読書/フェニエ 『フクシマ・ノート』 ノート20160823
ミカエル・フェニエ 著
『フクシマ・ノート――忘れない、災禍の物語――』
義江真木子・訳 新評社 2013年
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フランス人の文学博士で日本在住。中央大学教授。2012年、本書でエドゥアール・グリッサン賞を受賞した。
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帯書・とじ込み
紹介/ハーフライフ(半減の生)を乗り越え、人間としての明晰さを保ち続けていくために。大震災の記憶が私たちの心奥に刻むもの。自然と文明、人間の生と先人の思索…、震災を生きたあるフランス人作家の手記。
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口上/3年を経ずして「フクシマ」はすでに忘れられた、というのが現在の僕の印象です。【…】僕たちは地震と津波の被災者の苦悩を忘れました。【…】何日間も続いた不安、情報操作とウソを言い逃れに振り回された日々、東京でも避難の必要性が検討されたこと、日本がふたつに分断されなかったのはたんなる偶然であり、風向きに助けられたにすぎないこと。【…】人類史上かつてなかった規模の海洋汚染が発生したこと、汚染は現在もつづいていること。それも忘れました。水のなかで叫んでも、誰の耳にも聞こえないのです。停電があったことも、節電の約束も忘れられ、いままた照明が灯り、ネオンがじりじり音をたてて輝き、町じゅうで以前と同じエネルギーの無駄づかいがおこなわれています。しかたがない、忘れるのですから。【…】僕は、この本を、僕たちの内部に形成されつつある石と氷を斧で割るために、わずかでも光が射しこみ、記憶が動きだし、空気が循環することを願って書きました。(本書「日本の読書のみなさまへ」より)
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目次
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日本の読者のみなさまへ……1
序……9
第Ⅰ部 扇の要……15
第Ⅱ部 海から救いあげた物語……87
第Ⅲ部 ハーフライフ(半減の生)、使用法……209
結……295
訳者……298
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感想文/
同情してくれてありがとう。でも何もしないと過疎になるここで、僕らは生きなきゃならないのさ(※一介の地元読者)。
ノート2016/08/23




