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物語部員の生活とその意見  作者: るきのまき
5・立花備の物語・その2
34/86

5-6話 戦闘の成果と夕日の丘にて

 あちらの物語部は円陣を組んで相談をはじめた。

「よかろう。これ以上お前らのほうに犠牲を出すには忍びないし、だいぶ陽も傾いてきた」と、あちらの千鳥紋先輩(男性)が言った。

 戦闘ステージは日常ステージにかわり、おれたちは駅の北西にある小高い丘に、1本だけはえているブナの木の下にいた。一時期はこの日常ステージでもかなり雨が降ったらしく、下草は濡れていてぐしゃぐしゃだった。

 服の破れたところやけがの傷などは、年野夜見さんとあちらのおれが、すぐに直してくれた。

「こんなことぐらいしか役に立たなくてすみません」と、年野夜見さんは言った。

 丘からは少し離れたところに、近在では唯一の巨大ショッピングモールがあり、その先が通学に使っている駅で、やや先におれたちの学校が見える。

「ああ、虹も東の空に見えますね」と、市川は言った。

 一年のうちでも一番日が長い季節で、戦いが終わったおれたちはぼんやり、夕日に染まる風景を見ていた。

「で、どっちが本当の物語部になるわけ?」と、樋浦遊久先輩はおれに聞いた。

「本物とか偽物とかはないのです。あちらが本物になったとしても、おれたちが消えてしまうことはありません。あちらの千鳥紋先輩が言ってることはでたらめです」

「そのとおりだ。以後、われわれは真物語部を名乗り、おまえたちは偽物語部と名乗ることを許そう」と、あちらの千鳥紋先輩(男性)が言った。

「偽物語部のほうが物語部らしいので、それでもいいです」

「では、宝の地図をお互いに出すことにしよう」

 相手の地図は、「宝図」と左上に、「8W」と右下に書いてあり、校舎と思われる四角い建物が図の左側に、右側に×印が書いてあるだけの、ほぼ白紙なものだった。

「何これ。こんなのじゃさっぱりわからないよ」と、おれは言った。

「待てまて。これは2つの地図を重ねるといいんだ」と、遊久先輩は言った。

「あれ…どうもだめだな。うまく重ならない。あっそうだ。これは逆版、っていうか裏返しの地図なんだ」

 遊久先輩は相手の地図を受け取り、こちらの地図と裏返しになるようにして透かしてみた。

 確かに、学校と駅その他の場所は、うまいこと一致する。

「で、この×印がついているところは、あそこにあるブナの木」

「でもって、N7とW8は、北に7歩、西に8歩ですね。そこを掘ってみましょう。ひょっとしたらこの物語の作者がいるかもしれない」

「いや多分いないだろうけど、宝物が見つかればしめたものだ」

 ブナの木から少し離れたところは、確かに周りの土の色とは違っている部分があって、それは3メートル四方ぐらいの大きさで、それを掘り出すための、スコップとかいろいろを、大急ぎでショッピングモールのDIYコーナーで買ってきた。

 資金援助は常に電子マネーには5万円は入れているという千鳥紋さんからで、その金は成功報酬でいいことにしてくれた。

 そしてそれから1時間、さすがに初夏の屋外もゆっくりと風景を変え、夜空の星と市街地の明かり以外は、おれたちが掘り出し用具とあわせて買った安物のLED照明が穴の底を照らすだけになった。

 底にはタテ2メートル、ヨコ1メートルほどの棺のようなものがあった。

「嫌なものが埋まってる気がするわ」と、千鳥紋先輩は言った。

 おれたち男子組全員でそれを地表にあげ、中を開ける。

「いやー、ごめんごめん。なんか生徒会室の備品整理してたら、こんなところに来ちゃってさ。お、お呼びでない? みたいな」

 出て来たのが2番めの生徒会長だったので、おれたちは容赦なくボコボコにした。

 これが1番めだったらみんなでもう一度殺し、3番めだったらそっと埋め直していただろう。

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