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ボケとツッコミの社会問題会議

ボケとツッコミの社会問題会議 ・公共事業編

 とある公園。木々が豊富な場所で、アスレチックといった雰囲気が強い。しかし、そこに設置されている遊具の類の数々からは、なにかしらチグハグな印象を受ける。例えば、わずか一メートルほどの高さしかない陸橋。非常に渡り難く、何のためにあるのか分からない。丸太が数本、地面から出てあるだけの遊具。「踏め」という意図なのは分からないでもないが、簡単過ぎて、本当に小さな子共でしか楽しめそうにない。かと思えば、大人でもクリアするのが難しそうに思えるうんていや木柱(恐らく、登るためのもの)もある。しかも木柱は、もし落ちてしまったら、大怪我をしてしまいそうなくらいに高い。

 その他、単なる木の塀にしか見えないものや、筒状の何か、砂場もどき等など、どう表現して良いのか分からない上に、どう遊べば良いのかも分からない遊具がそこにはたくさんあった。

 「いや、何なんだ、ここは?」

 そう呟いたのは火田修平。彼はボケもツッコミもするが、主に解説役で、やや過激な論調が目立つ。それに、久谷かえでが淡々と答える。

 「見ての通りの公園ですね」

 彼女はボケ。

 「いや、それは分かっているけどさ」

 その火田の言葉を受けると、久谷は続けた。

 「裏手にあるゴミ焼却施設の建設時に造られたものです。木が多いのは、空気を浄化するというイメージからかもしれません」

 彼らがいたのは、公園内にある何らかの舞台のようになっている場所だった。ペンキで茶色に塗られてはいるが、恐らくはセメント製で、温かみはまるでない。硬いので、運動をするのにも不向きだ。

 「これ、舞台よね? 劇とか、音楽の演奏とかやるの?」

 そう尋ねたのは長谷川沙世。彼女はツッコミと質問役。ただし、時折、天然ボケもするけども。今度も久谷がそれに返す。

 「もしかしたら、やった事があるのかもしれませんが、少なくともわたしは知りません」

 それを聞くと村上アキが言った。

 「正直、この公園は手抜きに思えるのだけど……。子共とか、遊んでいるのかなぁ?」

 彼はボケ。ただし、解説役になりがち。久谷が返す。

 「実は遊んでいる子共はそれなりにいます。というか、その昔、わたしも遊んでいました。恐るべきは、子共ですね。こんな施設でも、楽しめちゃうのですから。もっとも、

 “ここ、何なんだろう?”

 って、当時から少しは思っていましたが」

 それを聞くと、卜部サチが言った。

 「いや、ま、それはいいんだけどさ。どうして、こんな場所に今日は集まっているのよ。意図は何?」

 彼女はボケ。それを半ば無視するように立石望が言う。立石はボケだけど、責任感の強さからツッコミになりがち。で、一応、議長です。

 「あと一人、確か、ソゲキが来ていたはずよね? あいつは、どうしたの?」

 それに卜部が抗議するように言う。

 「いや、あたしの質問に答えてよ」

 「うるさいわね。あんた以外は、全員、分かっているわよ。沙世でさえも」

 「なんで、わたしの名前が出るのよ」と、それに沙世。それを無視して、立石はまた言った。

 「で、ソゲキは何処に行ったの?

 あいつ、絶対に遠足で迷子になるタイプよね」

 そこに遠くから声が聞こえて来た。

 「みなさーん、けっこー楽しいですよぉ!」

 見ると、謎の丸太のアスレチックに昇ってソゲキがはしゃいでいた。火田が言う。

 「ソゲキのやつ、あの意味不明の遊具で楽しんでやがるぞ? 流石だとしか言いようがないな」

 沙世が続ける。

 「しかも、いい歳なのに」

 立石は軽くため息をつくと、「まぁ、いいわ。あいつは、スルーでいきましょう」とそう言ってから、久谷を見た。そこで卜部が再度言う。

 「だから、あたしの質問に答えてよってば。どうして今日は、こんな場所に集まっているの? 意図は?」

 立石は面倒臭そうにしながら、それにこう応えた。

 「大丈夫よ。これを聞けば、あなただって直ぐに分かるでしょうよ、流石に。久谷、タイトルコールをお願い」

 久谷は返す。

 「合点承知之助!」

 「変なキャラ入れて来たわね」と、それに沙世がツッコミを。久谷は続ける。

 「道路、空港、学校、港、橋に堤防、公園、ダム。電車に新幹線にリニアモーターカー!

 不況になったら、取り敢えず、国が金を使ってなんかをやれば景気を下支えできる。確実だけど、一時的な効果しかない場合も多い上に借金をしてやるものだから、財政はどんどん危機的状況に陥っていく。本当に、こんな安易な手段を執り続けていいのか?

