掌編小説/卒業式の思い出 ノート20140325
掌編小説/卒業式の思い出 ノート20140325
卒業式の直前、教室で後輩の女子生徒がきて胸にカーネーションをつけてくれた。卒業生の胸・全員に後輩がつけてくれたのだ。僕の担当は、二年の子で、名前を仮に汐音としておこう。
汐音の顔は知らないわけではなかったのだが、声をかけたということはなかった。思い出といえば、職員室にいる担任に用があって、そこで鉢合わせになったときくらいのものだった。少女漫画みたいな正面衝突。しかし残念ながら、彼女との恋愛には発展しなかったのだ。
ツメエリの学生服の胸ポケットのところに真紅の花が飾られた。セーラー服姿である彼女のうなじがみえる。可愛いと思った。
「汐音、髪、触ってもいい?」
彼女は少し驚いた様子だ。
自分でも、変なことをいってしまったと後悔した。
それで、どういうわけだか、東京にある進学先の下宿の連絡先まで教えたというわけだ。
入学式が終わると、少しばかり授業をしたら、すぐゴールデンウィークだ。僕は、夜行列車に跳び乗って、帰郷した。あらかじめ到着時間も電話で知らせておいた。
駅では彼女が待っていた。
「あの、汐音、キスしていいかなあ?」
「えっ?」
僕の顔をみていた彼女は、顔を真っ赤にして、それから、コクンとうなずいた。
……
なんて素敵な思い出があると嬉しいなあ。嘘は小説のはじまり。(ウニ)
END




