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物語部員の生活とその意見  作者: るきのまき
4・立花備の物語・その1
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4-5話 スーパー転校生の転校初日の昼休みまで&ビッグス・ダークライター問題

 妖狐、つまりヨーコは紺野陽こんのはるという偽名を黒板に書き、おれの隣の鳴海和可子が本当だったら座る席につき、1時間目の授業は英語で、英米で10年間過ごして日本の大学を出た女性教師と問答をして「エクセレント!」と言わせ、休み時間にはクラスの人間に囲まれて、「そういうのは備ちゃんに聞いたら知ってると思うよ」と紺野が言ったせいで、囲みきれなかった人間はおれの回りを囲って質問した。一番聞かれたのは、どうしてふたりは知り合いなのか、ということなんだが、これは俺が「戦友。話すと長くなるがいいか?」と答えたらそれ以上誰も聞かなくなった。好きな食べものは多分油揚げで、趣味は人を化かすことかな。

 2時間目の授業は世界史で、古代ローマ史を卒論にした教師は面白半分にミトリダテス戦役について聞いたので、紺野は面白半分に20分間、第一次から第三次まで話し、次の休み時間には噂を聞いた一年のほかのクラスからも人が集まったが、紺野はおれの机の上に座って話しはじめたのでなかなか迷惑だった。

「面白いね、備ちゃん」と紺野は3時間目の授業開始のチャイムでみんなが席についたあと、俺に小さい声で言った。

「女子の半分ぐらいには、ぼくがハンサムさんに見えて、男子のほとんどと女子の半分ぐらいにはツインテールの女の子に見えるんだ」

「まあそりゃ、男同士が好きな女子もいるからな。で、なんで転校してきたの?」

 教師が来たので、紺野はメモを渡した。

【この物語はエロラブ要素が少し不足しているので、それを補完するため】

 納得した。

 3時間目の授業は数学で、職員室で噂を聞いたと思われる教師は紺野に、中学2年の魔法少女が数万回のタイムリープのあげく解いた問題を解くよう指名し、紺野は背伸びをしたが黒板の3分の2までしか数式で埋めることができず、次の休み時間には上級生のクラスからも見学に来る者がいた。

     *

「ということで、今は4時間目の体育の合同授業で、市川や清のクラスと一緒なのだが」と、俺は土手の上で、木陰に座りながら、左どなりの市川と話した。市川の左どなりには、どう見てもハンサムさんな紺野がいて、遠くの女子が鉄棒をやっているところには、ツインテールの紺野がいた。

「おれたちは、体力測定の順番待ちで、おれのほうはとても疲れている」

「ああ、砲丸投げの順番がなかなかこないんですよね。しかし、なんで備くんはあんなかわいい子と知り合いなんですか?」

「もうそれ、さんざん聞かれたから。それについては放課後、おれがみっちり、3時間ぐらい話すけどいいか。とりあえずビッグス・ダークライター問題についてだ」

     *

 ビッグス・ダークライターというのは、映画『スター・ウォーズ エピソード4』に登場し、主人公のルーク・スカイウォーカーに「やあルーク、ルークじゃないか!」と馴れ馴れしく話しかけ、デススター破壊の突撃隊の隊長に「こいつは凄腕のパイロットなんです」と紹介する、謎のチョイ役なのに意味を持っている人物だ。

 彼の紹介があったので、ルークは突撃隊(Xファイター)のメンバーになれた。

 彼は実はルークと同じ惑星タトゥイーンの出身で、不良学生時代にベガーズ・キャニオンをT-16で飛ばした仲で、本当はもっといろいろエピソードがあるんだけど、話の都合でばっさり削られている。

 こういう、キャラ設定だけ作りこんでても、話の本編だけではさっぱりわからないキャラクターに関する扱いかたの問題を、ビッグス・ダークライター問題と名づけたい。

     *

「わかりました。ああ、鉄棒、紺野さんがやってるなあ。え…だ、大車輪?」

「お前に面白いことを教えてやろう。ちょっと左がわにいる男子を見てみろ」

「こ…これは紺野さん? ち、ちょっと待ってくださいよ。あっちには女子で鉄棒やってる紺野さんがいて…あ、今なんか変な風に体ひねって着地した。で、ぼくの左にも、美少年の紺野さん」

「そういうわけだ。つまり、右のほうの遠くの紺野は見れるし、左のほうの隣の紺野は見れる。でも両方は見られない」

「ふふん」と、紺野は鼻で笑った。

「でもそんなことありえないですよ。あ、なんか女子の紺野さん、少しふらふらしてるみたいで、清さんが抱えてる。回りすぎたんだな」

「じゃあ、もっと面白いことを教えてやる。ちょっと立って、紺野の左側に座ってみろ」

「ああ、それだと男子と女子の両方の紺野さんが見られますね」

 市川は位置を移動した。

「さて、何が見える、清」

 俺の左どなりにはツインテールの紺野、その隣には樋浦清がいた。

「え、何のこと? あたしは陽ちゃんが張り切り過ぎちゃって目を回したみたいなんで、ちょっと付き添って休ませようかと思ったんだけど」

「ふふん」、と再び紺野は鼻で笑った。

「あー、なんだか疲れちゃった。備ちゃんの膝枕で少し休んでもいいかな」

「まったくもう…人化かすとか、変なことするなよ。で、今は市川はどこにいるの?」

「あそこで柔軟体操やってる」と、紺野は右斜め前方を指差した。

 おれは言った。

「おーい、市川。お前は狐に化かされてるんだぞー」

 紺野は本当にいろいろなことができるので困る。

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