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物語部員の生活とその意見  作者: るきのまき
1・樋浦清の物語・その1
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1-1話 ほらもう、なんでまた嘘書くのかなあ?

「俺たちは物語の中の登場人物だということを常に意識してないといけない」と、おれは、いった。

「はぁ? 何いってるんだお前は」と、常に男らしい樋浦遊久は、いった。

「いきなりメタ発言なのね」と、紅茶の入れかたがうまくて常に女性語で話す千鳥紋は、いった。

「では誰がその物語の作者なのかを探さなければいけませんね」と、常に冷静な市川醍醐は、いった。

「主の仰せのままに…」と、常に寡黙な年野夜見は、いった。

「ははっ、別にいいじゃんそんなの」と、常に何も気にしない妹の樋浦清は、いった。

 季節はゴールデンウィーク前で、場所は物語部(仮名)の部室、おれは主役で他の五人はハーレム要員だ。


「やらなければならないのは小説を書くこと。勝者は100万円だ」

「「「「「ええーーーーっ!?」」」」」

     *

 昼休みになったので、ほおづえをついて考えているわたしのななめ前の隣の藤堂さんが弁当を持って話を聞きにきた。

 藤堂さんは美人で頭はそこそこで料理が得意で人の話を聞くのがうまい。目元がすっきりしてて鼻の筋がすっとしてて背もすらりと高くて、家は金持ちでわたしと血がつながっていないきょうだいだ。

「ほらもう、なんでまた嘘書くのかなあ?」

 藤堂さんは、わたしが書いたノートを見ながら本当のことを言う。

「私とあんたが、いつどこできょうだいってことになるわけ? うちの親父がどこかで作ってきた子供がセイなのかよ」

 話を作るより名前を考えるのが割と面倒くさい。

 わたしの名前は樋浦清で、ひうらせい、と読むことになっている。

 なんかもう、名前考えたらそれだけで力尽きる。

 新しく高校生になって2週間めの終りぐらいで、新しいクラスのみんなは、同じ中学だったり、趣味や部活動が一緒だったり、たまたま席が近かったりという関係で、一緒に行動するグループが複数できはじめている。

 クラスの人間は28人で、完全数ということになっている。

「ええっ、ふたりってきょうだいだったんですか!」と、人の話をあまり聞いていない、隣の席の松川志展が驚く。

「いやまあ、それは夏の林間学校の、キャンプファイアのあとに言う、というか、告白するというか、わたしのほうが言うわけなんだよな、『これからもよろしくね、おねえちゃん』って…」

 突然頭が痛くなって、気がつくと藤堂さんが握りこぶしを押さえて言う。

「痛いじゃないかこの野郎!」

「そ、それはわたしのセリフで、藤堂さんは人の話を聞くのがうまい設定だよね?」

「なんだよその設定って。そりゃ、あんたは話を作るのがうまいさ。でも実在キャラを加工して話を作るのはやめてくれないかな」

「なんだ、ふたりがきょうだいだって嘘なんですか」と、どういうわけか松川ががっかりする。

「清は小説を書いて、一芸入試でこの高校に入れたんだよな」

 その言い方はひどい。ちゃんと正規の試験も受けてて、今までの記憶では藤堂さんより学校の勉強ができなかった、ってことはないはずだが。だいたいそもそも藤堂さんは、中学校で女子大まであるお嬢様学校に入っていながら、この公立の、バカでは入れないが浪人しないと名のある大学には入れないので有名な高校になぜ来たのか。

 あっ、そのあたりについては別の話(これは創作じゃなくて本当のこと)になるので、今はやめておこう。

「へえ、昔から小説とか書いてたんですか」

「いわゆるラノベって奴だったな。漆黒の騎士とか虹の戦士とか、そんな感じの」

「それは小学校の時のことだし。そんなことより、藤堂さんのお弁当の卵焼き、おいしいからひとかけもらって…半分松川さんにあげるよ」

「ああ本当だ。これはいい出汁を使ってますね。それはそれとして、樋浦さんの小説、読んでみたいです」

 口をもぐもぐさせながら松川は言う。

「いずれバレるだろうから自分から言いますけど、実は自分、声優やってるんです。樋浦さんの小説がアニメ化になったら、原作者権限で出演させてもらえないかなあ」

 わたしは3時間目の休み時間に学食で手に入れたカレーパンの2個めを食べるのをちょっとやめた。

「ものを食べるシーンってのは、こう、手に持ったボールペンを使うといいんですよ…こう…いやもうこれは実にうまい卵焼きだなあ」

 ここで読んでる人は、この松川という人物は、本当に卵焼きを食べているのか疑問に思いますよね。

 つまり、書く側としても、その卵焼きの形や色、味をちゃんと描写すると存在感が増すはずなのに、ちゃんと書いていないので混乱してしまう。

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