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旅の途中で魔王を拾ったんだが  作者: 日向 葵
第一章
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交わる刃


 もはや大蛇の尾は赤熱の刃と化していた。

 赤い半円の軌跡を描き巨体から繰り出されたとは思えぬ恐るべき速度も持って襲いかかる


 だが、この迎撃は想定内だ。


 この大蛇の帯びている魔賭威は通常のそれで無いことは分かる。


 そして強敵であるがゆえに大蛇の動きを予測できた。先手を打ったのは標的を少女でなく私に絞らせる為と攻撃手段を限定させる為だ。


 私が奴の懐に飛び込めば、大蛇の選択は2つに絞られる


 ひとつめは毒牙を持っての咬擊

 強力な咬筋力に加え鋭く尖る2本の大牙。この種の魔物が扱う毒は即効性であるものが多い。毒液が皮膚に触れただけでも内部に浸透し呼吸はおろか全身の自由を奪う神経毒であろう

 だが、これは弱点である頭部・鱗に覆われていない口内に被弾するリスクが高くこれを考えればこの手段は取らないはず


 ふたつめは刃尾による反擊

 もはや武器として発達した強大な刃尾はリーチが長く敵側の攻撃も通りにくい。人間相手なら当たれば一撃でたやすく身を裂き骨を砕くだろう

 観察すれば刃状の尾には僅かな欠損や大小の傷跡が見られた。この大蛇は尾による攻撃を好んで多用し、それが原因で付いた傷であることは明白


 以上の事から推測すると大蛇が取る行動は後者であろうことは容易に想定出来る

 

 巨大な刃尾が風を裂いて迫る様は、まるで断頭台で振るわれる巨斧を連想させる程の迫力がある


 これに対し身を翻して剣を抜き逆手に持って盾のように構えた。もう片方の手は衝撃に備え剣の腹に添える。


 鞘から抜き放たれた片刃の刀剣は切っ先が滑らかな流線型を模し背は真っ直ぐに伸び幅広の鍔には美しい装飾が施されている


 キラキラと眩い閃光を放ち角度が変わる度に淡い光を散らす刀剣は白銀の十字架を連想させる


 黒髪の男は大蛇の尾に対し刃で受けるのではなく剣の腹で流す


 剛と柔。相間見える両雄の剣刃


 轟く爆発音。金属と金属が激突した時のような甲高くも鈍く重い轟音が森林一帯に鳴り響く


 擊突の際に生じた余波が砂埃を上げ葉を散らし枝を吹き飛ばした


 木の葉が風に舞うようにくるくると宙に打ち上げられる黒髪の男


 まるで舞踊。美しい放物線を描いてそこは既に大蛇の頭上。放たれた矢となった勢いそのままに大蛇の脳天を貫いた。

 

 一撃決殺


 地に伏す深緑の略奪者


 大蛇の嘶きが断末魔の悲鳴となって森林にこだまする。


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