資料/妖精分類・試案002 巨人・鬼族系妖精 ノート20160714
資料/妖精分類・試案002 巨人・鬼族系妖精 ノート20160714
【モンスター系妖精】
大神に対して悪魔的な、邪妖精の総称は、スコットランドでいうところの、ANSEELIE COURTで、狭義でいえば邪悪化したエルフだが、モンスター系の多くはここに属しているようだ。
モンスター系妖精といっても、今回は人型をしたキリスト教世界でいうところ悪魔に近い存在で、ギリシャ神話・北欧神話の影響を受けた邪神・鬼族に類するモンスター系妖精を扱う。それは大別すると巨人族・人食いといった武闘派と次に述べるインテリ派が存在する。今回はかつて神・亜新に対抗していたという巨人族系を中心に、人食い鬼系妖精を添えて述べてみたい。
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その1 巨人族妖精
北欧神話にでてくる巨人族トロルは大神オーディーンに対抗して別世界をつくっている。同じ語源からきているギリシャ神話のタイタンあるいはティターンはそこから分派する形でゼウスとその一族からなる神族を輩出し妖精ニンフ及び人間を統括するに至っている。日本においては天津神スサノオを娘婿に迎えて国を譲る国津神・大山祇というのを音読みするとタイザンになる。また『常陸風土記』や全国各地の伝承にでてくるダイダラボッチは大ダラ法師となるわけだが、大ダラのところがタイタンという言い回しをするところがあるらしい。これもまた大陸中央部では失われた石器時代・大陸神話が保管されていた一例だろう(以上私見)。
ここから『リトル・ピープル』の引用。
スカンジナビアのトロルと同じくナイトクリーバー、ナイトスティーラーの異称で、陸・海のトロルが存在する。スコットランドTROWSという。トローには海のトローと陸のトローがいる。SEA TROWSは陸のトローに追われて海に入った者たちだ。
奇妙に傾いた頭、平で丸い脚、水掻きのある指、つぶれた猿のような風貌。愚鈍、悪戯好き、漁師から物を盗んだりからかったりする。水の外には滅多に現れないがゆっくりとしか歩けない。
シェットランド諸島、オークニー諸島のHENKIESは、トローの別称で、小さくて醜悪な小さな生き物だ、脚を引き摺りながら歩いたり、膝を抱いて手を握り締め奇妙なダンスを踊る。――※私見:シートローは日本でいえば海坊主だ! ヘンキーはそれが矮小化したもので蛸のようにイメージできる。
アイルランドFORMORIANS(フォーモール族)。歪んだ姿をした海生生物。額の真ん中には一つ目、三列に並ぶ鋭い歯がある。腕も足も一本ずつだ。トゥアサ・デ・ダナーンによって海へと追放された妖精族の末裔。夜間のみ海岸にやってくる。――※私見:火星の衛星の名前みたいだ! ファハンに外見が似ている。
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その2 人食い鬼系妖精
ギリシャ語の人食いに語源は、ANTHROPOPHAGIは、鼠蹊部に小さな脳。目が肩、口が胸にあるモンスター系妖精だ。――※私見:中国『山海経』にでてくる天帝と争って首を跳ねられてもまだ流刑地で生きて舞を踊っている軍神・刑天はまさにこんな格好。日本の怪獣映画でいえばウルトラマンにでてくる『ジャミラ』だ。
スコットランド・アーガイル地方レン・エティヴの妖精FACHANは――目・手・腕。脚・爪先が片方ずつしかない、全身毛むくじゃらで翼のある身体の中心から集まっている。飛ぶことを望み、生きているものを嫌う。鳥に嫉妬し、鋲が撃たれた棍棒で山の自分の棲家か付近へ侵入してきた人間を襲う。単独で出現する。――(※私見)中国『山海経』や日本の妖怪のなかにも同族がいる。
アイルランド・スコットランドのFIR DARRIGは醜く肥っていて毛深い邪妖精で、ふつうは赤いボロ服を着ている。浅黒い皮膚に長い鼻、そして鼠のような尻尾。歩く時にはシレイラという先端に髑髏をあつらえた杖に頼る。海や湿原、沼地のそばに棲み、泳ぎがうまい。そこで死肉を探し貪り食う。スコットランドにおける妖精の別称で、忘れっぽい人のことをさす。――※私見:野犬のような印象を受ける。
スコットランドのCAILLEAC BHUERは、ブルー・ハグ、ブラック・アニス、ストーン・ウーマン(石の女)の異称。あるいはBLUE HAGともいう。黒色や青色のボロボロの衣服を着ていて、青服は特に青い妖婆と呼ばれ、スカイ島の青い妖老はポーカンという。中世に出現し、冬の夜を徘徊し、人間を襲ったり殺めたり夜の旅人を八つ裂きにしたりしてきた。鋸歯で青い瞳の独眼。棍棒の先端には烏の頭がある。夏の間、彼女は木の根本に埋めるのだが、掘り起こして所持すると、あらゆる宿命から逃れられる力が与えられる。――※私見:山姥だ! オークルあるいはオーガの一族・小鬼に属する者と判断する。
アイルランド・スコットランドFIR DARRIGは、醜く肥っていて毛深い邪妖精だ。浅黒い皮膚に長い鼻、そして鼠のような尻尾。歩く時にはシレイラという先端に髑髏をあつらえた杖に頼る。ふつうは赤いぼろ服を着ている。海や湿原、沼地のそばに棲み、泳ぎが上手い。そこで死肉を探し貪り食う。スコットランドにおける妖精の別称で、忘れっぽい人のことをさす。――※私見:屍食鬼。
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ここまではモンスター系の邪神・鬼族のなかでも武闘派とでもいぶき巨人族・食人鬼だったので、ここから先はインテリ派である牧神パーン系について述べたい。引掻回役トリックスターの要素ちながら、冒険者たちの敵となったり味方となったり、大変色気のあるファクターである。
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その3 牧神パーン系妖精
ギリシャ神話にでてくるFaun牧神パーンは牧羊神・半獣神とも訳される。父親が妖精、母親は人間であるため上半身が人間で下半身が羊という容姿である。アカデミー賞受賞映画『パーンズ・ラヴィリンス』に登場するようにいささか悪魔めいたトリックスター的な性格をしている。ゆえに悪魔という説もある。概して冒険者たちを死ぬほど怖がらせるものの外傷を与えようとまでは考えていない。――※私見:混乱を意味するパニックは牧神パーンからきている。
イングランドのROBIN GOODFELLOWはパーンの異称だ。PUCK、ジャック・ロビンソン、ポークとも呼ばれている。森の国に棲み、冒険者たちが彼の領域を通過すると、道化の姿で登場し、笛を吹いて強制的に踊らせたり、また、馬に化け背に乗せ沼地においてきぼりにしたりもする。ロビン・フッドに関連付けられもするが、彼の存在はエルフあるいは人間であるところのアングロ・サクソン族英雄だともいいそのあたりははっきりしていない。
スコットランドURISKSは湖・沼地に棲み、髪はまだら禿げ皺くちゃで痩せこけた容姿だ。直感・通力が冴え、知的好奇心に富み案外義理堅い。冒険者パーティーに加わりたがる。
(次回へ続く)
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引用・参考文献
ポール・ジョンソン 著 『リトル・ピープル』 藤田優里子 訳 創元社2010年
ノート20150715




