読書/ポオ 『アッシャー家の崩壊』 ノート20160724
ポオ 『アッシャー家の崩壊』1839年
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諸解説を読むと、幻想ものだとのことだ。幻想というとファンタジーになるのだが、どうしてもポオの話は、科学考証が入るので、私的にはサスペンスに感じる。
この短編小説の内容は下記で示したプロットの通りだが、ジャン・エプスタン監督・モノクロ無声映画 『アッシャー家の末裔』 (La Chute de la maison Usher フランス1928年)では馬車屋で述者「私」がナレーションをきくところから始まる。ほか次の差異がある。
ヒロインは双子の妹ではなく妻。主人公は妻の絵をリアルに描いてゆき、その結果衰弱してゆく。またラストにおいて、述者は主人公とヒロインを救出し三人そろって屋敷から脱出した。
――小説を読んだときは、述者「私」は、友人と、実は生きていた妹、を見捨てて一人だけ脱出というのは薄情だろう感じた。映画監督も同じことを考えたのだろう。しかし実際、全員脱出になると白けてしまい、小説のほうがいい終わり方だ。また妻ではなく双子の妹としたほうがアッシャー家の近親婚伝統によって遺伝的飽和状態に達したことを物語るようで、その点も原作のほうがよい。そのあたりは映画化にあたって当時のモラルが許さなかったのだろう。――微細なことはともかく素晴らしい映像であった。
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01 発端……神経症を患ったロデリックが憂さ晴らしに親友の述者を招待する。
02 背景……不気味な田舎屋敷アッシャー家。遺伝的な神経症を発症したロデリック。
03 ヒロイン紹介……不死の病に冒されていた双子の妹マデライン。
04 仮説……マデラインの病死。
05 裏動機……兄は妹を溺愛するあまり屋敷地下に埋葬しようとするのだが「私」が反対。
06 仮説崩壊……屋敷から離れた墓所に葬るが亡きヒロインの気配が。
07 動機……屋敷から不気味な音がしてくる(実は老朽化による亀裂)。
08 閃き……マデラインが実は生きながら埋葬されていたのではないか。兄妹の死。
09 結末……建物の亀裂があり落雷で一気に崩壊。述者は命からがら逃げだす。
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登場人物
主人公……ロデリック・アッシャー。同家当主。遺伝的な神経症に悩まされる。
ヒロイン……マデライン。双子の妹。妻的な存在で不治の病に侵されている。
述者……ロデリックの幼馴染。
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