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【20章】目指すは始まりの異界!探検隊ルイーザと不思議な物語  作者: 旅立 マス
第11章 タキビノ谷とフーラン村
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11-1

ジュンたちの行く手を遮るのは、巨大な谷だった。どこの異界に存在するのか分からないが、これほどの規模の谷は、ジュンが住む異界だけでなく、ルイーザやウェンディの異界にもないという。

なにしろ、谷の向こう側が霧に包まれてまったく見えないのだ。


「これはまた大きな谷だな。全然向こうが見えないよ」

「地図によると、ここは『タキビノ谷』っていうらしいわ」

「タキビノ谷? いかにも暖かそうな名前だね」

ルイーザの軽い感想に、ジュンは思わず笑みを浮かべた。確かに、名前だけなら焚き火のぬくもりを連想させる。


「それにしても、本当に大きい谷だね。どうやって向こう側に行くんだろう?」

「谷を降りたところに街があるらしいわ。その街を通れば向こう側に行けるみたいよ」

「そういえば、ウェンディは谷の向こうから来たんだっけ?」

「ええ、そう。この先に『タキビノ街』があるのよ」


ジュンは地図を確認する。谷沿いを少し進んだところに、谷底へ降りる坂道があり、その先に『タキビノ街』が描かれていた。リフィリア王国の城下町に匹敵する規模の街のようだ。


「そういえば、サルサさんの話では、今は谷の向こうに行けないって言ってたよね。どうしてなんだろう?」

「まあ、その理由も街に行けば分かるんじゃない? とにかく、タキビノ街に向かいましょう」


ルイーザがワッフルを進めると、谷沿いに谷底へ続く坂道が見えてきた。その入り口には、見張りらしき男が立っている。男はルイーザたちを見つけ、手を挙げて呼び止めた。


「お前たち、この先に何か用があるのか?」

「特に用はないけど、谷の向こうに行きたいと思ってるよ」

「悪いが、この先にある街で足止めになるぞ」

「その話は聞いてるけど、どうして進めないの?」

「谷の下から上に登る唯一の道が、何者かに破壊されてしまったんだ。現在、新しい坂道を工事しているが、完成まで少なくともあと2、3日はかかるだろう」


「工事が終われば進めるんだよね? だったら、その街で待てばいいじゃない」

「まあ、それでいいなら構わんが……」

ジュンたちは顔を見合わせ、了承した。街で過ごしながら工事が終わるのを待つのも悪くないだろう。


「じゃあ、下の街に行ってもいい?」

「ああ、許可しよう」


その時、遠くから叫び声が聞こえた。


「た、大変だ!」

谷沿いを必死に走ってくる男がいる。見張りの男が駆け寄った。

「どうしたんだ?」

「『コンクリストーン』を仕入れているフーラン村がモンスターに襲われている!」

「なんだって!?」

ジュンたちも耳を疑った。


「コンクリストーン?」

ウェンディが尋ねると、見張りの男が説明を始めた。

「コンクリストーンは、石と石を接着するための接着剤を作る材料だ。この坂道の工事にも欠かせないものなんだ。それが村から届かないとなると……」

男は頭を抱え込む。


「参ったな……」

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