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物語部員の生活とその意見  作者: るきのまき
9・樋浦清の物語・その2
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9-1話 とりあえず3人分だけ水着の場面を出す

 時刻はまだ昼になってはいないけど、ほぼ真夏の太陽は太平洋に面した地方ののどかな海水浴場をじりじりと焼きつくすような感じで照らしている。空にはくっきりとした入道雲が浮かび、どこにでもある砂浜にはどこにでもあるビーチパラソルがいくつも広げられて、そのひとつの下にはふたりの人影がある。

 ひとりは赤紫のワンピース水着、スリムコンパクトボディで、見た感じはやさしそうな女子。

 もうひとりは青緑の露出過剰なビキニ、ナイスすぎるボディで、ショートカットの髪にサングラスをしている女子。

 暇な地元の高校生と思われる、波と戯れていてすでに真っ黒な3人組が、ワンピース水着の女子の人なつっこい笑顔に釣られて声をかけるが、サングラスを外すと目つきが悪いビキニの女子の、ドスの効いた声で頭を下げて引き下がる。

「あぁ!? おれの連れに軽々しく声をかけるなよなコラ」

 今回の話の書き手(語り手)であるわたし、樋浦清は物語部員の一年生で、ライトグリーンの高校生っぽいセパレーツ水着で、ふたりから少し離れていながら、ふたりの会話が微妙に聞き取れる場所で、コンセントリック様式の砂の城を作っている。肩はあまり日に焼けすぎないよう、髪の色(人にはピンクに見えるらしい)と同系色のタオルをかけている。

「もうやめようぜ、こんなくだらないの」と、目つきが悪いほうの女子は耳にかけていたきつねのしっぽ型のイアリングを外すので、わたしと同じ物語部の一年生で目つきが悪い立花備(男子)になる。

「しかしものすごく釣れますね!」と、やはりイアリングを外して女子から男子になるのは、同じクラスで物語部一年生の市川醍醐くんだ。

「まったく、人の話を最後まで聞いて欲しいよな! 「メシおごるとかだったら考えてやらなくもない」って言う前に、みんな逃げちゃうんだもんなあ」

 わたしたち物語部員とそのサポートメンバーは、夏休みの2泊3日の強化合宿のため、このローカル色ただよう海水浴場がある海に来ている。

    *

 わたしが語り手の回は、語り手の感情とか考えが割と見えやすく出ているのと、描写がずぼらなのが特徴だと思う。いや多分そうなんじゃないかな。だから、きれい、とか、可愛い、とか、そんなところでごまかすけど、そんなに嘘は混ざらないようにはするつもりです。

 強化合宿の宿は、わたしの友だちである藤堂明音さんの別荘で、その前はプライベート・ビーチだ、というのはアニメにしかないネタで、本当は藤堂家の本家が地元スーパーマーケットをやっていた時代に社員の保養施設として建てたもので、会社がなくなった(大手ショッピングモール会社に吸収合併された)以降は、わたしたちの高校がある市が買い取って、というかほとんど藤堂本家が寄付したような感じで、公共の保養・研修施設になっている。

 つい最近の震災の影響で、かなりガタガタだった施設は2階建ての1階部分がほぼ壊滅し、耐震の見直しも含めてリフォームされたので、構造や内装はそんなに古くなっていない。その前の砂浜もプライベート・ビーチではなくて、単に公共の海水浴場が、東西に伸びる岬によって南北に、9:1ぐらいの割合で分断されているだけだ。

 建物の名前は藤洋荘という名前を引き継いで、20人は泊まれる部屋と、業務用レベルの食堂・厨房と、卓球場と、2階には露天風呂つき(ただし掃除が面倒くさいので通常は使われていない)の大きい浴場がある。

 部屋割りとか見取り図とかは、別にここで連続殺人が起きるわけではないので、というより作者があまり考えていないので省略なのだった。

 しかしここまで書いてきて弱ったことに、藤堂明音さんが何色なのか全然描写がないんだよね。白黒アニメではないので、多分この話がアニメになったら最初からわかってることを描写するのも面倒くさいんだけど、いろいろあって言うと、だいたい青系ということになる。戦隊だと嘘ブルーですね。

 あと、現役声優でなにかと最近多忙な松川志展ちゃんは柴犬みたいな色、嘘シバで、醍醐くんの友だちの関谷久志くんは黒系。アメリカのドラマならアフリカン・アメリカンがやるとパターンになりがちな感じ。それから、顧問の山田洋司先生、通称ヤマダはプラチナブロンドのセミロングで銀縁眼鏡をかけていて、すみれ色の瞳で悪役っぽかったらいいんだけど、セピア色の髪をどう見てもローカルな高校生みたいな髪型にしていて、すみれ色の瞳。眼鏡もかけてない。まあヤマダは水着にならないから、今回はどうでもいいけど。

 でもって話を巻き戻して、みんなの車から海が見えたところからはじめると、そこからさらに数十分、高速道路を降りて、出たところのコンビニでみんながおにぎりとかサンドイッチ、さらに志展ちゃんが持ってきた冷凍果物と、何考えているかわからない設定の千鳥紋さん…あ、今当人から「設定って言うな」って頭叩かれたので、えーと、宿命? の千鳥紋さんが持ってきたおまんじゅうを食べて、宿についたら荷物を下ろす前に宿の部屋をざっくり掃除して(とはいえ、定期的に管理人みたいな人が、近くにある例の大手ショッピングモールから来ているので、くもの巣だらけということはない)、ヤマダの説明を聞いたのだった。

「合宿の一日目の夕食はカレー、二日目の朝食はカレーの残り、二日目の夕食はバーベキュー、三日目の朝食はバーベキューの残りの焦げた肉とか野菜ということになっている。昼食はまあ、適当に調達してくれ」

 そしてみんなに、驚愕のスケジュール表のプリントが配られた。

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