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旅の途中で魔王を拾ったんだが  作者: 日向 葵
第一章
5/7

失った黒


 少女は掌を黒髪の男に向け聞き取れないであろう程の声で呟く


「デスリライト」


 すると迸る黒い閃光。(くう)を裂き大地を焼き一切の光を拒絶する暗き雷が男のその身を魂を焦がす……


 はずだった。


 しかし何も起こらない


 「バ、バカなァーー!!」


 何故だ。何故、黒擊が召喚されぬ


 わなわなと全身が小刻みに震える


 一体全体、我はどうしたというのだ。


 「おい、貴様。名をレインと言ったな。貴様は何者だ?我に何をしたのだ!」


 黒髪の男は困惑の表情を一瞬浮かべるがすぐに笑み取り戻し口を開く


 「私はただの流浪人だ。先日立ち寄った村で倒れてる君を見つけて今、ナワティーニという街へ送り届けようとしていた所だ。私が君を見つけてからだがもう丸1日は眠りについていたんで心配したよ。」


 我が倒れていた?魔王である我が?

 ますます訳が解らぬ


 眼の前の男を睨み付け舌を打つ少女


 だが男の言うことが真実なら少なくとも、こやつは敵では無いようだ

 敵ならば正々堂々寝込みを襲い既に我を亡きものにしていようからな


 まあ仮にそうなったとしても、全能なる我なら返り討ちにしていようが


 しかし現状置かれているこの状況は打破せねばなるまい


 「おい!貴様!!此所は何処だ?街へ行くと行ったがそんなものはどうでもよい。我の魔王城は何処だ?」


 このような森一刻も早く脱せねば

 我が魔王城に行けばこの不可解な事態に陥っている謎も解ける糸口が見つかるやもしれぬ


 それを聞いた黒髪の男はまるで駄々をこねる子供を諭すような柔らかい口調で


 「少し落ち着いて。それともう少し声をおとしてもらえると助かる。今までは幸い不幸に遭遇していないが、この森は危険が少なくは無い方なんでね。」


 手を両に広げ、辺りを観てくれと言わんばかりだ


 ふん。我の辞書に危険という言葉は存在せぬわ

 それよりも腹立たしいのは明らかに我を軽んじるその態度、我に指図するという愚行


 こやつは手足を引きちぎり魔蟲を寄生させて、生きながらにハラワタから徐々に喰い破られる苦痛と恐怖を絶命するまで延々与えてやr


 「下がって」

 

 黒髪の男は我に背を向け片腕を付き出す


 ふん、遂に我の思考を妨げるまでに至ったか


 黒髪の男の視線の先を追うとズルズルと地面を這う音と小枝をバキバキと砕き折る音が重なり次第に大きな影が近付いて来るのが分かる


 眼前の茂みから現れたのは全長十数メートルは悠に越えていよう大蛇が鎖鎌みたく頭を持ち上げて品定めでもするかのように卑しく先の割れた舌を出し2人を交互に眺める


 大木と見紛うばかりの太い体躯に生半可な刃では傷一つ付きそうにない暗みがかった緑の厚みある鱗、見るものが嫌悪を抱くような赤と黄色の斑文。

 鋭い牙からは毒液が垂れ開けば牛一頭は容易に丸呑み出来よう巨大な口。

 朱色の大きな眼は聞かずともその獰猛さを語る


 深緑の略奪者 スワロウサーペイン


 赤い巨大な刃状の尾を振り回し我と男を威嚇する

 一度振るえば木々をなぎ倒すその破壊力は言わずもがなだ


 人間を餌と認識し、揚々と迫るその意気や良し


 が、魔王である我に対しても敵意を示し牙を向けよるか


 我の魔賭威(まとい)が弱まっているのか、こやつがそれすら認識出来ぬ無能なのか…


 魔賭威とは一部の強力な魔物・魔獣・魔族が宿す気のようなものでそこに存在するだけで強さを誇示し弱者を威圧する効力がある


 10年前魔王が健在だったころ、他の魔のモノ達はその強大で凶悪な魔賭威により魔王の存在を認識し畏怖の念を抱き、行動をある程度抑制されていた

 

 男が道中に魔物や魔獣に遭遇しないと言ったが、こやつが原因か


 力も使えぬ。魔賭威も通じぬ今、この阿呆をどう滅してくれようか。などと考えていると


 黒髪の男は半歩脚を広げ重心を少し落とし腰に携えた剣の柄を握る

 そして我に恐るべき言葉を投げ掛けた


 「安心していい、君は私が護る。」


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