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もう一度妻をおとすレシピ 第4冊  作者: 奄美剣星
Ⅲ 読書(訳詩含む)
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読書/ジョルジュ・シムノン『メグレと若い女の死』 ノート20160816

読書/ジョルジュ・シムノン『メグレと若い女の死』ノート20160816





ジョルジュ・シムノン『メグレと若い女の死』北村良三・訳 早川書房2004 ――本作品は、400字詰原稿用紙300枚相当の長編である。著者のジョルジュ・ジムノン(1903-1989)は、ベルギー生まれで、新聞記者から作家になった。メグレ警視シリーズは、1931年『怪盗ルトン』から始まった、数こそ多くないのだが、後進の作家に多大な影響を与た。警視は、漫画『名探偵コナン』にも、目黒警部としてパロディー化され、登場している。『メグレと若い女の死』は、メグレ警視シリーズのなかでも、傑作とされている。

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巻末の概要説明

彼女は、仮もののドレスを着て死んでいた……午前三時過ぎ、小さな公園の柵の近くに、彼女は横たわっていた。片脚には靴がなく、パール・ブルーのサテンもののドレスを着ている。大きすぎるようにみえるのは、たぶん倒れている姿勢のせいだろう。ドレスは新品ではなく、傷んでおり、布地も安物だ。肌寒い三月だというのにコートを着ていないのはなぜだろう? 現地へ駆けつけたメグレには、これが複雑な事件になる予感がした。あらためて被害者を視る。化粧は雨のために少し剥げていたが、それが彼女をいっそう若々しく魅力的にしていた――メグレ警視の推理が、大都会の孤独と死の真実を追う。

 地方から都会に憧れてでてくる若い女たちが多いことは世界中どこでも同じであり、金持ちの男に見初められはなやかな結婚生活を送る女もいれば、堕落して暗い街角で殺される女もいることも世界中どこでも同じである。本書にはそういった都会に出てきた若い女たちの悲劇がにじみ出るように描かれていて、とくに最後の事件のなぞがとかれるくだりでは、深い感動を禁じえない。人間の生死の判ら芽。人間の幸、不幸の分かれ目がいかにもろくてはかないものかが痛感されて哀しみに襲われる。

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登場人物

〈捜査陣〉

●メグレ……パリ司法警察の警視。部下の刑事たちに、ジャンビエ、リュカ、ラボサント、トルランスがいる

●ロニョン……第二地区の刑事

●フェレ……ニースの刑事

●ポール……法医学研究所の医師

●ムール……科学研究室員

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〈捜査対象〉

●ルィーズ・ラボワーヌ……殺人被害者の娘。結婚を控えた家出娘。母親はキャバレーの元女優でプロ賭博師ラボワーヌ。父親はヴァンクラムと名乗る詐欺師。

●エリザベス・クマール……洋装店の女主人。召使はヴィヴィアンヌ。

●ジャニーヌ・アルムーニュ……ルィーズの友人。婚約者(→夫)がマルコ・サントニイ(42)。叔母がマドモアゼル・ポレ。

●クレミュー夫人……背の低い老婦人。被害者に部屋を貸した

●アルベルト(35)……バーテンダー。コルシカ人。秘密賭博に関わり逮捕歴がある。

●ビィアンチ……ギャング団首領。部下に入墨のジャックがいる。

●ジュリアス・ヴァン・クラム……オランダ出身の詐欺師。相棒がジミー・オマリイ。ジミーは被害者ルィーズの父親。

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プロット

物語は、メグレ警視によって、名前のない若い娘の死体が、生前にどういう人物であったのか、まずは名前を知る。つぎに家族関係・誕生・死に至るまでの履歴を復元されてゆく。その結果として、犯人の殺人動機が浮き上がってくる。

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01事件発生

メグレ警視(探偵役)および捜査陣の紹介。殺人の発生。現状の紹介ルィーズ・ラボワーヌ。

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02概要説明

メグレ警視、第二地区の刑事ロニョンと捜査する。洋装店の女主人エリザベス・クマールの証言。被害者女性がみにつけていたドレスが安っぽいという話。被害者の名前は? 家族・友人は? 住所は?

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03(探偵とヒロイン)紹介

メグレ警視の家族は夫人のみ。女中のローズから、通報がある。被害者の娘の住所が判明した。胡散くさいクレミュー夫人のところに姪という触れ込みで下宿していたのだ。夫人は被害者の素姓を知らない。

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04仮説

証言者から、(※ギャング団首領ビィアンチの偽名である)サントニィ(42)の存在が浮上。被害者女性との関係。――愛人関係か?(実は父子)。安っぽいのではあるが、殺されたときにドレスを着ていたのは、結婚式の準備をしていたのではないのか?

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05裏動機

サントニィとは何者か? 友人の証言だと、浮気っぽい。結婚は長続きしないはずだという。被害者友人ジャニーヌ・アルムーニュの紹介(履歴)。

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06仮説崩壊

第二地区のロニョン刑事が、被害者の母親の消息を知り、実父が闇世界で名が知られた詐欺師ヴァン・クラムと線がつながった。――サントニィなる人物との線が消えてしまった。いったいサントニィなる者とは何者か?

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07動機

被害者ルイーズは、文無しになって、結婚相手サントニィのところに身を寄せたジャニーヌ・アルムーニュに手紙をだした。金の無心をした。ルィーズはその足で殺人現場にむかって殺された。――メグレ警視はここまでつかんだ。バーテンがルィーズを匿っていたようだ。

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08閃き

バーテンの情報。ロニョン刑事にいわなかった情報をメグレにいう。バー〈ロメオ〉地下が、被害者女性と、殺人犯とが会った場所だ。そのあと二人は車で犯行現場にむかった。――メグレは、バーテンを署に連行する。

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09全容解明

ギャング団ビアンチ。娘のルィーズをアメリカに逃走させるため、洋服屋をつかって被害者の娘の身元証明書を確認させる。生活に困っていた被害者の娘は、洋服屋から駄賃と引き換えに届け物を頼まれてビアンチ一味と接触する。ビアンチ一味の目的は彼女の身元証明書だ。それでパスポートを得て、被害者の娘になりすまし、アメリカに逃亡した。被害者の娘はその際、下手に抵抗して、助けを呼ぼうとしたので、殴り殺された。――ギャング一味であるバーテンがすべてを自白した。

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