12-2
山の頂上にある採掘場。
かつてはフーラン村の人々がコンクリストーンを採掘していたこの場所も、今やモンスターたちのアジトと化している。
採掘作業は完全に停止し、村人たちもすべて拉致されてしまった。
採掘場の入口付近では、2体のモンスターが見張りをしている。どちらも暇そうな表情だ。
「こんな場所に誰か来るなんて、あるんすかねぇ?」
「さぁな……」
タキビノ谷を越えるためには、この採掘場を通らなければならないが、普通の人間ならわざわざそんなリスクを冒さない。険しい山道を登る覚悟がなければ辿り着けない場所だ。
「ん?……なんか聞こえないか?」
「なんだ、この音……?」
モンスターたちが音のする方を振り向くと、突如として山道を駆け上がってくる何かが目に飛び込んできた。
「ぎゃっ!?」
「な、何だっ!?」
次の瞬間、その何かが見張りのモンスターたちを吹き飛ばし、採掘場の入口前で急停止する。
「いや~、楽勝だったな!」
「本当に一瞬で着いたわね。ありがとう、ワッフル!」
そこに現れたのは、ワッフルに乗ったジュンたち一行だった。
「ね、ねぇウェンディ……どうしてジュンとルイーザはあんなに平気なの?」
「知らないわよ!あの二人、似た者同士だからじゃない?」
「そんな簡単な理由!?普通じゃないよ!」
初めてワッフルの全力疾走を体験したウェンディとクロックは、完全に息切れ状態だ。一方、ジュンとルイーザはまるで日常の延長のような表情で平然としている。
「ん?大丈夫か、二人とも?」ジュンが軽く問いかける。
「大丈夫なわけないでしょ!あんな無茶苦茶な運転……!」
「まぁ、そのうち慣れるさ」
「その“そのうち”がいつ来るのよ!」
ウェンディは内心、次回こそはもう少し安全運転をしてほしいと願わずにはいられなかった。
「さて、ここが村人たちが囚われている場所か。クロック、中の構造はわかる?」
「うん、大体の場所はわかるよ。けど、みんながどこにいるかまでは……」
採掘場に人を閉じ込めるような場所があるとは思えない。しかし、今は進むしかない。
「まぁ、入って探してみようか」
ジュンたちが採掘場の入口に足を踏み入れたその瞬間だった。奥から複数の足音が響いてくる。
「ん?……何だ?」
足音の主は徐々にこちらに近づいてきた。そして、荒々しい声が洞窟内に響き渡る。
「なんだ、大きな音がすると思ったら……何者だお前たちは!」
「あらら、早速バレちゃったわね」ルイーザが肩をすくめる。
「そりゃそうよ!ワッフルで派手に突っ込んだんだから!」ウェンディが半ば呆れたように答える。




