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ローデンは彼らに驚きを隠せなかった。
たかがレベル4の者たちが、ここまで互角に渡り合えるとは予想もしていなかったのだ。
「風の刃を撃ち落とした程度で調子に乗らないことだ。忘れたわけではあるまい?前回、お前たちがこの私に敗れた技を」
あの一撃――ジュンたちが前回の戦いで敗北を喫した必殺技。攻略の糸口さえつかめていないそれを、どうにかしなければ勝利は見えてこない。
「さて、ここで終わりにしよう。この戦いを制し、計画を練り直さねばならん」
ローデンが両手を広げ、風の渦を生み出す。その圧倒的な魔力にジュンたちの緊張が高まる。
「ウェンディ、頼む!」
「任せて!」
ウェンディはジュンとルイーザの前に一歩進み出た。
前回の戦いにはいなかった彼女。しかし、その存在感は目を見張るものがあった。これまでの戦闘で彼女が見せてきたサポート能力の数々。その陰で隠されていた本当の力が、今、発揮されようとしていた。
ローデンの風の渦が3人に迫る。ウェンディは冷静に指を動かし、呪文を唱える。すると――ローデンの風の渦が、目の前で掻き消えてしまった。
「な…なんだと!?」
「やった、成功だ!」ジュンが声を上げる。
ローデンは動揺を隠せない。自信満々だった技を打ち消されるとは想像すらしていなかった。
「どうしてだ…なぜだ…」
「あなたの渦に対抗して、私も風の渦を生み出したのよ」ウェンディは淡々と説明する。
「反対の方向に渦を巻く風を作り出せば、お互いの力が相殺される。そうすれば、あなただけの一方的な攻撃にはならないわ」
「馬鹿な!私の調査では、お前はサポート魔法しか使えないはずだ!」
「調査不足ね」ウェンディは冷笑する。「私、実はサポートより攻撃魔法の方が得意なのよ」
攻撃魔法を覚えた背景は、ジュンたちと出会う前、医師として各地を旅していた頃に遡る。身を守るために磨いた魔法の腕は、彼女の経験とともに洗練され、今の戦いにおいても活きている。戦いの直前には、クルールの特訓でサポート魔法も会得した。彼女の多才さが、今回の攻略を可能にしたのだ。
「これでお前の必殺技も攻略済みだ。前回のようにはいかない」
ローデンは苦い顔をした。計算外の出来事が次々と起こり、自信が揺らぎ始める。どこで誤算が生じたのか。慢心はしていないつもりだったが、この結果は否応なしに彼を打ちのめしていた。
「このままでは、またギガロに後れを取ることになる…それだけは許されん!」
ローデンの瞳がぎらりと光り、さらなる本気を引き出そうと闘気を高める。その姿に、ジュンたちの緊張も再び高まるのだった。




