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【20章】目指すは始まりの異界!探検隊ルイーザと不思議な物語  作者: 旅立 マス
1章 現実とファンタジーの間で
13/203

1-10

窓から差し込む夕焼けの光がまぶしくて、目を覚ました。


ここは――自分の家。けれど、夢だったとは到底思えない。


手元を見ると、リズから渡された笛がしっかりと握られている。それを目にした瞬間、胸の奥がギュッと締め付けられた。


あれは現実だった。リズはどうなった? 世界の改変は?


そうだ、自分はあの工場での戦いの後、リズの転送魔法で脱出させられたんだ……。


彼女は無事なのか? それとも――。


窓の外を見て、すぐに違和感を覚えた。


「工場の煙突が……ない?」


普段は当たり前のように見えていた建物が、跡形もなく消えている。


その代わりに、工場があった場所は黒く焦げた荒れ地となっていた。


(爆発……あれのせいか?)


あの機械が起動し、爆発を引き起こしたのだろう。だが、それが焦げ跡だけで済んだのは――


「リズのおかげだ……!」


彼女がかけた防御魔法が、爆発の被害を最小限に抑えたのだ。


急いで家を飛び出し、その跡地へ向かった。


現場に到着すると、そこにはただ広がる焦土があるだけだった。


「何も……ない……」


あれほど巨大だった工場の痕跡は、地上の焦げ跡に完全に飲み込まれていた。


周囲には人影もほとんどなく、救急車や消防車の姿さえ見当たらない。被害がここだけにとどまった証拠だ。


それがリズの防御魔法の力だとわかっていても――


「リズ……」


彼女の姿はどこにも見えなかった。


悔しさが胸に押し寄せる。あの時、自分がもっと早く判断していれば……いや、彼女を工場に連れて行かない選択をしていれば――


握りしめた拳が震えた。


その時だ。


手元の笛が淡い光を放ち始めた。


「笛が……光ってる?」


笛は、まるで何かに反応しているかのように輝いている。


試しに一歩前に進んでみると、光が強くなる。


後ろに下がると、光は弱くなる。


「導かれている……?」


疑問を抱きながらも、笛の示す方向に歩き出した。


焦げ跡の中心に向かうにつれ、光はますます強くなり、ついに目の前に小さな物体が現れた。


「これ……タグ?」


焦土の上にぽつんと落ちていたのは、太陽のような印が刻まれたタグだった。


(これが……何だっていうんだ?)


手に取ってじっくり眺めながら、リズの言葉を思い出す。


「この笛は、『始まりの異界』を導く道具……」


そう言っていた彼女の声が耳元で蘇る。


このタグも、その「異界」へ続く道を示すものなのだろうか?


自分にこれをどうしろというのか――


冒険を始めろと? リズの意志を継げと?


確かに冒険には興味がある。だが、今は感情が整理できない。


彼女と出会い、共に戦い、そして別れ――


心に空いた穴は大きかった。


その時、ふと気づく。


「そういえば……世界の改変は……どうなった?」


あれほど重大な話だったのに、周囲を見回しても、目立った変化はない。


工場がなくなった以外、この世界に特に異変は感じられない。


(ギガロの計画は……結局失敗したのか?)


タグを手に握りしめながら、ジュンの心に、リズの最後の言葉が浮かぶ。


「君なら、この謎を解けるよ」


その言葉に応えるためにも、進まなければならない気がした。


リズの意志を引き継ぎ、このタグが導く先を目指して――。

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