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第15話 少しばかりの進展



「―――アーク様、バンザイ!」

「―――あなたは私たちの英雄よ!」


 過去の記憶を思い出す。

 考えてみれば俺も一人だった。


 積極的に人と関わることはせず、能力も一人で身につけた。

 神魔団に入ってようやく人と関わることを覚えたくらいだ。


 それまで一人ということに全く違和感も感じなかったし、むしろそれが普通だった。

 自分より能力が劣る奴と関わっても得なんかない。

 

 自分が異端であることもあって人と関わることに利益を見いだせなかったのだ。

 

 それにしても気持ちいい。

 風が肌で感じられる。

 そしてなんか柔らかい物の感触が……


(ん? 柔らかい物?)


 俺はそっと目を開ける。


「あ、起きましたか? レイナード」

「ん? レーナ?」


 目を開けると目の前にレーナの顔があった。


「これは……?」


 俺はイマイチ今の状況を把握出来なかった。

 そして気がつけば俺の頭はレーナの太ももの上にあった。


「なっ……!」


 俺は速攻で身体を起こす。

 

 するとレーナは微笑みながら、


「すごく気持ちよさそうに寝ていましたね」

「そんなに寝ていたのか?」

「いえ、ほんの数十分ですよ」


 しまった……気持ちよかったとはいえ寝てしまうとは。

 しかも女の腿の上で……


「悪かったレーナ。お前を借りて寝てしまっていたようだな」

「あ、いえ。それは私がやったんですよ」

「え?」

「なんか、寝心地が悪いのかなって思って勝手にこんな形で……」


 どおりで記憶にないはずだ。

 俺が女の身体を借りて寝ることなんてまずあり得ない。


「レーナ、こういうことは生徒の前ではやらんようにな」

「わ、分かってますよ! そんなこと! レイナードはいつも頑張ってくれていますから少しでも身体が休まるようにって思っただけです!」

「そ……そうか……」


 その行動も自分が快適に休むことができるようにするための配慮だったと知ると何も言えない。

 確かに少しだけだが、身体が休まったような気がした。


 まぁ、確かに柔らかかったし……快適と言えば……快適だったな、うん。


(これが俗に言う膝枕ってやつなのか? 神魔団の誰かが言っていたような気がするな)


 ふと空を見上げるともうすっかり夕方になっていた。

 俺は懐中時計の蓋をパカっと開く。


「もうこんな時間か」

「こうやってのんびりしていると時間が経つのが早く感じますねよね」

「確かに今日は早く感じたな」


 するとくさむらからガサガサっという音と誰かの話し声が聞こえた。


「ちょっ、押さないでよ!」

「いやフィオナが押してるんだろ?」

「二人とも! バレちゃうって!」


「なんだ……?」


 俺はその叢に近づき、かき分ける。


 ―――ガサガサガサっ。


「あ……」


 いきなり見つかり、三人はきょとんとする。


「おいお前ら。ここで何をしている」


 その三人とはガルシア、フィオナ、そしてピンクの髪は……


「やっぱりガルシア、フィオナ、リーフだったのね」


 ああ、そうそう。リーフ・シュトロノーフ。

 クラスではフィオナの次に成績が良く、その人当もあってクラスや学園内での人望も厚いらしい。

 ちょっと奥手な所が欠点らしいが……


「で? 何しにきたんだ?」

「二人とも揃って居なくなったから探しにきただけだ」

「ごめんなさい。覗き見するつもりじゃなかったんです……お邪魔でしたよね?」


 ガルシアは至って普通だが、フィオナは妙に俯いている。


「いや、別に邪魔されたとは思っていないが」

「で、でも! せっかくのお二人だけの時間を台無しに……」

「……は?」


 どうやらフィオナはなにか盛大な勘違いをしているみたいだった。

 試しに俺は彼女に問いてみる。


「なぜ、そう思うんだ?」

「……え? だってお二人ってお付き合いされているんじゃないんですか?」


「……は?」

「……え!?」


 唐突な発言に思わず言葉を失ってしまう。

 隣では顔を真っ赤に染め上げているレーナの姿が。

 これはまずい。早く弁解せねば。


「それはフィオナの勘違いだ。オレたちはそのような関係ではない」

「え……? でもいつも一緒にいるし、お互いを呼び捨てで呼び合っていたからてっきり……」


(恋人の基準の敷居低すぎないか……)


 でもまぁ学生時代はこんなもんなのだろうか。

 かくいう俺もそのような概念を知ったのはニート生活を始めてからだ。

 学生時代はそんなことに興味すら湧かなかった。

 いつもフィーナが恋人がほしいと連呼していた時期にようやく知り始めたわけだ。


 今でもそうなのだが、俺は特に恋愛などに興味はない。

 異性に対するこだわりもなければ理想を掲げることもない。

 女も男も俺からすれば同じ人間としてひとくくりになる。

 性別なんて種族繁栄のための付属品という印象でしかないのだ。


「とりあえず勘違いだ。オレとレーナはただの仕事仲間、それだけだ」

「そ、そうですか……」

「私もてっきり恋人同士なのかなって思ってました……」


 リーフも同じく勘違いをしてようだ。

 そしてそのすぐそばでフィオナは分かりやすいように残念な顔をする。


「まったく……で、授業は?」

「あ、はい。もう終わりましたよ。ラルゴ先生がお二人を探していました」とフィオナ。


「そうか、なら仕方ない。戻るか」

「てか、先生がサボってていいのかよ。不公平だぜまったく」

「オレは疲れてるんだ。お前らのせいでな」

「オレだって疲れてるわ!」


 ガルシアと言い争いながら俺たちは集合場所へと戻った。


「あ、いたいた。何をしていたんですか、お二人は!」


 ラルゴが疾風の如く駆け寄ってくる。


「……ったく、せっかく休まったと思ったのにまーた疲れてきやがった」

「それ……サボっていた人の言うセリフですか……」


 こうして課外授業が終わり、俺たちは学園へと戻った。


 

 だがその帰り道、レーナの様子が少し可笑しかったことに俺は気づいていなかった。

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