第16話
――――ポーツマス港日本軍司令部作戦室
ロンドン攻略を始めてから五日が経とうとしていた。
「ん~?ちょっとロンドンの攻略遅くないかぁ?」
仮眠室から出てきた俺は寝ぼけた顔で言う・・・
「総司令、それが・・・」
「どうした?前線から報告でもあったのか、俺が寝ている間に・・・?」
「いや、無いんですが。何回か無線で呼びかけているのですが、前線の交信がすごすぎて取り扱ってもらえないというか・・・」
「なるほどそういうことか・・・。よしわかった。ワイト島から偵察機を3機ほど上げ、全てロンドンに向かわせろ。カメラも忘れずにな。」
「了解しました。」
そういうと兵は通信所に向かった。この司令部には士官がいない、俺は含まれていないから。全員前線にいるためである。そのためこの司令部は下士官と兵しかいない。この司令部で一番階級が高いのは高野陸軍曹長である。
「曹長、ほかの都市の攻略隊からの連絡は?」
「まだありません。」
その時だった、
「失礼します。バーミンガム攻略隊からの報告です。」
兵が報告書をもって作戦室に入ってきた。
「やけに遅かったな。とりあえず報告は?」
「はい、読み上げます。我が軍がバーミンガムに到着したときバーミンガムに軍が無かったと。それから・・・」
「何!?軍が無い!?どういうことだ?」
「曹長落ち着きなさい。報告書を最後まで聞こうじゃないか。」
「失礼しました、総司令」
「では、続きを聞こうか。」
「はい・・・。それからこの報告書によりますと現地住民に聞いたようでバーミンガムだけではなくその先のマンチェスターやリバプールの部隊もロンドンに向かったようで、我々はどうすればいいのかという報告です」
「なるほどそういうわけか・・・」
「総司令・・」
「曹長、これでようやくわかったよ。何故ロンドン攻略がこんなに長く続いているのか、そして何故連絡がつかないのか。ロンドン攻略隊はどうやらとんでもない大軍を相手にしているみたいだ。」
「大軍ですか・・・」
「とりあえずバーミンガムに向かった、第5師団にはそのまま北上して残りの都市を占領しておいてと言っておいてくれないかな?」
「総司令、ロンドンに向かわせないのですか?砲兵隊は来てませんから援護は難しいですよ?」
「大丈夫だ曹長。俺にも考えがある。とりあえず第5師団にはそう伝えておいてくれ。」
「了解しました」
そういうと通信兵は出て行った。そして通信兵に続くように俺も部屋から出て行った。
「曹長、総司令はどうするんですかねぇ?」
部屋に残った兵が言う。
「わからん。だが総司令にも何か打つ手があるんだろうな・・・」
この時曹長や兵は知らなかった。ロンドン沖合に日本の艦隊が来ているということに・・・




