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とある少女達の試練

作者: あふれ旋律

 ここはとある小さな村……皆が寝静まった真夜中のことです。

 空の遥か彼方、小さな光が流れ星のように煌めきながら、赤く炎を纏ってだんだん大きくなっていきます。


――EMERGENCY,EMERGENCY,SAFETY-MODE BOOTING UP...


 そのままスピードが増していき、「それ」は村のド真ん中に直撃したのです……。


――DAN..R...DANGER....ESCA.P.........


 そこからは一瞬でした。村を全て吹き飛ばすほどの大爆発が起き、もうそこはただの砂地になりました。跡形もなく「それ」も含めて吹き飛んだのです。もはやそこに村があったことなど誰も信じられないでしょう。

 やがて砂埃が消えていくと、そこには3人の少女達が見えてきました。


「あっちゃ~、やっちゃったね。もう私達帰れないよ」

「何をやってるのです。あれほど操作は慎重にやれと言ったのに」

「しょうがないよ、アクセルとブレーキ間違えちゃったんだから」

「悔いてもしょうがないね、とりあえずこの星を探査しよう」


 そして少女達は歩きながら異変に気づいたのです。

 自分たちが重大な過ちを犯したことを……。


……カラン。


「ん? 何か踏んじゃった?」


 少女は足元に視線を向けると、そこにキレイなネックレスがありました。

 5色の石が組み合った王族が身につけそうな場違いの物です。手に取って太陽に向けてかざすと、太陽光を5色に変化させる幻想的なものでした。


「なんで砂地にこんな綺麗なものが?」

「うひょー! 私が着けたい、いーでしょ?」

「すごい貴重なものかもね。大事に扱ってよ」


 そして少女はネックレスを身につけ満足げな顔をします。暖かみとどこか懐かしい感覚がします。


「私の体にちょうどフィットする感じ。まるで私に拾われることを待ってたみたいだよ」

「拾ったのは私だって、ちょっと私にも着けさせて」


 そしてネックレスを外して手渡そうとした瞬間でした。


――するっ。ガシャーン


 大事なネックレスを落としてしまったのです。


「あーもう何やってるんだよ。傷ついたりしたらどーするの」

「ごめんごめん」


 そうして手で拾い上げようとしたら……。


――スゥ――


 何と手をすり抜けてしまったのです。少女は一瞬何が起きたのか理解できませんでした。手の甲から色鮮やかな石が突き抜けています。


「えっ。私……なにこれ……」


 少女は視線を上げ二人を見るとそこには異様な光景が広がっていました。

 二人の全身が光りながら細かいキューブに分断され、その一つ一つがランダムに薄まっていってるのです。まるで彼女らがこの世から消滅しようとしてるようでした。


「!! ――みんな……手をつないで!」


 訳も分からないまま、咄嗟に手を繋ごうとします。しかしお互いの手が通り抜けて空振ります。体はどんどん薄まっていき、もはやどうすることも出来ない状態でした。


「一体なにが起きてるの……!」

「怖い!! いやだいやだ!!」

「うえーーん!!」


 間もなく視界が暗くなっていくと、三人の姿は世界から完全に消え、何もない砂地だけになったのです。



―――――――――――――――――


 ザーー、ザーー、ザザザーー。


「……んっ。ん~~。」


 一人の少女が海の上で漂流していました。なぜ漂っているのか、自分が誰なのかも分かっていません。ただ寂しく流されていたのです。


 目をパチクリさせると、異変に気づきました。


「うわわっーー!!」


 突然体を動かしてしまったため、体のバランスが崩れて沈み溺れそうになりました。しかし瞬時に体勢を立て直し酸素を吸おうと必死に体をバタつかせます。少しだけ冷静になると手足を滑らかに動かし、多少落ち着きを取り戻してきました。


「どこッ! ここどこッ! 溺れる溺れる!」


 周囲を見渡しても、残念ながら海のど真ん中だったため何もありません。


「うそっ何もない! そんな訳ないだろ!」


 頭を必死に回転させますが、助かる方法が思いつきません。絶体絶命の窮地ですが……。


「そうだ!」

「またプカーっと浮いてればいいんだ」


 少女は脱力して体勢を整えます。

 消極的な解決策でしたがこの作戦は成功し、また浮かび直せました。しかし目の前の危機は脱しましたが、依然として安全は確保されてません。


「一体これからどうしたらいいんだ……」

「辺り一面海、助けも来なさそう。島もないし……ヤバ過ぎる」

「というか、そもそも私は誰なんだ。何も思い出せない……」

「ああ、太陽が眩しいな。今は夏なのかな?」

「気持ちいい……、水着で泳ぎたいな」

「そういえば今は何を着てるんだ……?」


 ちらっと少女は自分の体を見てみる。

 葉っぱで出来た服で全身が覆い尽くされていて、強度もしっかりとしているようだ。


「これじゃあ原始人みたいだよ~」

「誰かーー!助けてーー!」


 少女の助けに答えてくれる存在は誰もいませんでした。大自然は甘くなかったのです。


―――


 ふと少女は思い至る。何も島がなく人もいないなら、なぜ私はこれまで生きられたのだということを。逆説的に私が生きる方法は必ずあるということを。


 葉っぱの服ということは島があるということ。では島はどこにあるのか?

 とりあえず海流の流れを感じてみる。体が一定方向に流れるのを感じる。しかしこれを感じたからなんだというのか?

 分からない。とりあえず体力の温存に方向を切り替える。何か一つでも助かる切っ掛けがあれば希望がもてるはずだ。


 頭の方から波がかかってきた。私は足側に流されているようだ。漂っていたからいまいち体の感覚が信用できなかったのだが、少し自信がついた。


―――


 鳥が見える。鳥は左手から右手側に向かって飛んでいく。あの鳥は島に向かって飛んでいってるのだろうか? 分からない。もしそうなら海流に任せていてはダメかもしれない。


―――


 太陽が頭側から足側に移動していっている。つまり頭側が東で足側が西ということだろうか?