 一度手を出したら、なかなかやめる事が出来ない禁断の果実。そう! 今回のテーマは、“公共事業”です!」

 久谷のタイトルコールが終わると、立石は卜部をみやった。

 「ほれ、これで流石に、あんたも分かったでしょう?」

 そして、そう問いかける。

 「いや、分からないけど」

 と、不思議そうな顔をして卜部。そこに、

 「楽しいですよぉ」

 というソゲキの声が。

 「あんたも負けてないわね。あれに」

 と、そのソゲキの声を聞いて立石は言う。そして、続けて、「沙世、説明してあげて」と彼女に対応を丸投げした。

 「なんで、わたしが?」と沙世。

 「あんたから、説明を受けることによって卜部は大いに屈辱を受けるからよ」

 「なんだかな……。まぁいいけど」

 それから沙世は、周囲を見渡してからこう言う。

 「卜部さんも分かっているでしょう? この公園がかなり酷いって。早い話が、手抜きしているわよね」

 卜部はそれに頷く。

 「分かるけど」

 「で、今回のテーマは公共事業。公共事業っていったら、無駄な事をやっているので有名。それで、無駄な公共事業の典型例としてこの公園を議論の会場に選んだのよ、多分、久谷さんはね」

 沙世が説明を終えると、遠くから声が響いて来た。

 「無駄ってことはないと思いますよぉ。楽しいですぅ」

 ソゲキの声だ。

 「あいつ、あんな所からよく聞こえてたわね、沙世の声」

 と、立石。

 「まぁ、無駄は言い過ぎかもしれませんが、それでも手抜きな公共事業ではある訳ですよ、ここは」

 (因みに、実在します。この公園)

 火田がそれに続ける。

 「確かに。ここがもし民間から依頼を受けて建設された公園だったら、訴訟もんだな。公共事業だからこそだ、こんなもん」

 それを受けると、卜部が静かに言った。

 「どうやら、あなた達は、あたしの事を甘く見ているようね」

 「なんだ、なんだ」と沙世。

 「公共事業って何よ! そもそもあたしはそっから分からないのよ!」

 「なにぃ!?」

 これは立石。

 「いや、流石に、イメージは分かるわよ。とにかく、国がなんか建てたりするのでしょう?」

 アキがそれを聞いて言う。

 「まぁ、それくらい分かってれば、良いのじゃない?」

 立石が続ける。

 「いいのかしらねぇ?」

 呆れた声。その声を受けて、沙世が言った。

 「そんな事言って、立石だって、卜部さんと同じようなもんなんじゃないの? 公共事業の認識」

 「失礼ね。卜部よりはマシよ、卜部よりは!」

 その流れを受けて、アキが言った。

 「まぁ、とにかく、公共事業ってのは何なのか?って所から、根本的に説明しておく必要があるみたいだね」

 「だな」と、それに火田。アキが説明を始める。

 「公共事業っていうのは、道路や港、空港や電車やダムといった、民間ではなかなか投資し難い分野に国が税金を使って設備投資することを言うんだよ」

 卜部が言う。

 「なんだ、あたしの認識で合ってるじゃない。国が造るんでしょ?」

 「まぁ、正確に言えば、国から依頼を受けた民間企業が造るのだけどね。でも分かっているって言うのだったら訊くけど、卜部さんはどうして国がそんな事をするのか、説明できる?」

 「知ってるわよ」と、それに卜部は返す。

 「金が稼げるからでしょう?」

 「ざっくりと来たな」と、それに火田。

 「どういうニュアンスで言っているのかが気になるが」

 「ニュアンスって?」

 と沙世が尋ねる。

 「いや、こいつの事だから、政治献金やなんかで金が稼げるって意味で言っているのかと思ってな」

 「それはそれで間違いじゃないわね……」

 と、言ったのは立石。アキが話を元に戻すようにこう言う。

 「確かに間違いじゃないけど、ここではまだちょっと早いよ。当然、本来の公共事業の目的じゃないからそれは。

 とにかく、補足しよう。“適切”な公共事業を行えば、社会全体が利益を得られるんだ。例えば、道路を造ったとすれば、そこを自動車が走るようになり、物流量が増え、様々な商品の流通が加速する。

 経済ってのは“通貨の循環”が増える事。そして、そうなれば、自動車を含めて商品が増えることになる訳だから、当然、それぞれで通貨の循環量が増える。早い話が経済成長するって事だね。

 ところが道路の建設なんて、普通、民間はどこもやらない。費用がかかり過ぎるし、利益を得る手段もないから。

 それで、国が代わりに投資を行うってのが、つまりは公共事業だよ」

 そのアキの説明を聞き終えると、卜部が疑問を口にした。

 「でも、民間が行って利益が出ないなら、国が行っても利益なんか出ないのじゃない?」

 火田がそれに答える。

 「いいや。確りと長期的な経済効果を伴う公共事業なら国の利益は増える。ま、経済成長すれば、税収が上がるからだな」

 その後で久谷が付け足した。

 「因みにこの点は非常に重要です。本来、国の借金、国債発行は認められていません。ですが、建設国債に関しては特別に認められているのです。その理由の一つには、後に税収が増えて、借金が返せるから、という考えもあるのです」

