第69話
――――朝日基地
採掘場の作業員たちが連行されて1週間が経ち、朝日基地にシリアナ帝国の使節団が訪れた。門から応接室まで出来るだけ現代兵器を見せないように通したのには苦労した。もし見られてあれはなんだ?これはなんだ?って聞かれては交渉場所の応接室に着くまでに時間が掛かってしまう。そんなこんなで何事もなく目的地に着いたが使節団たちは少々険悪だった。何故なら目の前に出された飲み物がどす黒かったからだ。我々には見慣れたコーヒー、使節団の1人が勇気を振り絞り飲んでみたがすごく苦かったらしく顔がさらに険しくなった。コーヒーを持ってきた係が苦ければ砂糖をどうぞって言った時使節団は少し驚いたような顔もした。そうこうしているうちに朝日基地司令の黒川志乃陸軍少将と外交官の小林昌幸が入ってきた。ちなみに彼、小林昌幸は俺の秘書をしていた小林昌弘の双子の弟である。
黒川と小林が席に着いた。その時、「女だ」とぼそりとシリアナ帝国側から聞こえた。
そんなことも気にせず黒川は話し始めた。
「このたびは遠路はるばるお越しくださいまして、ありがとうございます」
その言葉に彼らは、
「そんなことより、我々の要求を聞いてもらう!」
「早速ですか・・・」
彼らの要求、それは
・シリアナ帝国の領土からの撤退
・シリアナ帝国領土に勝手に穴をあけた賠償金の請求
・賠償金が支払うことが出来ないのであれば二ホン政府及び軍の解体、属領になること
である。黒川も小林も1つ目と2つ目に関してはまぁ良しとしてもよかった。他にも考えがあったからである。だが3つ目は何が何でも呑み込めなかった。
「すみません。賠償金とはどれくらいですか?」
「4億コルニだ」
「4億コルニって日本円に換算するといくらになるんだ?」
小林と黒川は悩んだ・・・。まともに外交をしていないがため、1円=?コルニ状態なのだ。
黒川と小林が話し合っているときシリアナ側が答えた。
「我が国の庶民の1回の給料は平均40コルニで、そしてパン1つが2コルニだ」
「ありがとうございます。ってことはえーーと・・・どれくらいになるんだ?・・・・「4000億だ」・・・え!?」
小林がその声に顔を上げると入口にある人物が立っていた。
「か、閣下!!?何故ここに!?」
閣下、つまり俺の事だ。
「いやな、シリアナ帝国とやらの連中がどんな奴か見てみたいから飛んできたんだ。使節の皆さん、お初にお目にかかります。私は大日本帝国永久総統の山上弘一と申します」
シリアナ使節団は口を開けてポカンとしていた。何故なら1国の王が突然目の前に現れたからである。
「しかし、4000億かぁ・・・もう少し安くならないのかなぁ?払えない場合は従属か?それはそれで嫌やなぁ」
「・・・・・・・・・」
シリアナ使節団は色々なことがありすぎて言葉を失っていた。
「捕虜となった採掘作業員、100人を返してもらうのに4000億は安いもんだろうけど、今の日本に払う気は一切無いな」
「何!?じゃ、捕虜はどうなっても良いと申すのか!?」
「ああ、いいよ?まぁお前らに殺すなんて無理だろうけどな」
「話にならん!!帰らせていただく!」
「どうぞ、それとおたくの国家元首に大日本帝国はシリアナ帝国に宣戦を布告すると言っておけよ~」
その問いに彼らは何も答えずに出て行った。
使節団が部屋から出て行き、扉が閉まったと同時に小林が怒鳴ってきた。
「閣下!なんてことをしてくれたんですか!?よりにもよって捕虜なんてどうでもいい事言って!!」
「安心しろ小林。捕虜は秘密裏に救出済みだ。さっき連絡あった」
「そうだったんですか?では・・・?」
「最初っから金なんてびた一文払うつもり無かったんだ、戦力でねじ伏せるつもりでいたし、明日には1個空母機動艦隊と秋津島の陸軍中部方面隊から第10師団がこの基地に着く、明後日には攻撃を開始する。距離的にあいつらが本国に宣戦布告を通達するのは明日以降、遅くても明後日になると思うから」
「わかりました」
「黒川少将、悪いが今回の戦の指揮は俺が取る、よいな?」
「はっ!」
2日後、大日本帝国とシリアナ帝国は戦争状態に入った。




