表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

マッドスクールカンパニーアシタカラ

「まぁああっっどすくぅぅううるかぁんぱにぃいいい!!!!」

 初手タイトルコールありがたいです。俺は机に肘をつきながら彼女を見やる。


 マッドスクールカンパニー。なんてことはない。道立渦狩山高等学校のミステリ倶楽部とオカルト研究部を足して二で割ったような部活の俗称である。こう言っちゃ命名者に悪いがすごくダサい。大体意味も解らない。ので、その意味とやらを命名者御本人に聞いてみたことがあったが、見事に意味なんてないと一蹴されてしまった。語感がいいから、ただそれだけらしい。


「おもむろにどうしたんですか?ゆいや先輩。また狂ったんですか?」

 口裂け女みたいに横いっぱいに口角を上げたゆいや先輩は、これまた奇妙な角度でこちらを振り返る。

「なあ、なぎささぁ。悲しいとは思わんかね?折角の部活動だよ?だのに、活動内容も目標も一切なしの素寒貧よ。」

「素寒貧の使い方を間違っていると思いました。どうもなぎさです。」

「私が求めている感想はそこじゃあないよ。なぎささぁ。いいのかい?このままなにもせずに青春が終わりを告げてしまうよ?青春とは一瞬なのだよ?」

「青春を謳歌すべき年代の人間が絶対に言わないセリフを言いましたね。いくつなんですかまったく。」

「お母さんがよく言ってるのだよ。」

「そういう芝居がかった言い方で、お母さんっていう庶民的なワード聞くとギャップで風邪ひきますね。」

「何を言うか。私は庶民も庶民。それに私は17だよ。一介のガキンチョに何を求めているんだね君は。」

 そういうとゆいや先輩はやれやれといった仕草を見せる。

「別に庶民であることに疑問は感じていないです。てかあれ、もう17ですか?誕生日早いんですね。おめでとうございます。」

「あ、うん。ありがとう。って、ああそうじゃない。なぎさ。明日からゴールデンウィークだよ?どうするね?」

「どうするねって。別にどうもしませんけど。」

「それがよくないと言っているんだよ。いいかい?我が高校は文化部でも休日にあつまり部活動に励むほどの部活動が盛んな高校だ。クイズ研究部の友達なんてこのゴールデンウィークに合宿を行うとまで言っていたのだよ?一方我がマッドスクールカンパニーはどうだい?予定なんてなしのつぶてじゃあないか。」

「え。先輩友達いたんすね。」

「クイズ研が合宿に行く方に驚き給えよ。」

 ゆいや先輩が鋭い目で睨む。いやだって、しょうがないでしょ。目つき悪いわ笑い方は不気味だわ、とどめにその口調。友達がいることに驚かずに一体何に驚こうか。

「なぎささぁ。入部して半月で随分失礼な子になっちまったもんだねえ。」

「先輩に脅されて入った部活ですよ?どうして仲良くなれると思ったんですかねえ。」

「あ~あ~、寂しいねえ。昔はそんな子じゃなかったのに、でもま、反抗期じゃ仕方ないのかしらねえ。」

「先輩と出会ったのはつい一か月ほど前です。」

「一か月前・・・か。くくく。あの事件は面白かった。」

「緑崎珈琲事件のことですか?俺にとっちゃ、あれは苦い思い出ですよ。

 俺は一か月前に起きたしょうもない事件を思い出して言う。

「珈琲だけにかい?くくく。上手いことを言う。」

「やめてくださいよ。偶然です。狙ってません。」

「なぎさの素晴らしい一面を見れた事件だったからねえ。私はあの時の君の推理に惚れ込んだからこそ、君をこのマッドスクールカンパニーに入部させたのさ。」

「あーあー。先輩がこんな人だと知っていれば、あんなことしなかったのに…後悔先に立たずとはまさしくこのことですね。」

 俺は天井を仰いで、うんざりとした表情をする。

「そうは言うがね、ついこの間二人で挑んだ謎には、君も結構ノリノリだったじゃないか。」

「…。安藤咲穂の幽霊事件のことですか?あれは、まあ。あのままじゃ安藤咲穂のお姉さんが浮かばれなかったですからね。そりゃまあ、少しは。」

 ふふん。とゆいや先輩は口角を目一杯あげて不気味に笑う。

「なぎさはまったく年上好きだなあ。私は身の危険を感じざるを得ないよ。」

「ぶっ飛ばすぞ。」

「そうもはっきり言われると、逆に気持ちがいいねえ。と、話が逸れ過ぎたな。ゴールデンウィークだよ。折角の連休だ。思いっきり謎の究明につとめなければ!」

「折角の連休なので思いっきり休めばいいと思うのですが。」

「コラコラ。また昼間っからゴロゴロしようとして!たまにはお外に出て元気に動き回りなさい。」

「それ以上母親みたいなセリフを言ったら、所かまわず先輩のことをママと呼びますからね。」

「それは、きっついな。」

 ゆいや先輩が本気で嫌そうな顔をする。俺だって嫌だわ。

「さて、私が考えてきた今後の活動内容だがな。とりあえず明日は微笑山という山に登ろうと思う。」

「は?山?」

「まあ山と言っても大した山じゃない。ちょっとしたハイキングコースがある可愛い山だ。」

「可愛い山ってなんですか。ていうか嫌ですよ。面倒くさい。」

「実はその山にはとある噂があってな?神出鬼没の山小屋があるそうなんだ。」

「山小屋ぁ?」

「ああ。私たちは明日からその山小屋についての調査を開始する。ゴールデンウィークをすべて使いきってその謎に挑むぞ!」

「うへえ。勘弁してくださいよ。」

「あー!明日から楽しみだなあ!」


 オチにタイトル回収ありがたいです。俺は大きくため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