 アキが続ける。

 「逆に言うと、経済効果のない公共事業を借金をして行うのは、問題ありって事だね。ま、国はそんな公共事業を行いまくっている訳なのだけど。将来が不安……」

 その話を聞いて、沙世が疑問を言った。

 「でもさ、今、国って借金をしまくっているじゃない? 建設目的以外でも。これってどういう事なの?」

 アキが答える。

 「実は法律違反なんだよ、それ。だから毎年、赤字国債を発行する為に、特例公債法って法律を成立させているの。因みに2012年度はねじれ国会の所為で、それが中々成立しなくて、国の運営は大丈夫か? って心配されていた訳だけど、まぁ、なんとかなっちゃったね」

 「まったく知らないわ。そんな事があったんだ」と、それに笑いながら沙世が言う。

 「正直でよろしい」

 そう述べたのは立石。卜部が言った。

 「あたしも知らないわ」

 「うん。あんたは分かっていたから」

 その後で遠くから声が。

 「ボクも知りませんよぉ」

 ソゲキだ。まだ、遊具で遊んでいる。

 「無理矢理に議論に入ってこようとするなぁ!」

 と、立石が大声でツッコミを。火田が言う。

 「あいつ、いい加減、こっちに来ればいいのにな」

 「今回の、彼のネタなのかもしれませんね。取り敢えずは、放っておきましょう」と、久谷がそれに続けた。

 「とにかく、仕切り直しで」

 と、その後でアキが言って説明を始める。

 「本来、公共事業っていうのはそういったもので、だからインフラが整っていない国や地域で行えば、顕著な効果が期待できる。でも、ある程度、経済成長した日本のような国ではどれだけ効果があるかは怪しい」

 それを聞くと、沙世が疑問の声を上げた。

 「でも、それにしては、今でも公共事業をやるって声が大きいわよね? なんだっけ。国土強靭化がどうたらとか」

 それを聞くと、続けて火田が言う。

 「あぁ、特定秘密保護法案で大騒ぎしている間に、裏でこっそりと国土強靭化の法案が通っちまったな。どーなるんだか…」

 「そうなんですか?」

 「そうだよ」

 話を元に戻すようにアキが言う。

 「まぁ、取り敢えず、沙世ちゃんの疑問に答えましょうよ。

 インフラを整えて、そのインフラによって経済成長を促すっていうのが本来の公共事業。ところがどっこい、今の公共事業はその姿からは程遠いんだよ。早い話が、金のばら撒きになっているのだね。それが、その国土強靭化なんかが行われる主な理由…… だとよく言われている」

 そこで卜部が口を開いた。

 「地球温暖化とかで、自然災害対策をしなくちゃいけないのじゃくて?」

 その発言に火田が「はっ」と笑った。

 「確かに地震とか、自然災害対策とか、本当に必要な所には必要なんだろうよ。が、国がやる公共事業がどれだけ効果的にそれら対策を行うかどうか、俺は大いに疑っている。400年かけてスーパー堤防を完成させるとか、そんな馬鹿げた事を言っていた連中の言う事なんか、どうやって信用しろって言うんだよ? ぶっちゃけ、そういう大義名分を口実に使っているだけのように思える。

 それに、“財源”の問題点もあるしな。自然災害対策をやるのだったら、基本的には借金に頼っちゃいけないんだよ」

 「どうしてですか?」

 と、尋ねたのは沙世。

 「さっきの話を思い出してよ、沙世ちゃん。国が赤字国債を発行するのは、本来違法。認められているのは建設国債だけ。それは、後に経済効果で税収が増え、その借金が返せるからだよ。

 ところが、自然災害防止の為の公共事業には長期的な経済効果がない。つまり、公共事業による経済効果では借金が返せない。なら、そもそも借金に頼ってそれをやっちゃ駄目って事になるよね」

 そこで久谷が注釈を入れた。

 「ウィキペディア(2014年3月現在)に依ると、“建設物は将来も残るという理由で認められていると考えられる”となっているので、それに当て嵌めるのなら、災害対策に関しては借金をしても良い事になります。ただ、それでも借金を返せなくなるって心配は変わらない訳ですが」

 それに立石が言う。

 「でも、なんか、税収が増えた分を公共事業に充てたとかってテレビで言っていた気がするわよ?

