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コンクリストーンがなければ工事は進められない。
「タキビノ街のギルドに援軍を頼みに戻る!」
「お願いします!」
門番は急いで谷を下り、タキビノ街に向かって走り去った。
「ところで、フーラン村ってどこにあるんだ?」
ジュンが問うと、見張りの男性が谷の先を指さした。
「谷沿いを進んだところに山が見えるだろ?あの山の麓にある村だよ」
「ありがとう!」
ルイーザたちはワッフルを走らせ、谷沿いを急ぐ。やがて高くそびえる山が視界に入った。その麓に、小さな村が広がっているのが見える。
「あれがフーラン村ね!」
「待って、煙が立ってる!」
「モンスターがまだいるのかも……ワッフル、急げ!」
ルイーザはワッフルを駆り立てた。やがて村に到着すると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。家々は崩れ、村全体が荒廃している。
「……ひどい」
ウェンディが小さくつぶやいた。
「生存者がいるか確認しよう!」
ジュンが声を張り上げ、3人は瓦礫を踏み越えながら村の中を捜索した。だが、どこにも人の気配はない。人どころか動物の影さえ見当たらなかった。
「……手遅れ、だったのか」
ルイーザが拳を握りしめる。
「けど、おかしいわね」
ウェンディが不審そうに辺りを見渡した。
「何がだ?」
「モンスターに襲われた形跡はあるけど、死体の一つも見当たらないのが変じゃない?」
確かに、瓦礫の下にも血痕ひとつない。村人たちはどこへ消えたのか……?その時だった。
「おいおい、まだ生き残りがいたのか?」
上空から不気味な声が響き、巨大な鳥型モンスターが降り立った。
「なんだお前は!」
「オレか?オレはモウケ。この辺を縄張りにしている者だ」
「この村を襲ったのはお前か!村人たちはどうした!」
ルイーザが鋭く問い詰めると、モウケは意地悪そうにくちばしを鳴らした。
「ふん、タキビノ谷を通られると困るんでね。この村を潰して、村人どもは我々の住処に連れていった」
「なんだと!?」
「谷を越えられない理由が俺たちの仕業だと分かったろう?」
モウケの言葉に怒りが込み上げる。だが、さらに続く言葉が驚きをもたらした。
「もっとも、我々のアジトがある山を越えれば、谷の向こうに行けるけどな」
「え?谷を越える別の道があるの!?」
ルイーザたちの目が一瞬見開かれる。
「そうだとも。だが、その道を通りたいなら、俺たちの条件を飲んでもらわないとな!」
モウケが翼を広げ、不気味な笑みを浮かべる。谷の向こうに通じるルートの存在を知ったものの、それを守るモンスターたちとの対決が避けられないことは明らかだった。
ルイーザたちは目を合わせ、小さくうなずき合った。
「……そんなやり方、絶対に許さない!」
「フーラン村の人たちも助ける。そして、この谷を自由に越えられるようにするんだ!」
ワッフルが力強く鳴き、彼らの決意に応えるように地を蹴る。今、冒険の新たなステージが幕を開ける――。




