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もう一度妻をおとすレシピ 第4冊  作者: 奄美剣星
Ⅳ 資料
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資料(読書)/阿川弘之 『南蛮阿呆列車』 ノート20160520

読書/阿川弘之 『南蛮阿呆列車』 ノート20160520


 著者・阿川弘之は旧海軍大尉だった人で、後述の旅に同行する北杜夫や遠藤周作をして、瞬間湯沸かし器と呼ばれるほどに短気な一面もある一方で嫌われもしない。言論界を左翼が牛耳って文学のみならず歴史学諸分野までクチバシを入れて窮屈にしていた時代に、「国を思ってなにが悪い」といってはばからない、筋が通った、爽快なところのある作家だった。

 さて物語の内容だ。ミステリならば動機というものが必定だ。作品の冒頭はこんなくだりになる。

内田百閒うちだひゃっけん先生が最初の阿呆列車に手を染められてから四半世紀の時が経ち、亡くなられてからすでに五年になるが、あの衣鉢を継ごうという人が誰もいない。/年来私はひそかに心を動かしていたが、我流汽車物語は贋作でないまでも、少し不遜な気がして、なかなか実行に移せなかった。/しかし、実を言うと、阿呆列車には当方浅からぬ御縁がある。汽車を仲立ちにして、時々百鬼園先生(※内田百閒の随筆筆名)の生霊死霊みたいなものが私の前に出現する。……」

 物語をなすには述者たる作家が一人旅をやるよりも、聞き手がいたほうがだんぜん面白くなる。登場人物の紹介は、文末で解説を行う作家・北杜夫のものを引用してみたい。

「かつて内田百閒氏は『阿呆列車』シリーズを書かれたが、必ずヒマラヤ山系(※作家・平山三郎)というニックネームをつけた編集者と同行の汽車旅行であった。そのやりとりがまた独自のものであった。/阿川弘之氏が気仁年、精力的に世界中をまたにかけて汽車に乗り、『小説新潮』に連載してものが本書で、いわば現代版『阿呆列車』といってよい。すべての乗り物狂の阿川さんにして初めて成しうるわざで、もちろんこんなことは他人の成しうるわざではない。彼もまたヒマラヤ山系ならぬ編集者や作家とよく旅行をしている。一、二の編集者の一人は幽霊と呼ばれ、遠藤周作、平岩弓枝、開高健などの作家はそれぞれ弧狸庵とか呼ばれるが、その中には、この私も入っていて、まんぼうと名づけられている。……」

 遠藤周作は熱心なクリスチャンで『沈黙』が代表作だ。芥川賞作家ではないが、晩年には芥川賞選考委員になり、各国の文学賞のほか、台湾・韓国の大学から名誉博士や名誉教授号をもらっている。また舞台演劇にも関わって戯曲も書いている。

 北杜夫は医師家系斉藤家に生まれた。父親は詩人でもある茂吉、兄は随筆家でもある茂太。当人の作品『夜と霧の隅で』が芥川賞に受賞した直後、水産庁漁業調査船照洋丸の船医となって、太平洋・インド洋を横断し欧州に至る航海に参加する。それが『どくとるマンボウ航海記』で知られるエッセイだ。また精神科医なのに躁鬱病をわずらっており、『南蛮阿呆列車』作中で、鬱状態となって阿川を困らせているくだりがあったかと思う。

 本作品が刊行された1977年というと、戦後の一時期禁じられていた一般邦人の外国渡航が許可されて少し経ち、ポツポツと羽田空港からフライトしてゆくわけだが、ハワイ旅行というのが定番だったように感じる。大きな雑誌出版社の後押しもあって作者は列車をコンテンツとした世界旅行にでかけることになる。当時の文壇麒麟児二人をお供にしての豪華列車となった。――内田先生の国内汽車旅行のなんというつつましさか。

 さて、具体的に、文士たちがどこへいったかといえば、それは下に記した目次を参照して頂きたい。

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目次

欧州畸人特急9-30頁

マダガスカル阿呆列車31-58頁

キリマンジャロの獅子59-90頁

アガワ渓谷紅葉列車(※カナダ)91-116頁

カナダ横断トロトロ特急117-150頁

快特莒光號(※台湾)151-174頁

元祖スコットランド阿呆列車175-196頁

地中海飛び石特急197-236頁

降誕祭フロリダ阿呆列車237-261頁

解説・北杜夫:262-272頁

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引用参考文献

阿川弘之『南蛮阿呆列車』新潮社1977年

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ノート20160520

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