 借金に頼ってはいないのじゃない?」

 それに火田が返す。

 「そりゃ詭弁だ。もし仮にその話が本当だったとしても、金に色はついてないよ。全体的に観て、やっぱり借金しているんだから同じ事だ。それは借金に頼っての公共事業だ」

 そこまでを聞いて卜部が言う。

 「うーん。本来の公共事業と今の公共事業が違うってのがあたしにはやっぱりよく分からないのだけど……」

 それを聞くと火田は腕組みをした。

 「そうだなぁ……。例えば、仮に港を造ったとしようか? でもって、港を造るためには企業に金を払うだろう? 当然、それは生産活動だから、しっかりGDPにも入る。国内総生産は、上昇する。更に、企業がそれで儲かれば金を使う。結果的に、通貨の循環量が増えて、景気はその分だけ回復する。この公共事業の効果はほぼ確実だ。例え無駄な公共事業でもな。ここまでは分かるか?」

 「分かるわよ。つまり、国が金を使えば、景気がそれだけ良くなるって話でしょう?」

 「ところがだ。この“港を造った”事による経済効果は、やがて失われる。そこでもしこの造った港が充分に使われ続けるのならば、それは経済効果を生むから大きな問題はない。というか、公共事業は成功したって事だ。だがしかし、この港が充分に使われなければ、維持費をくうだけでやがては廃墟になる。当然、経済効果もないから、景気はまた低迷する。公共事業は失敗って事だ」

 卜部はそれを聞いて、首を傾げる。

 「つまり、失敗する公共事業が、今の公共事業ってこと?」

 「いや、もっと酷い。失敗しても構わないから一時の経済効果… さっきの話でいくなら“港を造った”事による一時的な経済効果を得る。その為だけに行われる公共事業が、今の公共事業なんだよ。

 もちろん、全部がそうって訳じゃないが、そういう傾向があるって事だな」

 それに卜部は目を丸くした。

 「どうして、そんな事をするの?」

 「政治家、官僚、さらにそれに関わる民間企業が、それで利益を得られるからだよ。政治家が自分の親族の企業に、公共事業を発注するなんてケースもある。

 国の為なんてのはぶっちゃけ口実で、本当は私利私欲の為に、後先考えずに行動しているって感じか」

 そこでアキが頷いた。

 「うん。これが、ちょっと前に出た話だね。“政治家や官僚が、お金を稼ぐ為に公共事業をやる”っての。仮に公共事業が失敗に終わっても、本人達は責任を取らなくていい。それどころか、儲かる。だから、とても成功しそうにない馬鹿げた計画が本当に実行されてしまう。モラルハザード。まるで、喜劇だよ。いや、国民にとっては悲劇だけど」

 そうアキが言い終えると、沙世が言った。

 「その国の借金は、いつかは私達の負担になって返ってくるのだものね」

 火田がそこに言葉を重ねた。

 「もちろん、悪影響は“借金が増える”って事だけじゃないぞ。公共事業には当たり前だが、資源が投入されているからな。早い話が、貴重な資源の無駄遣いになるんだよ」

 そう火田が言い終えたところで、「はぁ、はぁ」という乱れた吐息が聞こえて来た。驚いて火田が見ると、そこにはソゲキの姿があった。

 「おぉ! ビックリした。ソゲキか」

 そんな火田の言葉を無視して、ソゲキが言った。

 「はぁ、はぁ、なるほど。この公園にある遊具だって、はぁ、はぁ、セメントとか木とかが使われているのですもんね。

 はぁ、はぁ、はぁ。

 あ、運んだり造ったりする時のガソリン代とかも…… はぁ……か」

 久谷が冷静にこう言った。

 「もう、先ほどのネタは止めたのですか? 遊具で遊びる続けるという……」

 乱れた呼吸のまま、にこやかに笑いながら、ソゲキは答える。

 「はぁ、はぁ、はぁ。

 いやぁ、流石にあれだけで、最後まで行くのは無理でした。当初は、考えていたのですがねぇ。このままじゃ、ボクの存在が忘れ去られそうだし、止めました。

 それに、やっぱり、ここの遊具酷いですよ。てきとーに作った感が」

 立石が呆れながら言った。

 「なんだ、やっぱりあんた、無理して遊んでいたんだ」

 「いえ、最初は本気で楽しんでいました。どう遊ぶべきかを考えるのが、楽しくって。他じゃ、滅多に見れない謎の遊具の数々。ある意味では、貴重かもしれませんよ?」

 「うーん、そういう考え方もあるか」

 と、そこで沙世。

 「わたしは無駄だと思うわよ」と言ったのは立石だった。続けて言う。

 「でも、あれでしょう? 資源の無駄使いと言っても、今は不況だから、それほどの問題でもないのでしょう?」

 火田がそれにこう返した。

 「いや、そんな事もない。資源が使われれば、当然、資源価格が上がる。すると、資源を手に入れられなくなる企業なんかが出てくる。これは本来なら、民間が有効に使っていただろう資源を、国が奪って無駄に使っているって事だ。大いに大問題だよ」

