2-3話 目が不自由な按摩対5人の魔法少女
街道筋を歩く目が不自由な按摩(藤堂さん)と、それを取り囲む5人の魔法少女。持っている武器は剣・槍・銃・弓、それに盾です。
剣(久志)「やっと見つけたぜ、座頭ハチ!」
槍(志展さん)「よくも俺たちの仲間をやりやがったな!」
銃(備くん)「無為な殺生はしたくねぇが、これも円環の理ってもんだ!」
弓(清さん)「生きてこの宿場から出られると思うなよ、このど視覚障害者!」
盾「やっちまえ!」
座頭ハチは、まず盾をやっつけます。最初に潰しておかないと時間巻き戻されてやっかいなことになりますからね。
次に銃を潰して、矢をかわすと、弓の奴を弓ごと袈裟斬り。
突っかけてきた槍の柄をつかんで相手を引き寄せると胸をひと突き。
ここまで約1秒。剣は腰抜かしてしょんべん漏らす。
剣「わ、悪かった、この通りだ! 命だけは堪忍してくれ!」
逃げようとするところを背中からぶった斬ります。
*
「…という話はどうかな?」
ぼくがそう言うと、ハチ役の藤堂さんが文句をつけました。
「いや、これはちょっとおかしいよ。このハチって、居合い抜きの達人ってことになってるわけで、相手が動くのを待って、つまり攻撃を仕掛けられてから空気の動きを読んで斬るんだろ? 盾は攻撃じゃなくて防御にしか使えないんだから、最初に倒すってことできなくない?」
「言われてみると確かに」
備くんも意見を言いました。
「銃を潰すというのも、どういう方法でやるんだよ。だいたい、どこに銃を持ってる人間がいるってわかるんだ」
「それは…うう、火縄銃のにおい、みたいな」
志展さんが提案しました。
「まず、この槍の先を斬って、それを銃の人に投げる、というのはどうでしょう?」
清さんが賛成しました。
「それいいね! あと矢は、射つとビーム状に広がる、魔法少女系の武器なんだけど、射つ前に「アルティメット・アロー!」って言わないと効果ない設定で」
案の定、久志が怒りはじめました。
「くだらん。まったくくだらん。最後は、俺とハチが一対一の、橋の上での決闘に決まっておる。拙者、この役はご免こうむるでござる」
「しょうがないなあ。今んところここには6人しかいないんで、別の誰かが来るのを待つよ」
ぼくは、並んで座っている久志と備くんの間に割り込んで座りました。
「関谷さんと醍醐くんって、あんまり共通点がなさそうなのに仲いいんですね。おふたりはどうして知り合ったんですか」
志展さんが聞いてきて、言われてみるとそこらへんの説明、ざっくり省略してたので、改めて説明することにしました。
「ええと、ペパーランドという愛と平和の国があって、それが悪いことの好きなアックランドの王様ワルゾーに侵略されて、ペパーランドのプリンセスは、最後の希望としてソルトとシュガーというふたり、というかまあ二匹の淫獣に、人間の世界に行って勇者を探して来てください、と、変身グッズを託して…」
「ええっ!? そんなこと公に言っちゃっていいんですか?」
「中学の文化祭の、クラス有志による演劇だ」
久志が真面目にツッコミを入れました。
「シナリオをこいつが書いて、俺が主役のひとりをやったんだ」
ぼくは首を絞められながら言いました。
「そ、その通りです…ごめん、久志」
「ちなみに劇の題名は『海の三バカ大将 地球最大の決戦』。ミュージカルだ。昔っからくだらない話を作ることに関しては天才だったんだよな」
「うん、もともとは三人組だったんだけど、ひとりは違う高校に行っちゃってね」
これについても、長い物語はあるのですが、今回は省略するのです。
「へえ…わかりました。ところで」
志展さんが、向きを変えて質問しました。
「清さんと藤堂さんって、どうして小学校のとき友だちだったんですか」
今度は清さんが物語を作る番なのです。
「え、えっと、確かわたしが転校してきて、最初に話しかけてくれたんじゃなかったっけ。こう、クレヨンで、ドラゴンと戦う姫騎士の絵を描いてたら…」
「それは違うな」
藤堂さんは思いっきり否定しました。
「確かにその絵はもらったけど、転校してきたのは私のほうだ。藤堂家の跡取がいなくなったんで、私が養女としてここに越して来たんだ」
「そんなことないよ! わたしとおねーちゃんが越してきたのは、ちゃんと家庭の事情があって」
「え?」
と、藤堂さんは首をかしげました。
「清にお姉さんなんて、いたっけ?」