読書(18C・仏・怪獣小説)/ 『クロコディル』 ノート 20160816
18世紀フランスのゴジラ 『クロコディル』 ノート 20160816
ルイ=クロード・ド・サン=マルタン著『クロコディル――18世紀パリを襲った鰐の怪物――』今野喜和人・訳 国書刊行会2013年
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本作品は102編(原稿用紙300枚相当)で構成される。
物語の冒頭、南米にあるフランス領ギアナから、フリゲート艦が絶望に満ちた調子で母国に帰還してきて、アカデミーに事態を報告した。右往左往とするアカデミーは会議に次ぐ会議だ。
以下は帯紙にある梗概。
「大革命前夜、物情騒然たるパリに突如出現したワニの怪物と、超能力を駆使するエリアザールとの時空を、超越した戦いを魔術やSF的発想をふんだんにちりばめて描いた、/18世紀フランス最大の神秘思想家による奇書。/フランス革命前夜、ルイ15世治下のパリ。不吉な天文現象がパリに災いが起きることを予告するなか、飢饉の波が押し寄せ、財務総監の無策に起った民衆による反乱が勃発する。その時、突如巨大なワニの姿をした怪物が姿を現し、瞬時のうちに反乱軍と正規軍を呑みこんでしまう。暴徒を操る怪物に対し、異能の持ち主エレアザールは、超自然的存在の助けを借り、超能力を駆使して、怪物と配下の精霊に戦いを挑む。怪物の正体とは_ 怪物の目的とは? 魔術、笑劇、SF的発想をふんだんにちりばめながら世界中の、陸、地、地下、天上、そして古代ギリシャへのタイムトラベルまで、時空を超越する物語によって西洋近代批判をした、18世紀フランス最大の神秘思想家による奇書中の奇書。」
反乱軍の首領はスペイン人のロゾン。正規軍と反乱軍が会戦したのはサブロンの野だ。両軍を呑みこんだ大鰐・クロコディルは全長9メートルもある。大鰐は、「世界は自分の身体で構成され、学問の体系は自分が決めた、世界中の騒乱はすべて自分が関連している」と言い放った。右往左往する、アカデミー会員たちを尻目に、著者の分身たる、ユダヤ人、エレアザールがこの怪物と問答をする。その際、古代世界にタイムスリップ、異世界旅行、はたまた精霊召喚を互いにやる。そして超人エレアザールが怪物を論破するや、毒液と兵士とを吐きだした。戦いのあと、怪物はエジプトピラミッドに封印された。悪事を働いた者たちは終身刑となった。
――18世紀フランス版のSF『ゴジラ』だ! 日本なら襲われるのは東京だが、フランスだからパリになる。映画『Gozzira』1998でいったら、エレアザール役はジャン・レノとなるところか。物語は、『シン・ゴジラ』2016みたいに、アカデミーは会議ばっかりやっている。しかし、1998みたいに突如、ジャン・レノみたにな英雄が活躍する。ただし、ここにでてくる〝ゴジラ〟は饒舌で、対抗する〝ウルトラマン〟も論客である。全方位ビームVSスペシューム光線は、哲学論戦バトルに置き換えられる。