 フォローするように、そこで沙世が口を開いた。

 「でも、流石に労働資源に関しては、それはないのでしょう? 公共事業のお蔭で、人が働けて失業率が下がるのだから」

 それにはアキが答えた。

 「いや、それもどうか分からないよ」

 「どうして?」

 「労働資源だって同じ理屈が成り立つからだよ、沙世ちゃん。国が労働力を奪う所為で、民間が労働力を手に入れられなくなる。民間って訳じゃないけど、既に同じ事が東日本大震災の復興現場で起きているよね? 復興の為の労働力を、公共事業に奪われてしまっている。もっとも、沙世ちゃんの言った通りに、雇用創出の効果も果たしているから、短期的には相殺されているのかもしれないけど」

 そこでソゲキが声を上げた。

 「おお! 恒例! 沙世さんの質問に村上さんが返した! もう、仲が良いなぁ」

 「これ、スルーでいくわよ」と、それに沙世。久谷がその後で言った。

 「それに絡んで、外国人労働者を積極的に受け入れようって話が出ていますね。あまり閉鎖的になるのもどうかと思いますが、問題が起こりそうで不安です」

 卜部が言った。

 「外国人労働者? それって、払った賃金が、海外に逃げちゃうのじゃない?」

 「その可能性はあるね。ただ、これはお互い様だから、日本は何も文句を言えないし、それで発展途上国が、経済発展すれば日本にもチャンスが生まれるから、一概に否定はできない。それに、外国人労働者がそのまま定住した場合は、“移民”と同じ効果、つまり、人口増加と同じ効果になって、GDPを引き上げてくれるかもしれない。

 もっとも、直ぐに元の国に帰っちゃって、かつ、海外に流れる金額が、無視できない程になったなら、公共事業の一時的な経済効果さえ怪しくなってくるけどね」

 これを言ったのはアキ。その後で、ソゲキが不意に「オリンピック」と一言。それに立石がツッコミを入れた。

 「何よ、あんたは。唐突に」

 「いや、オリンピック関連への公共投資は流石に良い経済効果なんじゃないのかな?って思いまして。資源の無駄使いじゃないですよね?」

 「甘いです」

 と、そう言ったのは久谷だった。

 「一回目の東京オリンピックの後、その反動で大きな不況が起こったとも言われています。今回だって、そうなる可能性は大きい。オリンピックの後に、不景気になるかも。わたしは非常に心配しています」

 その久谷の言葉に、立石が頭を抱えた。

 「なんか話を聞いていると、どんどん憂鬱になって来るわね。どうして、公共事業なんてこんなに行われれているのかしら?」

 沙世がそれにこう言った。

 「立石。同じ話題を蒸し返しているわよ。政治家や官僚が儲かるからでしょう?」

 「そりゃ、分かってるけどさ。経済政策ったら他にも色々と言われているじゃない。なのに、何故また公共事業なの? 以前に、大規模にやって失敗しているのに」

 久谷がそれに頷いた。

 「既に数百兆円規模で公共事業を実施して、失敗に終わっているのにその事例を無視して突っ走る姿勢は、確かに不可解ですが…… 恐らく、規制緩和などの他の経済政策には、実施に対し激しい抵抗が伴うのに対し、公共事業は反対に協力者すらいるからだと思いますよ。やり易いのですね。ま、もっとも多少は規制緩和も進んでいるようですが」

 火田がそれに応えるように言う。

 「政治家は、“本当は各団体の意見の帳尻を合わせているだけだ”ってな感じの皮肉があるが、公共事業を見ているとそれがよく分かるよな」

 アキが頷く。

 「原発を推進しようとしているのだって、多分、だからですよね」

 そのタイミングでソゲキが言った。

 「ところで、この公園の遊具、老朽化しちゃっているっぽいのも幾つかあったのですが。直さないのですかね?」

 それに立石がツッコミを入れた。

 「ちょっと、あんた。この話の流れでよくそんな事が言えたわね。そんな金、出す訳にはいかないでしょうよ」

 ところが、それに久谷がこう言うのだった。

 「いえ、立石さん。案外、良い着眼点かもしれませんよ? 今までさんざん公共事業を批判しまくってきましたが、必要のある施設への修繕は流石に認めない訳にはいきませんからね。既に長期間使い続けていますし」

 それに立石は文句を言った。

 「じゃ、なに? あんたは、ここを直す為に公共事業をやるべきだって言いたいの?」

 「いえ、そうは言っていません。公園は直さないで、遊具の撤去で対処しているケースも少なくないですし。ぶっちゃけ、維持費が捻出できないからですが。

 ただ、道路やトンネルや橋など、安全面を考慮に入れると、修繕作業を行わない訳にはいかない施設もあります」

 そこで卜部が声を上げた。

 「でも、修繕が必要だってのは、本当なの? なんか、聞いた話だと、日本橋って百年以上使っているけど平気なんでしょう?」

 それにアキが言った。

 「いや、それはケースバイケースだと思うよ? 当初にどんな工事が行われていたのかとか、どんな環境にあるとかで、耐久年数ってのは変わって来る。少数の特例に注目して、全体を評価しちゃ駄目だよ。笹子トンネル天井板落下事故なんてのも起こったし」

