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帰ってこない
森の中。
ひとつの巣穴に、爺様、婆様、孫と、キツネの家族が暮らしていました。
爺様は寄る年波でボケていました。
今日も夕闇が迫る時刻というのに、爺様は巣穴を出たきり帰ってきません。
「ここで待っておれ。爺様が帰ってくるかもしれんのでな」
婆様は孫を巣穴に残し、森じゅうを探し歩きまわりました。
でも、爺様はどこにもいません。
――もしや先に帰ってるのかも……。
ひとり残した孫のことも気になり、婆様はいったん巣穴に帰ることにしました。
婆様は巣穴にもどると孫にたずねました。
「どうじゃ、爺様は帰ってきたか?」
孫が悲しそうに鳴きます。
「コン」