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物語部員の生活とその意見  作者: るきのまき
4・立花備の物語・その1
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4-4話 転校生は水着回に間に合うよう5月の連休明けにやってくる

 最初から陰で話を聞いていた涙目の樋浦遊久と、いつも通りの千鳥紋が姿をあらわした。

「え…じゃ、やっぱ清は未来人で、いつか未来に帰っちゃうんだ…」

「だっ、大丈夫だよ、おねーちゃん、そこらへんの話は全部嘘だから!」

「それより、なんでこんな大事な話をするときに俺を呼ばないんだ、立花備」

「え、えーっと、遊久先輩が混じって話をするときは、下級生は丁寧語になって、おれと市川との区別がつかないから、みたいな…」

「そこらへんは抜かりはないようだ。われわれの設定表を見せてやる。これは部室の壁に誰かが貼ってあったのだ」

「ひょっとして、作者の人が貼ったんですか? 「誰が誰をどう呼ぶか」の表。なるほど、おれは先輩を「遊久先輩」、市川は「樋浦さん」と呼ぶんですね」

「それはいいんだけど、セリフの最後にちゃんと相手を呼ばないと誰のセリフかわからないじゃないですか、樋浦さん」

「で、遊久先輩は自分のことを「俺」って言ってて、おれは「おれ」って言ってる。ああっ、そんなことより、清はおれを「備」って言ってて、市川のことは「醍醐くん」って言ってる。この差は何?」

「あーもう、全然話が進まないから、先行こうよ」

     *

 いろいろあったゴールデンウィークも終わり、連休バテとか連休ボケとかしているクラスの連中だが、相変わらずおれはおれに話しかけてくる相手には雑で無愛想な対応をしていた。おれが物語部員以外の人間とあまり関わらないようにしているのは、関わりすぎるとつい物語を作ってしまって、どこまで本当のことなのかおれにも相手にもわからなくなってしまうからだ。やろうと思えばおれだって、頭脳明晰スポーツ万能、美形の優等生で家は某財閥の跡取、ぐらいの設定にすることはできるだが、そんなのは面倒くさい。

 うちのクラスには物語部員も、物語を愛してそのためなら魂でも売ろうというほどの物語好きもいないのでつまらないし、連休明けでも鳴海和可子の席はヨコ5列でタテ5列か6列になっている、クラスで一番後ろの窓際の隣で空席になっていた。要するに6列目の席は窓際からおれ、空席、どうでもいい人、の3人で、本当ならここも清たちと同じ28人、つまり完全数になっていたはずだし、多分夏休みが終わればそうなるんだろう。

 そうこう思っているうちに授業開始前のロスタイムにあり、特に伝達事項がない場合はクラス担任の、煙草臭い初老の国語教師も顔を出したり出さなかったりするのだが、その日は教師の後ろに、おれが何やら知ってるような知らないような子を連れてきていた。改めて見てみると、それが描写に困るんだよな。遊久先輩より少し大きいくらいの、割と小さめできつね色の髪をツインテールにした、ダークブルーの瞳の可愛い子に見えるし、まばたきをして見直すと、背はおれと同じぐらいで、きつね色の髪を後ろで結んだ、ダークブルーの瞳のハンサムさんに見える。

「あーっ、思い出したよ、お前はヨーコじゃん。なんで転校生になってんの?」

「やあ、君も同じクラスだったんだ。なつかしいなあ。ミトリダテス戦役以来じゃないか」と、ツインテールの子は言い、

「仲良くしようぜ、備ちゃん」と、ハンサムさんは言った。

 なるほど、何で今までこの話の中でツインテールが出てこなかったか、おれにもわかった。リアル高校生でそんな髪型してるの見たことないから、作者はこの話のリアル感をもう少し出そうと思ってたのかと勘違いしてたな。しかしリアル感どんどんなくなってる。

 彼女というか彼は妖狐で、おれたちはフォックスとウルフとかつては呼び合っていた戦友で、今はどうやら奴は頭脳明晰スポーツ万能、美形の優等生(ただし性別は揺らいでいる)という設定らしい。

 アニメならこのあたりで次回になるだろうが、もう少しおれの話は続くのだ。

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