2-4話 さあさみんなで作ろう物語を(ミュージカル)・1
「いたっけ、とはご挨拶だな」
あまりリアルにはあり得ないタイミングで樋浦遊久さんが、屋上への出入り口のドアから現れて、昭和の東宝映画みたいなことを言いました。手にはぼくのためのステッキを持ってきてくれていました。
後ろにはオレンジ色のワンピースで紅茶を飲んでいる千鳥紋さんと、ゴスロリっぽい格好で小さい日傘を差している年野夜見さんがいました。
「明音さんが転校して来たのは俺が小学校6年生のとき、つまり妹が4年生の夏休み明けのときで、姉妹ということは学校では隠してたんだ。で、俺たちが引っ越してきたのはその1年前なんだな」
「そうかあ、お姉さんとは半年ぐらいしか同じ小学校じゃなかったし、私は違う中学に行っちゃうし、覚えてなかっただけなんですね。でもお姉さんたちも転校生だったというのは知らなかったな」
「へえ、これが清さんの本当のお姉さんなんですか。どうもはじめまして」
と、志展さんは挨拶しました。
なんか同様しているのは清さんでした。
「ち、ちょっとみんな、何言ってるの? ここに来てるのは千鳥先輩と年野先輩だけだよね? わたしの姉みたいな人、どこかにいるの? わたしには姉はいない設定じゃなかったっけ」
こつこつ、と清さんは、樋浦さんが持っていた杖で頭を叩かれます。
「妹よ、くだらない戯れ言はそこまでだ」
「はい…」
「それはともかく、醍醐、ちゃんと約束の歌、できたって話を聞いたんで来たんだけど」
「あー、「物語部の歌」ですね。では、さっそくはじめましょう。これはみんなでやらないと意味がないんです」