3話
一晩考えた結果、私はある結論を出した。それは、傍観するというもの。姉の代わりに手助けをするかどうかとても悩んだが、私は大まかなメインストーリーしか知らない。ルート分岐がいつかも、起こるであろうイベントも分からないのだ。なので、とりあえず様子見をする。
……一つの問題は、妖怪が復活すること。もしも、必ず誰かが殺されるのだとしたら、大変困ったことになる。私が親友役をやらないことで他の誰かが犠牲になるのだけは御免だ。これ以上「私」のせいで誰かの命が亡くなるのは何としても回避しなければならない。
……と、いうことで。とりあえず私は朝早く学校に登校し、図書室を訪れることにした。知識が無ければ何もできないので、まずはその妖怪について調べることにしたのだ。
「失礼しまーす」
「おや、こんな朝早くに来るなんて珍しい子もいるのう。」
カウンターのところに座っている一人のお爺さん。長い白髪にもこもこのお髭。そして、とても身長が小さく、全体的に小動物のような印象を受ける。
「儂はこの図書室で司書をしておる。本を借りるときは儂に言っておくれ。たま~にいない時もあるが、その時はこのカウンターに貸し出し用の紙を置いとくからそこに書いといてくれれば良いよ。」
「分かりました」
ぺこりと頭を下げて、本を探す。実際にあった出来事だったら、歴史に分類されているだろうか。でも、妖怪のことだから伝説とかに入るのかな?片っ端から探すのも一つの手ではあるが、この図書室は広い。正直、広くても教室四個分位だと想像していたので、驚いた。
「どうしようかな」
そこで、先程挨拶したばかりの司書さんを思い出した。カウンターのパソコンなら妖怪について書いてある本を探せるんじゃないだろうか。
「司書さん、ちょっと良いですか?」
「ん?なんじゃい?」
「本を探してるんですが、どこに有るのか分からないので調べて貰えませんか?」
「ほうほう。どんな本をお探しかな?」
妖怪だけでは膨大な数になってしまう。どう言えば良いんだろう。
「陰陽師に封印された妖怪について書かれた本です。」
「……陰陽師に?」
「はい。」
お髭がぴくりと動いた……気がした。もっこもこなので見間違いかもしれないが。
「恐らく、おまえさんが探してるのは『悪食王』じゃな」
「それってどんな妖怪なんですか?」
「まだ侍もいなかったころに現れたと言われている妖怪じゃよ。その名の通り、あらゆる物を食らったそうじゃ。陰陽師が退治を試みるも、力を弱めて100年封印するのが精一杯だったという話じゃ。」
私の知っている話と重なるところがある。そんな何体も同じような妖怪がいるとは思えないし、多分そいつだろう。
「『悪食王』に関して正確に書いてある本はこの図書室じゃと一冊だけじゃ。着いておいで。」
椅子を飛び降りて迷わずに歩き出す。後ろから見ると、小動物感がいっそう強くなる。
「ここの棚のあれじゃ、あれ」
図書室の隅っこの小さなスペースにある一冊を指差してぴょんぴょん跳ねる司書さん。見ていてほっこりするが、ずっとジャンプさせるのも申し訳無いので、大人しくその本をとる。結構重い。
「その本に詳しいことが書いてある。……では、また何かあったらおいで。」
「はい。ありがとうございました。」
図書室に備え付けられている机に座って早速本を開いてみる。どうやら陰陽師について書かれた本のようだ。
「ん~……。あっ、ここだ」
「悪食王」という名前とともに、一体の妖怪が描かれている。その姿は黒い狐。名前から、もっと気持ち悪いようなものを想像していたのだけど、そんなことは無かった。
一通り読んでみたが、外見以外に役に立ちそうな情報はあまり無かった。唯一ゲームに関係ありそうだったのは、陰陽師の家系は一葉家だけでは無いということ。実はもう一つ家系があって、どうやらその家も現在まで続いているようだ。
ふと顔を上げると、予鈴が鳴る数分前だった。立ち上がって本を戻し、司書さんの出入口に行く。
「おや、教室に行くのかい?」
「そうですね。サボるわけにはいきませんから。」
「それじゃあ、またおいで。最近は図書室に来る子も減ってしまって暇じゃから、今度はお茶でもしよう。」
「楽しみにしてますね」
月城を見送った司書は、彼女が出て行った扉を見ながらぽつりとつぶやいた。
「もう、100年が経つのか。なあ、『悪食王』」
司書さんの外見は某官吏さんの物語に出てくるふかふかなお爺さんリスペクトです。
物語に一人小さなご老人。




