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プロローグ
それは、たまたまだ。
なんとなく気が向いて。
その気になって?
浮かれていたのかもしれない。
雨上がりの空に虹を見つけた。
ただそれだけのことが、なんとなく嬉しかった。
楽しかった。
だから、普段なら絶対にしないことをした。
長靴を履いた幼児なら、同じことをしたかもしれない。
逆にいうと、幼児しかしないようなことをした。
ステップを踏んで、水溜りへと飛び込む。
水溜りはパシャリと小さな水しぶきをあげて、また元の静かな水面に戻る。
そのはずだった。
そのはずだったのだが。
「……え?」
水溜りを踏んだ足が沈む。
見た目より深さがあったのだろうか? と思ったのは一瞬だ。
水溜りから溢れた水が意思を持って動き、地面に不思議な文様を描く。
すぐに魔法陣だと思ったのは、創作物に溢れる日本で生まれ育ったからだろう。
創作物の導入部分として、よくある流れだ。
……異世界召喚!