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物語部員の生活とその意見  作者: るきのまき
6・樋浦遊久の物語・その1
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6-5話 誰が年野夜見を殺したのか

「こーいーのうーそを、のこらずぜんぶまとめーてー」と、俺は歌った。

「それは何の歌なんですか」と、俺の後ろにいる立花備は聞いたので、俺は「恋の嘘の歌」と答えた。

「パフィーの「アジアの純真」ですね」と、くだらないことはやたらに知っている市川醍醐は言った。歌詞は全然違ってるけどな。

 作者が誰なのか知りたくて仕方がない立花は、廊下の途中でのんびりと歩いていた俺を追い越して部室のドアの前まで先にたどり着いて、何かがしゃがしゃやって首をかしげた。

「あれ、おかしいな、なんか部室に鍵がかかってる」

 部室に残っていたのは年野夜見で、鍵は部室の壁の定位置のフックに引っ掛けて俺たちは出たから、鍵をかけたのは年野以外には考えられないはずだ。

 部室の鍵はひとつしかないことになっていて、部員は6人なので、とりあえず曜日と鍵の担当者を決めておいたが、これはひと月ごとに担当の曜日を変えることにした。担当者が来るのが遅くて部室が開いてなくても、となりが図書室なんで物語部員の暇つぶしには問題がない。ソファでごろごろしたり、飲み食いしたりできないだけのことだ。

「あっ、なにか中で「うーん…」とか言う声が聞こえます。年野さんが死にかけてるかもしれない」と、ドアに耳をつけた醍醐は言った。

「いや、これは年野夜見さんが俺のことを考えながら○○して△△してるんだよ。なにしろこれは、おれのハーレム物語だから」と、立花は調子のいいこと言った。

「いやいや、これはそういう薄い本じゃないから。それに年野がそういう本を作るにしても、彼女はあの金髪ツインテール美少女のはずの紺野陽が金髪ハンサムさんに見えてしまうキャラ属性なんで、お前の望んでいるようなものにはならないぞ」

「そんなことより、早く年野先輩助けようよ!」と、妹は普通に聞くと真っ当に思えるようなことを言った。

「待て、白々しいぞ妹よ。おまえは部室の鍵の複製をこっそり作って持っているはずだ。今日の天気は曇ときどき雨で、今朝は雨が降っていたので、レインコートを着て自転車で学校に来て、濡れたレインコートを合鍵で開けた部室にかけておいただろう。要するに、年野を殺したのはおまえだ」と、俺は妹を指さした。

「おまえは電車の定期代の代わりに、俺より2000円も多く小遣いをもらっている。おまけに俺の今の服はおまえが昔見ていたアニメに影響されて買ってた、ファッションコーデのお下がりだ」

「それ聞くと樋浦姉さんのほうが妹を殺す動機ありそうですけどね」と、醍醐は言った。

「ということで、犯行の動機はおまえが考えろ、妹。それでもって合鍵を渡せ」

「えーっ、今からわたしが考えるの? え、えっと…痴情のもつれ、みたいな。三角関係で、わたしと年野先輩が好きになった人は…」と言って妹は、立花を指ささないで醍醐を指さした。

「そんな、たかが恋愛ぐらいで人殺すわけねーだろ」と、ふてくされた立花は言った。

「なんかさあ、この物語の作者って、どうも年野夜見さんっぽいんだよね。でもって、この後の展開で清は作者に殺される予定なわけよ。それ知ってたから先に清が作者のほうを殺した」

「いずれにしてもせーちゃんが犯人だわ」と、千鳥紋が言った。

「ちょっと待ってください、作者が死んじゃったらこの話、終わってませんか? ぼくたちが生きていて、話が続いているということは、年野さんは作者であってもなくても、生きているということですよね」と、醍醐は言った。

「そうだよ、だいたい合鍵って確かにわたしはこっそり作って持ってるけどさ、それ、バッグの中に入れてて、そのバッグは今、部室の中にあるじゃんよ。この部室に入る方法、もうドア壊すしかないんじゃないの?」

「ふーむ…じゃあとりあえずドアを開けよう。ヤマダが俺に渡したキーホルダーには鍵が3つついている。そのうちのひとつが部室の鍵だ。ヤマダはこっそり忍び込んで何かを置いていったりするために、当然鍵を持っている」と、俺は言った。

「ひどいよねーちゃん!」

「ひどいですよ、遊久先輩」

「知ってました」

「茶番だわ」と、各人が言った。

 ドアを開けて俺たちが見たものは、机の上に何か真っ赤なものがこぼれていて、そこに顔を伏せている年野だった。

「こ、これは密室殺人…」と、青ざめた顔で立花が言った。

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