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もう一度妻をおとすレシピ 第4冊  作者: 奄美剣星
Ⅰ 随筆
4/100

随筆/ホットティー、アイスティー ノート20140414

 昨日・日曜日、親戚の法事があり母の供をして……というより運転手として会津にいった。日中はと市内見物でもしろというので、家内と定番コースである鶴ヶ城や飯盛山にむかうことにした。当地を舞台とした前年二〇一三年のNHK大河ドラマ『八重の桜』ヒロイン・綾瀬はるかのポスターが市内のいたるとこで貼られているのが否応にも目に入る。

 女連れというのは休憩時間が多くなる。それでたまたま前を通ったワシントンホテルに入ったわけだ。

 午前十時からラウンジが開く。カウンター前には金メッキされたいくつかの棒に、紐を連ねたバリケードが置かれていた。その向こう側に、スーツの女性従業員が、開店前の最後の準備をしていた。小柄だが均整がとれていて、女優・紺野美沙子の若いころに似ていた。なかなかの美形。定時となりバリケードが避けられる直前に家内が化粧室にゆくといった。それで窓際禁煙席に座って注文をした。まだ客は私一人しかいない。ワシントンホテルといえばケーキが美味い。ドリンクセットを頼む。

 さてそこでだ。

「お飲み物は何になさいますか?」

「紅茶を二つください」

「温かいものと冷たいものがありますが?」

「温かいものを一つ。そうですね、それから冷たいものを一つください」

 四人掛けの席。向こう側に座るはずの家内はまだきていない。

 ほどなく厨房から伶人がでてきて、テーブルに飲み物を置いた。私の側にホットティー、家内の側にアイスティーだ。どちらがホッとティーでアイスティーかなぞ、ききもしない。しかし彼女は、ファミレスで研修期間中のぼんやりしたアルバイト生なんかとは比較対象とするのもためらわれるほどに、凛とし、確信をもってカップとグラスを配置した。

 しばらくして家内が戻ってきて席に着いた。

「私の注文内容をきかずともいってくれるなんて、さすが!」

「長く連れ添っているからね」

 それはそうと、あの美女はなぜ、私がホットティー、妻がアイスティーだと察知できたのだろう。私は次に運ばれてきたケーキを口にしながらずっと考えていた。どちらかといえば、アイスティーを頼むのは男で、ホットティーを頼むのは女だ。それだのに、美女が見抜いたのが不思議に思われた。

 ホテルをでる際になって、私は、家内にいった。

「……それで、あの美人さんが私と君に、正確に意を察して、ホットティーとアイスティーをだした理由をこう考えてみたんだ。つまり彼女は、私が第一に迷わずに注文したホットティーを自分で飲むものと判断した。それから、第二に注文したアイスティーといったとき、私が君の好みを思案してから注文したため、君が飲むものと判断した」

「ああ、なるほど」

 家内は暇人である私の推理を珍しく素直に褒めた。

 推理といえば……そういえば思いだした。ミステリー作家・赤川次郎氏って、前職がホテルマンだったって話ではないか!

   END 


   ノート2014.04.14

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