資料/妖精分類・試案009 ゴブリン・家つき種 ノート20160715
妖精分類・試案009 ゴブリン・家つき種
第2にブラウニーの説明をしたい。
前回は野生種のゴブリンについて述べたので、今回は家つき種について述べたい。
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スコットランドBROWNIEもしくはリトル・マンと呼ばれる存在は、家つき妖精で、善人で助けがいがあると判断すると、家の居心地のよい場所に移り住んでくる。暖かくして、猫がいなければだが。黒い瞳に、尖った耳。長い指を持つ。フェルトの帽子をかぶり、茶色か青いエロまたは緑色の衣服を着ている。そして牛乳、はちみつ、エールビール、ケーキなどの供え物のお返しとして、悪霊を寄せ付けないようにしたり、食べ物や薪を調達してくれたりする。ときには、ちぐはぐな靴をつくってくれる。
良い意味では少し不器用なイングランド北部のドビーを別にすれば、彼らの一族には高い知性がある。変身能力もある。英国ではホブ、デンマークではディース、ロシアではドモヴォー、北アフリカではユンボ―、中国ではカオ・ブム・ファイ(高文飛?)という。
以下はブラウニーのローカル・バージョンだ。
コンウォールではBROWN MENという。痩せて胸が長い赤毛。ホドミン・ムーアの自然を守り。癒すことに専念する。茶色い服をまとっているため。自然の中では見分けがつかない。人間の目には触れないようにしている。
イングランドHOBGOBLINSは、浅黒い肌をした暖炉や料理用レンジの傍など、暖かく手居心地の良いところを好む3~6㎝炉の精霊である。裸かで茶色のボロ着をまとう。大抵は友好的で人間にも慣れ、農作業を好む。ケチな人間からは好んで物を盗む反面宝物を守る。しばしばブラッグと呼ばれる一方で、ホブ、ホブマン、ホブ・ゴブ、トム・ティット、ロビン・ラウンド・キャップ、ホブ・スラッシュ、ゴブリンの馬丁という言い回しがなされ、あるいはHODGEPOCHERとも呼ばれる。TOM TIT TOTはホブゴブリンの一族・ドイツのルンベルシュティルツヒェンキのイングランド版だ。
イングランド北部SILKIESは、たいていは女のブラウニーで、白色か灰色の絹の衣服をまとっていて家事を好む。だが、腹を立てたり悪戯心がでたりすると騒霊化して怠情な使用人を脅かす。
マン島のTIGHE FAERIES。夜の間に家事をしてくれる。しっかり暖炉の手入れをし、動物たちの世話をしてくれる。しかし猫がいる家には棲めない。大きな音を嫌う。高い報酬を嫌い、食べ物と飲み物以外は受け取らない。
ブラウンマン、ホブゴブリンのようだが、身体的・能力的に異なり支族とでもいうべき存在をあげてみた。
キルムーリス支族。
スコットランドKILMOULISは口がないので鼻で食事をするブラウニーの一族だ。オーブン、ソファの暖かい場所で眠らせてもらうお礼に、粉ひき屋と家族に仕え、彼らを守る。病気や不幸が近づくとむせび泣いて警告する。家人が産気づき、必要とあれば産婆を連れてくる。悪戯好きで脱穀したオーツ麦に灰を吹きかけたりもする。――※私見:座敷童のファクター。『千と千尋の神隠し』にでてくる口ナシにちょっと似た外見だ。
グラシャン支族。
マン島GLASHANは、裸で力が強く農家の手伝いをする男の妖精だ。若い仔馬や子羊に変身する能力がある。悪戯の仕方は度を越していて、石を磁石に変えて車を引きつけ寄せ道をそらしてしまうことがある。ときに人間女性に狼藉を働く。PHYNNODEREEはフェノゼリーともいう毛深いブラウニーだ。腕が長く腕力が強い。愚鈍だが供え物をすればとても親切に働く。
グラガッハ支族。
スコットランド、アイルランドGRUAGACHは、髪の長い、または、毛むくじゃらのグラシュティグとなる。男も女も豪邸・城館に棲みついて家事をしたり、家具を並べ替えたりする。怒ったときには悪戯をしたり、大騒乱を巻き起こしたりする。ミルクを供えておけば豪邸・城館を守ってくれる。アイルランドでは、オーガ(小鬼)やゴブリン、巨人、魔術師、ドルイド僧などを指す。――※私見:ドルイド僧をさしているというと山伏の格好をした天狗の類を連想する。
ドービー支族。
また、イングランド北部DOBIEドビーは、親切で役に立つ家つき妖精だが頭が弱く、ウェスト・ヨークシャーのドビーは邪悪な妖精で、古い塔や橋のそばにある農家・離屋を徘徊し通りかかった人に絞殺しようと待ち構える。
ドレイク支族(北欧渡来系)。
イングランドDRAKEは北欧・スカンジナビア半島にも存在するとても親切な家つき妖精で赤い帽子と服を着ている。敬意を払い供え物、そして暖炉の火種を絶やさなければ、返礼として薪の乾燥管理と貨幣・穀物をくれる。不快な硫黄のような体臭がするのですぐ察知できる。炎の尾をひく狐火に変身し飛行術も心得ている。昔、彼らの魂は呪われたマンドレイクの木に封じられたという。
未解明支族。
種族不明だが亜人タイプであることには違いない。さしあたり家つき妖精として多数派を占めるブラウニー=ホブゴブリンの支族として扱うことにする。
ウェールズのBWBACHSは小柄で肥った家つき妖精。単独で現れる。赤帽子、腹巻、毛皮を着ている。悪戯好きだが基本的には善い妖精。敬意をもって接し食べ物をきちんと供えれば、望まざる訪問者たちから家を守ってくれる。しかし友人や家族までも追い払ってしまうことがある。
オークニー諸島HOGBOY。ホグブーンともいう。同諸島の小丘に棲む。エールビールや牛乳のお返しに、トローからペットや家畜を守り、農具の修繕をしてくれる。うっかり小丘を壊したり場を乱したりすると灰色の小人がホグボットとしてその人間を攻撃する。
アイルランドPHOOKAは、ホブゴブリンで変身能力あり。ボロ着の老人、山羊・馬・犬・牡牛・鷲など。農作業・粉ひきを手伝う。他方で、旅人をからかい、ジャガイモや赤子を盗み、酔っ払いの夢に現れ、家畜牛を殺す。
アイルランドGIRLE GUARLEはランベルスティルトスキン(ドイツのルンベルツシュティルツヒェン)やトム・ティット・トットに類似した。ホブゴブリンだ。ギラ・グアラは自分の前を憶えている限り、忙しい織女に亜麻の織物を織ると約束。しかし織女があまりにも頻繁に織物を収奪するので。織女に魔法をかけて自分の名前を忘れさせた。しばらく経ってから織女が妖精の輪をみつけ、情報をききだし名前を思い出す。すると妖精は罵りながら、膨大な量の亜麻布を残して消えた。――※私見:大陸石器時代伝説。鶴の恩返しみたいな。
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引用・参考文献
ポール・ジョンソン 著 『リトル・ピープル』 藤田優里子 訳 創元社2010年