 火田がそれに言った。

 「その通りだが、その日本橋のケースが特例だとは限らないだろう? そこは第三者的な立場で評価できる人間に、確りと評価してもらうべきだな」

 「それは認めますけどね」

 そのやり取りを受けて、立石が口を開いた。

 「こう聞いていると、村上君や火田さんでも“切るべき公共事業”の判断が難しいものがたくさんあるようね」

 「そりゃ、そうでしょうよ。アキ君達だって全てを知っている訳じゃないんだから。専門外だろうし」

 とそれに沙世がツッコミを。

 「いやいや、これはボケたのじゃなくってさ」

 「じゃ、天然?」

 「あんたと一緒にするな」

 とそう言い終えると立石は息を吐き出すと、こう淡々と語り始めた。

 「“公共事業は全て無駄”なんていうのが、暴論だってのは、皆、認めるでしょう? 今の時代だって意味のある公共事業はたくさんある。

 という事は、これを突き詰めていくと、

 “どうやって公共事業を評価するのか?”

 って問題に行き着く訳よ」

 久谷がそれに頷いた。

 「なるほど。それは確かに重要ですね。国が作る評価機関は、正直、信用できません。と言うか、全般的に公共事業が妥当かどうかを判断する特別な専門の審査機関を設立しようなんて話は、わたしが知る限りまったく出ていないはずですが」

 火田がそれにこう言った。

 「まぁ、それは国民の声が強くならなくちゃ無理だろうよ。今、この国の連中は、大体が無関心だから、望みは薄いな」

 アキがそれに続ける。

 「例えば、公共事業で政治家や官僚が得をする仕組みを壊せば、審査機関がなくても、必要な公共事業だけが生き残るようになるとも思いますが……

 どちらにしろ、それには、国民の関心が必要になって来ますね」

 「だな」

 それを聞くと沙世が言った。

 「どうにも話を聞いていると、詰んじゃっている気がするのだけど。無駄な公共事業を抑制する為には、国民の関心が必要。ところがそれがないから無理って事でしょう? 後は国民の関心を上げるしかないけど、どうすれば良いのやら……」

 ところがその後で立石が「うーん」という声を上げたのだった。そして、こう続ける。

 「こういう時は、発想を逆転させてみるって手に限るのじゃない?」

 「と言うと?」と、尋ねたのは沙世。

 「逆に公共事業を分類して、分かり易いように必要なものを示していくのよ。そこから外れるのは、厳しい目で監視の対象にする。ほら、復興財源が全く違う地域のご当地アイドルのイベントの経費になっていたなんてケースがあったじゃない? そういうのは、これで潰せるって思うわ」

 久谷が言った。

 「完全にそれで防ぎ切れるとは思えませんが、確かに効果はありそうですね。やってみる価値はあります」

 火田がそれに頷いた。

 「なるほど。じゃ、取り敢えず、必要そうなもんから列挙してみるか。えっと、何がある?」

 すると、ソゲキが手を上げて言った。

 「復興!」

 すると火田が言う。

 「グレー!」

 沙世が困った笑顔で、こう言った。

 「いきなりですか……」

 「いや、もちろん、重要だけどな。しかし、“復興”の名を騙って行われる無駄な公共事業も多いから注意が必要なんだよ。さっきの立石が言っていたご当地アイドルのケースもそうだな。“復興の為の公共事業”って大義名分だけで、それを審査しないってのはない」

 久谷がそれに頷いた。

 「分類の仕方が、それじゃ問題あるって話ですよね。んー。ざっくり軽く分類してみると、こんな感じでしょうか?

 自然災害対策。修繕。経済政策。医療。福祉」

 アキがそれにこう言った。

 「それでも、無駄なものかどうかを分ける線引きにはならないと思うよ」

 久谷はそれを認める。

 「確かにそうですね。わたしも自分で言っていて、そう思いました」

 しかし、それから火田がこう続ける。

 「ただその分類、完全に無意味って訳でもないと思うぞ。例えば、“自然災害対策、修繕”ならば、実績ベースの判断を行い、借金には頼らない、とか、指針を出すのには、役に立つのじゃないか」

 久谷がそれに頷いた。

 「確かにそうですね。全く使用されていない公共施設は、修繕なんて行わないで、撤去するとか。自然災害対策は、“地球規模の気候変動”の影響で、今までの実績が参考にならない可能性が大きいので、難しいですが」

 アキが続ける。

 「でも、少なくとも“借金に頼らない”って点は強調できるよね。増税を行った上で、それでも国民が納得をして反対がなければ行えばいい」

 立石がそれを聞いて言った。

 「そうよね。例えば、“南海トラフ地震”が起こる可能性を本当に考慮する必要があるのかとか、増税でもしなければ、皆、真剣になって考えないと思うわよ。正直に言うと

 “東日本大震災の前は、まったく聞かなかったのに、何故、突然?”

