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もう一度妻をおとすレシピ 第4冊  作者: 奄美剣星
Ⅲ 読書(訳詩含む)
56/100

読書/デュ・モーリア「動機」 ノート20160728

 デュ・モーリア「動機」は、名探偵ブラックが活躍する、400字詰め原稿用紙100枚強からなる短編ミステリである。

 英国女優だった原作者は1931年の長編『愛はすべての上に』でデビューし世界ヒットさせ、ヒッチコック監督に気に入られ短編「サイコ」「鳥」を映画化させた。恋愛・悲劇・推理を手掛けどれも秀作とされ、訳者は万能作家と解説するのだが、日本での紹介は翻訳体制に問題があって才能の割にはあまり知られていない。女優だった若き日は数々の浮名を流し、夫は近衛将校で中将に出世。子宝にも恵まれ晩年は憧れの地コンウォールに引っ込んで創作活動に励む。死後、バイセクシャルと発覚する。

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01 事件発生

富豪と結婚し出産を間近に控えた被害者が謎の拳銃自殺をした。第一発見者は執事・家政婦、医師、警察を立ちあわせた上で夫に連絡。夫は職場にいてかけつける。

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02 探偵登場

妻の死は妊娠によるヒステリー症状からの自殺だという医師・警察の報告に疑念をもった夫は、探偵に依頼する。被害者との馴れ初め、唯一の身内・スイスの伯母の紹介をする。

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03 容疑者紹介

スイスの伯母登場。里親。実態は実父から養育を託された家庭教師。被害者の資産を着服していた。実父ワーナー氏の存在を知る。被害者を5歳で引き取ったというのではなく実は15歳で引き取っている。

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04 仮説

ワーナーは嘘の情報を伯母役の家庭教師に教えた。列車事故による記憶喪失ということになっているが、列車事故ではなく、別な事故によって被害者は記憶を失った。探偵はロンドン銀行で実父が娘の家庭教師に送った小切手の流れを閲覧し、家庭教師の証言のウラをとった(探偵は被害者の記憶喪失の理由が自殺の死因につながると考える)。

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05 裏動機

ハンプシャー・ロングコモン諸聖人教会。ここの牧師館に被害者の両親がおり、優しい母親は病死。探偵はパブで聞き込みをする。父親は俗物牧師との証言。被害者は母親を亡くしたとき10歳。母親が亡くなったとき被害者は寄宿舎にいた。15歳のとき被害者はリュウマチで寄宿学校をやめたときいた。しかし教会のハリス爺さんの証言で、列車事故ではなくリュウマチを患ったと判る。病気が夏休みで帰宅してからおきたのに、実父は学校の責任だと尋常ならぬものいいで学校にクレームをかけた。共学寄宿制のセント・ビーズ校にいった。

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06 仮説崩壊

セント・ビーズ校。校長ジョンソンは、最初隠していたのだけれども、妊娠五か月となり学校を辞めたことを証言する。学校の男子生徒ではないと言い張る校長。被害者過去の偽装1は伯母を名乗った家庭教師、偽装2は実父だ。探偵は実父の性癖の酷さを知るにつけ被害者を憐れむ。

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07 動機

探偵が牧師館の庭師のところにゆくと、庭師の娘である被害者の幼馴染がいた。村に犯罪者らしい存在はいない。ただビール・ホップ摘みの季節労働者たちがきていてガラが悪かったので、父親から近づくなと注意されていた。被害者は(この連中にどうも強姦され妊娠したらしい)実家に戻された被害者は、実父によって出産のため、リュウマチ治療の口実でコンウォールのカーンリースの病院で男の子を出産したということを知る。再び寄宿学校にゆき寮母に当時のことをきくと、被害者はセックスによって妊娠するという知識がなかったと証言する。(季節労務者たちに)強姦され妊娠した15歳時の被害者は――聖母マリアのような処女受胎だと信じた。

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08 閃き

コーンウォール・カーンリースの病院。探偵は退職間近な婦長をレストランに誘い、証言をひきだす。婦長は被害者の出産に立ち会う。五か月間、実父に頼まれて被害者の息子の里親になった。被害者から息子を引き離したとき、ショックで記憶を亡くした。引き離された息子はニューケイのセント・エドマンズ孤児院に託された。理事の1人が婦長の友人でエドモント・スミスという名前をつけてやったと証言。孤児院の院長からウラをとる探偵。現在はセールスマンになったと証言。

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09 全容解明

探偵は改めて執事のメモを読んだ。すると最後に夫人が会ったのは園芸用具のセールスマン、トム・スミスとあった。――被害者は実の息子と出会った。まずはトム・スミスが雇われている会社にゆく。部屋にゆく。被害者が亡くなったので注文帳から被害者が代金を払ったのを横領したのを告白。しかしトム・スミスは被害者が実の母親だとは気付かなかった。彼のところから依頼主の屋敷に戻った探偵は、執事から、自殺寸前の被害者の様子をききだす。――被害者は実の息子と再会してすべてを悟ってショックを受け――自死に至ったのだ。しかし残酷過ぎる真実は、依頼主には知らせず、警察と立ちあいの医師がいうように、妊娠時のヒステリー症状から起きたものとした。

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被害者・ヒロイン……レディー・メアリー・ファーレン。サー・ジョンの妻。

加害者……トム・スミス。被害者15歳時の私生児。孤児院を経てセールスマン。

黒幕……被害者の実父。ヘンリー・ワーナー神父。カナダで再婚。故人。

容疑者……被害者の伯母ミス・ヴェラ・マーシュ。実は家庭教師・里親。スイス在住。

容疑者……ジョンソン。セント・ビーズ(全寮制共学)校・校長。

依頼者……被害者の夫、サー・ジョン・ファーレン。

証言者たち……執事。医師。諸聖人教会の庭師ハリス爺さん。爺さんの娘・被害者の幼馴染。寮母。被害者の妊娠を知る婦長。セント・エドマンズ孤児院。被害者の忘れ形見トム・スミスの雇い主。

その他……故ワーナー夫人・被害者の実母。

探偵……ブラック。スコットランド人。

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※用語:サナトリュウム(療養所)。

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