第83話 設営準備開始!
魔技祭までちょうど一週間にまで迫った。俺たちは1年A組はあれから総合競技の方の磨きにシフトし、順調に戦い方を吸収しつつあった。
ガルシアもあの特訓以降、周りとの連携が見違えるほど変わった。口調と態度は相変わらずなものの以前と比べるとだいぶ上手くやっているようだった。
これは彼の中にあった負の思念が解消されたという証明だ。まだ全て取り除かれたわけではないと思うが今までみたいに一人で暴走、なんてことはもうないだろう。
そして気が付けば魔技祭までもう一週間にまで近づいてきた。今日も早朝から魔技祭へ向けての訓練をしようと率先して演習場へと行くA組生徒の姿もあり、クラスの士気は高まりつつあった。
そんな中、俺含む教師陣たちは魔技祭に向けての準備に取り掛かっていた。
「はぁ……なんでオレたちがこんなことを」
「文句言わないのレイナード。フィーネ学園長に言われたでしょ?」
「そうですよ先生。これに参加しないとクラスポイントが減点されちゃうって……」
「……言われても分かってる。はぁ……」
ため息が止まらない。
というかなぜ俺たち教師までこんなことをしなければならないんだ。聞くところによると毎年会場の設営は生徒たちが中心となって行い、メイン会場であるコロシアム内部などの大規模なセットアップは専門業者に頼むというのか通例らしい。
だが今回は生徒たちの練習不足だという要望を多数受け取り、今年から生徒ではなく教師と業者が会場のセットを行うこととなった。
確かに練習期間が少ないというのは大きな問題ではあった。生徒たちの間でもその不満は高まっていたようだ。
でも……
「代わりに教師が犠牲になる羽目になるとは……まだ仕事溜まってるのに」
「仕事なら私が手伝いますから。いつもそうじゃないですか」
「うん……まぁ……」
「わ、わたしもお手伝いしますよ! 今自分、個人的な仕事はないんで」
「す、すまん……」
もうなんだかんだ言ってレーナとハルカに手伝ってもらうというのが当たり前の日常になっていた。
俺も前よりは仕事スピードが上がったとはいえまだまだ未熟だ。毎度毎度申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「よいしょっと。じゃあ先生、早く終わらせて仕事に戻りましょ。A組のみんなのこともあります」
「ああ、そうだな」
教師ごとに役割が決まっており、それが終われば退散できるという話だった。
俺とレーナとハルカは作業スピードをどんどん上げていく。
「頑張ってますねぇ~レイナード先生」
いきなり話しかけてきたのは自称有能魔術講師以下略の男だった。
(あぁ……今一番会いたくない奴に会っちゃったよ)
面倒くさいのでため息交じりに、
「あの……どちら様ですかね?」
「ふふふふ、まぁそう言わないでくださいよ。私が来たことによって疲れも吹っ飛んだことでしょう」
「は? 何言ってんだお前」
こいつも相変わらず接しづらい男だ。いつもこんなテンションなのはある意味凄い。しかも最近ではそのテンションの高揚さに拍車がかかり、もう狂人とも言えるほどにまでなっていた。
話すだけで疲れる、まさに典型的な害悪だ。
それでも生徒からは一定の人気を誇っているのだから不思議なものだ。ま、こいつのアドバンテージの約8割は顔なんだろうな恐らく。
「お前、もう作業は終わったのか?」
「作業……? 私は作業はしませんよ」
「は? どういうことだ?」
疑問な表情を浮かべる俺にラルゴはニヤッと笑いながら、
「ふっふっふ。実は私、今度の魔技祭のメインMCに選ばれたんですよ」
「お前が……司会者?」
「そうです。フィーネ学園長に提案されましてね。出演料は出すのでぜひやってほしいと」
(そ、そんな仕事があったなんて聞いてないぞ)
聞くと魔技祭関連の仕事は非常に給料が高く、特にアロナードの教師陣はいい働き口を紹介してくれるため皆ひっそりと副業として裏仕事をしているらしい。
中には俺の一か月の給料の倍貰える仕事もあった。ちなみに魔技祭全日程を参加した給料総額と比較しての事だ。もちろんこれはバイトなので日付の指定とどれだけ働くかは決めることができる。
どうやらこのバイトか設営作業を行うかのどちらかを選べば減点対象にはならないそうだ。
(クソッ、フィーネめ。そんなこと一度も言っていなかったぞ)
大体は見当がつく。この事実を知れば俺が金の方に目が行くには明白だ。
それは誰にでも言えることだろう。ちなみにこの件については一部の者にしか公表していないという。
もし皆がこのことを知れば給料が発生する方に行くのは当たり前だ。となるとこっちの方の人手がなくなってくる。
その均衡を保つために俺には知らせなかったのだろう。
だがラルゴには教えて俺に教えないとは納得がいかない。俺だって頑張っているのだ。
それはあまりにも不公平の極み。
(後で問い詰めてみる必要があるな)
その時だ。
「せんせい! レイナードせんせーい!」
「ん?」
背後から走ってくるのは演習用の強化服に身を包んだリーフのだった。
何やら凄く慌てている様子だ。
「どうしたんだ?」
「はぁ……はぁ……フィオナが、フィオナが!」
「フィオナがどうしたんだ?」
俺はこの時、少しばかり嫌な予感が脳裏を過った。