 って疑問がわたしの中にはあるわ」

 卜部がそこで言った。

 「でも、増税したら、不景気になるのじゃないの?」

 久谷が首を横に振る。

 「いえ、増税して集めたお金を全て公共事業に使うのなら、その影響は軽微です。増税は経済にマイナスの効果ですが、公共事業は経済にプラスの効果。プラスマイナスで、ゼロになるからですね。これは“均衡予算乗数の定理”と呼ばれるものです。

 もっとも、原材料費など、海外に流れるお金もありますし、さっき出た民間から資源を奪う問題もありますので、その分でマイナスにはなりますが」

 そこで沙世が声を上げた。

 「ところで、“南海トラフ地震”が起こる可能性をがあるって政府は言っているのに、どうして原子力発電所を廃止するって方向に話が進まないのかしら?」

 立石がそれにツッコミを入れた。

 「いや、あんた。いきなり話を変えないでよ。久々に天然が出たわね。ま、面白そうな話だから続けるけど」

 その流れを受けてアキが言った。

 「そうだね。定められた原発の安全基準が妥当かどうかなんて、実際に大地震が何回も起こらないと分からない。また福島かそれ以上の酷い事になるかもしれない。

 “南海トラフ地震”が起こる可能性を本気で心配しているのなら、原発は絶対に廃止にしなくちゃいけないはずだよ」

 卜部がそれに文句を言った。

 「でも、安全基準が妥当じゃないって事も言えないのでしょう?」

 「でも、穴なら簡単に見つかるよ。例えば、地震の影響で連鎖的に富士山が噴火したらどうするの?とかね。火山岩が飛んで来る事までは、安全基準では想定していないでしょう?」

 火田がそれに頷いた。

 「つまり、“南海トラフ地震”と原発の推進を同時に行うのは、ダブルスタンダードって事だよ。ま、政治家は各団体の利権を満足させようとしているだけって考えれば、どうしてこんな事になっているのかは簡単に予想がつくがな。

 更に付け加えておくと、国防上の重大な弱点でもある原発を維持推進した状態で、国防を強化するってのも話が矛盾しているんだよ」

 そこまでを火田が言ったところで、久谷が言った。

 「はい。少しストップ。確かに、興味深い話題ではありますが、議題から逸れています。元に戻しましょう」

 それを聞いてアキが言った。

 「んー。原発っていったら、ほとんど公共事業みたいなもんだよね? でもって、これは経済政策とも結びついている。経済政策として、行うべき公共事業を判断する基準って何だろう?

 って、感じで話を転がして、元に戻してみましたが、どうでしょう?」

 すると、久谷がその流れに乗る。

 「なるほど。じゃ、それで議論をしてみましょうか。

 経済政策として有効な公共事業を判断するのも難しいですよね。既にインフラが充分に整っている日本で、何をすれば本当に有効な経済効果が得られるのかが分からない」

 そこで火田が言った。

 「それはあれだな。攻める発想じゃなくて、守る発想でいくなら、ある程度は見えてくると思うぞ」

 「と言いますと?」

 「“資源枯渇編”の時に話し合っただろう? これから先は、何より資源の枯渇に備えちゃくちゃいけない。

 って事は、資源節約の為の設備投資をやるべきだって結論になるな」

 その火田の言葉を聞いて、沙世が言った。

 「もしかして、また太陽電池ですか?」

 「そうだよ。ま、太陽電池だけじゃなくて、風力や地熱などの再生可能エネルギーも含めるべきだろうとは思うが。これらは再利用効率が高かったり、耐用年数が長かったりするから、早いうちの設備投資にも充分に意味がある」

 「何度も言っていますよね、それ」と沙世。

 「何度も言う事に意味があるんだよ。一度だけじゃ、伝わらないだろう。“重要な事なので、何度も言いました”ってな」

 ソゲキが言った。

 「太陽電池ってやっぱりエネルギーの節約になるからですか?」

 「いや、それだけじゃない。再生可能エネルギーの多くは維持費がかからないから、労働資源だって節約できる」

 それに文句を言うように、卜部が言った。

 「でも、経済的には不利になるのでしょう?」

 「ならないよ。資源の枯渇は、エネルギー資源でも、労働資源でも、同じ様にコストの上昇を起こす。つまり、物価が高くなる。その状態になっても、再生可能エネルギーの多くはほぼ変わらないコストで発電できるから、その分、利益が良くなるんだ。つまり、物価が比較的安い内に造っておけば、特に物価変動を考慮に入れた場合、長期的な経済効果が期待できるんだな。しかも、エネルギー自給率が上がって、今まで海外に流れていた金が国内で回るようになりもする。

