9-3
洞窟の存在を確認した3人は、再びサルサの宿屋に戻った。
「どうじゃった?」
「お婆さんの言う通り、クリスタルの洞窟としか言いようがない場所だったわね」
「じゃろう。それで、その洞窟の調査をワシは依頼したいのじゃ」
「調査してどうするの?」ジュンが問いかけた。
「新たな産業にできんものか検討したいのじゃ。どうも、あの洞窟が現れてから村の人の出入りが減った気がしてのう」
クリスタルの洞窟は話題になりそうな場所だし、人が増えそうに思えるが、サルサの話は逆のようだった。
「どうも、最近はあの話のせいでこの辺りに人が来なくなっておるのじゃ」
「あの話?」
「うむ。この先の海沿いへ行くための道で、通行止めが発生しておるらしい」
「通行止め?」ジュンが首をかしげた。
「詳しいことはわからんが、どうも道が塞がれていて通れないのだそうじゃ。それが原因で流通に影響が出ておるようでな。この村にもなかなか人が来れない。遠回りすれば来れんこともないが、それをしてまでわざわざ依頼を引き受ける者もおらんのじゃ。お前さん達が初めての依頼人なんじゃよ」
「ってことは、僕ら一番乗りってこと?」ジュンの表情に期待の色が浮かぶ。
「そうじゃな」
探検隊にとって「一番乗り」は特別な意味を持つ。手付かずの地で新たな発見が待っているかもしれない。その期待に胸が高鳴る。
「お婆さん!その依頼、ぜひ私たちの探検隊が引き受けさせてもらうわ!」
「おお、本当かい?それはありがたい話じゃ。ぜひ、よろしく頼むよ」
「うん、私たちにお任せ!」
ルイーザ探検隊はクリスタルの洞窟の調査を正式に引き受けることにした。サルサの許可を得て、この宿屋を拠点とすることになった。
その後、3人は宿の一室で作戦会議を開くことにした。
部屋にはベッドが三つ、中央には広げた地図を囲むのにぴったりなテーブルがあった。3人は椅子を引き、テーブルを囲む。
「さて、引き受けたのはいいけど、ノープランで洞窟に入るのは危険だよな」ジュンが切り出した。
「そうね。それに、さっき洞窟の近くに行った時、冷たい空気を感じたわ」ウェンディが指摘する。
「確かに、洞窟の中はかなり寒いかもしれないね」
洞窟内の寒さを考慮すれば、暖かい装備が必要になる。幸い、今の装備でも対応できそうだった。
「それに、もしモンスターがいるなら氷属性の可能性が高いわね」ルイーザが推測する。
「となると、弱点は火属性か。ルイーザとウェンディが火属性の魔法を使えるし、戦闘には問題なさそうだ」
「よし、今のところ心配するのはこれくらいかな?」ジュンの言葉に、3人は頷いた。
準備を整えたルイーザ探検隊は、未知のクリスタルの洞窟へと挑む準備を進めていく。果たして、洞窟の中にはどんな冒険が待ち受けているのだろうか――。




