2話
文章書くの慣れないです……!
気づいたら昼休みになっていた。一緒にご飯を食べようという晴の誘いを断り、人気の無い中庭に出て、頭の中を整理する。
私は転生しているらしい。
いや、そりゃあ信じがたいことではあるが、なにせ今まで15年間生きてきた記憶がある上、今は前世の記憶もある。これを夢というのはちょっと難しいだろう。
ただ、そうすると現在の状況は大変厄介だ。だって、どうやら私は乙女ゲームの世界に転生してしまったようなのだから。
その乙女ゲームは「青空恋愛奇譚」。前世での友達がはまっていたので、よく話を聞かされていたのだ。このゲームは主人公が転校してきたところから始まる。古来から続いている陰陽師の一族の末裔だとかいう設定の主人公は、生まれた時からある役割を持っていた。その役割とはある妖怪の封印をかけ直すこと。
昔一葉家のご先祖様がある大妖怪の退治を依頼された。しかし、その妖怪は力が強く、封じるのが精一杯だった。更に、どんなに強力な術でもその封印は100年しか保たない。そこで、そのご先祖様は100年に一度封印できる能力を持った子が産まれるような術をかけた。
ここまでで分かるように、一葉香苗がその子供というわけだ。まあ、ここまでだったら、何とか理解できる。この後が私がいくら勧められてもこのゲームをしようと思わなかった理由だ。
何でも、その封印の能力を使うには、愛する人を見つけなければいけないというのだ。前世でこれを聞いたとき、私は思った。流石に設定無理やりすぎるんじゃないだろうか、と。しかもこのゲーム、誰のルートに入っても結局封印が解けてしまう。封印が解けた妖怪が最初にすることは、ゲームの序盤から所々で主人公を助けてくれた友人であり、攻略対象の一人、月城梨人の姉である月城凛音を殺すこと。
…………私はどこから突っ込めば良いのだろうか。まさか、よりにもよってこんなゲームに転生してしまうとは。もっと普通の乙女ゲームとかあっただろ!
「私、本当の『凛音』じゃないのに……」
そうだ。そこが可笑しい。本来、この場所には姉がいるはずだったのだ。しかし、姉は私が小さい頃に事故で亡くなり、そのことを受け入れられなかった母は私を「凛音」として扱うようになった。今となっては、私を凛音として扱わないのは弟ぐらいなものだ。
んん?……つまりは、「私」というイレギュラーがいる所為で物語が変わってしまったのだろうか。私の所為で姉は命を落とし、母は壊れてしまったのだろうか。
そんなの、あんまりでは無いだろうか。
「はは……最悪」
ああ、困る。目の前がぼやけてきた。本当に泣きたいのは姉だろうに。
こんなの、どうやったって償えない。
「ねえ、大丈夫?」
……ん?今の声誰?
慌てて横を見ると、そこには一人の少年が立っていた。
「…………いつから居たの?」
「ん~。君が泣いてるあたりから?」
そう言って私に近づき、目元を拭ってくれる。彼とは初対面だが、こんなに近づいても不思議と嫌悪感は無かった。
ミルクティー色の髪に、綺麗な青い眼。少し困ったように笑う顔は大変整っている。
「ごめんね。何だか、見なかったことにするのは駄目な気がしたんだ」
「ううん。……ありがとう」
良くも悪くも、彼のおかげで思考が途切れた。あのままでは絶対に良くない方向へと進みそうだったので、正直助かったのかもしれない。
「ん。涙止まったみたいだし、もう行くね」
「うん。ばいばい」
本当に泣いてるのが気になっただけだったようだ。親切な人だなあ、と思いながら見送ってふと気づいた。
「あ、名前聞いたほうが良かったかな」




