、そこに現れたのは、あのリーダー格のモンスターだった。
「残念だったな、ここはハズレだ」
不敵な笑みを浮かべながらモンスターが口を開く。
「お前は……!」
ジュンが叫ぶ。
「随分と暴れてくれたな。牢屋を破って逃げ出すとは、見上げた度胸だ」
「いや、あの牢屋なら鍵を壊すのは簡単だったぞ」
ジュンが平然と返すと、モンスターは小さく笑った。
「我々の異界では、あれを壊せる者はいないと思っていた。油断というやつだな」
目の前のモンスターはどこか冷静で、ただの野生的な敵とは異なる雰囲気を持っている。
「驚いたか?モンスターは全て本能のまま生きていると思ったか?
我々のいた異界では、モンスターも人間に匹敵する知性を持っているのさ」
一瞬、全員が言葉を失った。
「どういうことだ……?」
ジュンが眉をひそめると、モンスターは続けた。
「この世界は複数の異界が混じり合って生まれた世界だ。そうだろ?」
「……」
「つまり、この世界で生き残るには、自分たちの異界の強みを他者に示し、主導権を握らなければならない」
その言葉に、一同の顔が険しくなる。
「まさか……お前たちは?」
ルイーザが問いかけると、モンスターはにやりと笑った。
「その通り。我々の強みは圧倒的な数だ。それを武器にして、この世界の支配権を奪う。ここはそのための拠点というわけだ」
「なんてやつらなの……そこまで考えて行動してるなんて……」
ルイーザが愕然とした表情を浮かべる。モンスターたちがすでに侵略活動を始めていることに驚きを隠せなかった。
「だがな、お前たちのボスを倒せば、その侵略活動も止まるわけだろ?」
ジュンが一歩前に出る。しかし、その挑発的な言葉に対し、モンスターは突然声を上げて笑い始めた。




