悩ましい「目が滑る」問題 ~読み手と書き手の立場から考える~
ディスプレイ上で長文を目にすると読んでいた場所を見失ってしまう、
いわゆる「目が滑る」現象、「なろう」の読み手としても書き手としても
悩ましいものがあります。
まず読み手として。
私は大画面のタブレット端末を使用していることもあり、
空行を多用している作品は視線の移動量が多くて、
かえって読みづらいです。
スワイプしてもスワイプしても、少量の文章しか読めないのも辛い。
親指の腹がじわじわと痛くなってきます。
続いて書き手として。
空行は前後の文意がつながっていなくても、つながって読ませる傾向が
あるように思います。
これに甘えると、文と文をつなぐ記述力が衰えていく。
私は、改行、空行を多用する作品を書いていたときに、
仕事でのメールやレポートの文章を書くのに支障が出てきて、
注意するようになりました。
目が滑る原因については、以前は画面余白、行間サイズ、
一行あたりの文字数といったレイアウトにも要因があると
思っていました。
しかしブラウザの表示設定や、「なろう」の「表示調整」にある
「配色」、「行間」、「文字サイズ」を調整しても、
電子書籍リーダーで読むほどにはスムーズにならない。
そこで「ページ切り替え」と「スクロール」の違いにも
要因があると、思い至りました。
ページ切り替えでは、新たなページはすべて未読の文章です。
対してスクロールでは、既読と未読の文章が混在する。
スワイプすると、まずその分かれ目を探さなければなりません。
これがジワジワと読書スタミナを奪っていきます。
Webの小説サービスがページ切り替え表示に対応してくれると、
ずいぶん問題が解消するようにも思えるのです。
「なろう」では「縦書きPDF」変換があるのですが、
これは書き手としては「部分別アクセス解析」ができなくなり、
読者の離脱状況を把握できなくなるという問題を誘発します。
「表示調整」設定を拡張してくれればなあと思います。
さて本作品は、ここまでご覧になってお分かりの通り、
最近話題になっている超大手印刷会社が発表した
読書をアシストする表示方法を、部分的に真似してみました。
本物はさらに、行が文節単位で右肩下がりになっていたり、
行おきに背景色が変わっていたりします。
これ、とりあえず、書き手が手動で行うのはつらいですね。
ワープロの各種校正機能が、正しく機能しなくなるのも困る。
読む側も画面幅によっては、不要な改行が入るといった
支障が生じるはずです。
ソシテナニヨリ、ヨミヤスクナッテイルキガシナイ。
ともかく「目が滑る」問題については、
ブラウザやHTML+CSS側でも、もう少し対応して欲しい。
現状は書き手に不毛な手間をかけさせていると思います。
書籍を出されているような力のある作者さまが、
空行を削除するのに時間を取られているのはもったいない。
もちろん書き手側にも、やることはあります。
同じ言い回しを頻出させない、字画の多い文字と少ない文字をバランス良く
配置するといった基本は、しっかりと押さえる必要があるでしょう。
これらをおろそかにすれば、たとえ紙に印刷しても
目が滑る文章になってしまいます。
あとそもそも、つまらない文章は目を滑らせます……。
読書の際の眼球運動、これを観察すると
「サッカード(※)、停留、改行運動、逆行」の繰り返しなのだそうです。
こうした研究が進んで、みなが幸せになれたらなあと思います。
※サッカード:停留点から停留点への眼球の移動運動
了
お読みいただき、ありがとうございました。
私は階段状字下げに慣れられる気がしません。
でも超大手印刷会社の取り組みは素晴らしいと思いますし、
この手の工夫は大好きです。
2020/07/12
文が変わった際の字下げを、2つにしてみました。