 てか、この説明も、何度もやっている気がするが」

 卜部はそれにこう返す。

 「重要な事なので、何度でも質問しました」

 「あんたは、単に忘れているだけでしょう」と、それに立石がツッコミを。そのやり取りの後で、ソゲキが疑問の声を上げた。

 「因みに、原発はどうなんですかね?」

 「ないな。核廃棄に労働力が大量に必要になる。更に、原発の原料のウランは枯渇する資源である上に、発展途上国が原発をたくさん造っているから、そのうち高騰する。そうなったら、自国でウランを調達できる中国や北朝鮮にとって有利になるぞ。もちろん、日本は不利になる。何しろ、北朝鮮は世界でも有数の潜在的なウラン資源国だ。ウラン価格が高騰したら、莫大な利益が北朝鮮に転がり込む可能性が大きくなるんだよ。

 今のところ、核の再利用だって高くつくし何より危険過ぎるから、採用する訳にはいかないしな。“地震の巣”の日本で、核の再利用を行うのは、狂気の沙汰だ。

 正直、俺には原発推進している連中が理解できないんだよ。あいつら、本当は中国を支援したいのかもしれないぞ。さっきも言ったが、原発は国防上も大きな弱点になるしな」

 それに立石が言う。

 「うわ! 火田さん。過激な発言は慎んでよ。性質の悪そうな人達が多そうなんだから、そこら辺は」

 困ったように笑いながら、誤魔化すためにかアキがそれに続けた。

 「同じ様に、資源枯渇編の話題と被りますが、ネットを活用しての物流の効率化も資源の節約になりますよ」

 久谷が頷いた。

 「その辺りの話題は、完全に資源枯渇編と被るので、省略しますか。とにかく、結論を言っておくと、資源枯渇対策の公共事業はアリって事ですよね」

 火田がそれに頷いた。

 「ああ、その通りだ」

 その後で立石が言った。

 「後、さっき出たのは、医療と福祉だっけ? 何か意見ある人いる?」

 それに久谷が答える。

 「その辺りの話題は、高齢社会編と被りそうですね。“参考にしてください”って事で良いのじゃないですか?

 ……と言うか、分類してそれぞれに公共事業の評価基準を設定していくって、量的に無理があるような気がしてきました。この短い時間の会議だけで、まとめるのは不可能なのじゃないですかね?」

 その久谷の言葉に、立石は頷いた。

 「実はわたしも同じ事を思っていたのよねー。そろそろ辛くなってきたし、今回はここらでお開きって事で良いのじゃない?」

 卜部が言った。

 「終わりなの? 正直、いつも以上にグダグダになった気がするわね。解決策らしきもんが、あまり出ていないじゃない」

 腕組みをしながら、アキがそれに応える。

 「やろうとしたけど、分類毎にってすると範囲が広がり過ぎて難しいのだね。何にせよ、国民が関心を持ってくれるのが一番なのだけど……」

 「そこよね」

 と、それに卜部が言う。

 「このまま無駄な公共事業を野放しにしておいたら、何が起こるの? その“怖さ”が分からないと、関心を持とうとも思わないと思うのだけど」

 火田がそれにこう返した。

 「偶には真っ当な指摘をするじゃないか、卜部。確かにその通りだな。“恐怖”って感情は人の関心を引く重要なもんだ。

 先に資源を奪って、民間企業の成長を阻害するってデメリットが出たが、それだけじゃ、あまり恐怖を実感してはもらえないだろう。それ以外にも、公共事業には、国家破綻を引き起こす可能性があるんだよ。

 労働資源やその他の資源が不足している状態になると、物価が上昇する。すると、物価が上昇した事で、貯金が減る。すると、国は借金が難しくなる。物価が上昇すると、実質、借金は減るが、この状態で国が公共事情依存になっていると、支出を抑えられなくなって、国家破綻を起こすかもしれないんだな。少なくとも、国をピンチに陥れる一要因にはなる訳だ。

 つまり、タイムリミットは、労働力不足になるまでかもしれないんだよ。そこまでに、公共事業依存から脱していないと、本当に危険だ」

 「よく分からないけど、公共事業をやっているとピンチかもしれないって事ね? 財政破綻するかもしれないと。でも、財政破綻すると何が起こるの?」

 と、それに卜部。困った顔でアキがこう答えた。

 「それは、主には物価上昇が起こるのだけど、ま、“国家破綻編”で詳しく語ったから、それを参考にして…… って、なんかさっきからこの流れが多いね」

 久谷が付け足した。

 「十数年後には、労働力不足に陥る可能性がありますから、もしかしたら、その頃が危ないかもしれません。もっとも、もっと早く危機は訪れるかもしれませんが」

 アキが言った。

 「ま、なんとか国民の皆が、関心を持ってくれることを祈ろう。精一杯、分かり易く伝える努力をしながらさ」

 立石が頷きながら最後に言った。

 「結局は、社会問題解決で一番重要なのは、それなのよね。国民の関心。とにかく、今回は、これにて終了!」

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