 整理すると、私は西に向かって流されていて、鳥は北に向かって行ったということか。まだ情報が足りないな……。しかしあまりゆっくりしてはいられないかもしれない、夜になったら絶望的だ。


―――


 ……なんで私はこんなに長時間流されていられるんだ? もしかして体が丈夫なのか? 普通体調が悪くなりそうなものだが……。

 ……体が丈夫なのに海に流された? なんか変だな、事情があったんだろうか。


 丈夫ということはお肉も沢山食べてるだろうな。お腹もぷにぷにでしっかり浮いてるし割と豊かに暮らしてたのかな?


―――


 このままじゃ埒が明かない。決断をしなければいけないかも知れない。

 北に向かって泳ごうか? どのぐらいの距離を泳がなければいけないのだろうか? 自分の泳力も全然わからない。体力があとどのぐらいあるかも分からない。


 西に流れているということは、東から流されたと考えるのが自然かもしれない。しかしもうかなり流されてるし、流れに逆らって泳ぐのは体力的に無理だろう。

 西に流れているのは地球の自転によるものだろうか? 赤道近くを流れているのかも知れない、暑いし。海流に身を任せて運頼みはあまりやりたくないな。もし大海原に出てたらもう島がほとんど無い可能性が高い。もっと勝算が高い行動はないだろうか?


―――


 悩んでいるうちに夜になってしまった。体も大分弱ってきている。優柔不断さが仇になってしまったかも知れない。夜空の星も輝きだして星座も全面に現れている。


「といっても星座なんて覚えてないんだけどね」


 星座で位置を割り出す方法はあったはずだ。世界地図と季節が分かれば島の位置も分かるのだろう。


「世界地図もないし、今の季節も本当に夏なのか怪しいし」


 だんだんぶっきらぼうになってきた。


「ちょっと海の中でも泳いでみるか」


 ついにおかしくなってしまった。愚策中の愚策をするなんて。でも限界状態だし、しょうがないよね。


――ゴポォッ


 真っ暗な海の中を少女が一人泳いでいく。月明かりが水の中に入って幻想的だが、そんな物は無視して奥深くまで沈み込んでいく。


「んっ」


 足がなにかに引っかかった。これは……網なのか?


「漁師が仕掛けた網なのかな。おっ、沢山魚が罠にかかってる」

「もしやここにいれば漁師が回収に来る?」


 しかしいつ回収に来るかなど分かる筈がなかった。それまで果たして体力が持つのか……。

 だがここに網があるということは島は近いかも知れない。


 網を引き上げると『ポリオン島漁業組合』と小さく書かれていた。


「ポリオン……ポリオン……一体どこなんだ」


 だがきっと優秀な人達が住む島なんだろう。葉っぱの服で肉体性能ゴリ押しの地域とは違うはず。場所さえ分かれば今すぐ向かうのに。


「んっ?」


 よく見ると網に番号が書かれている。『5』と書いてある。

 周囲を捜索してみると10個程網を発見することができた。それらは一直線上に並んでいて順番に仕掛けたということだろう。


 そしてその時気付いたが、海底の深さに違いがあった。端の『3』番が一番深く、逆の端『8』番が一番浅かったのである。


「船が島から出発して順番に網を設置して、そのまま180度方向転換して帰っていったのでは?」

「そして浅い方が島側、深いほうが大海原側なのでは?」


 もう体力も弱っていたし賭けるしかなかった。少女は持てる力を全て費やし海を全力で横断したのである。そして……。



―――



「ポリオン島だああああああああああ!!」


 少女はついに成し遂げたのである。


「よくぞ生還しましたね」

「え?」


 そこには見目麗しい女王様がいました。


「ようこそポリオン島へ! ……私が作り上げた魔法の島ですが」


「ふぇ?」

「大変だったと思います」


「……実はあなた達3人には罰を与えていたのです」

「星に着陸したときのことを覚えていますか?」

「あの時私達の村はロケットに潰されていたのです」

「そして私達は息絶えていました」


「えぇ!? それはごめんなさい」


「それでも女王ですから、魔力が込められたネックレスが奇跡を起こしました。怨念でしょうね、ただでは済まないぞという」


「水の試練、火の試練、雷の試練、それぞれを課しました。水晶で様子を見てみると……そろそろ来そうですね」


――全身の服が燃えて、色々とスレスレな炭臭い少女が登場!


――電流を迸らせながら、口パクパク、髪逆立て少女が登場!


「「やっとついたあぁぁーー!!!」」


「みんな!!!」


 3人は格好なんて気にしないで勢いよく抱き合った。


「フフフ、なかなか過酷だったようですね。十分反省したみたいです」


――女王が杖を振るうと3人の服は虹色の疾風を纏いながらポリオン島の王族衣装に切り替わりました。


「これは罰を乗り越えたあなた達へのご褒美です」


――女王がウィンクして指をパチリと鳴らすと、当たり一面に食べ尽くせないごちそうが広がりました


「村人も呼びましょう!」


――杖を振るうと、元の村にいた住民がポリオン衣装を着て一斉に蘇りました。


「なんだか知らないけど食べ放題だあぁあ」

「おいしいいぃぃぃぃ」

「こら、はしたないよ。でもおいしぃ」


こうして3人は幸せのごちそうにありつけましたとさ。


――宇宙探索の旅はロケットが壊れたのでしばらくお休みです

――王女はロケットをすぐに作ることも可能でしたが、少女達としばらく一緒に居たかったので焦らすことにしました。



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