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AQUA  作者: 小林 達也
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第一章~二曲目【出会いと出会い】

 「ここ、か……」


 宏隆は十五階はあるであろう、ビジネスビルの入り口に立っていた。駅前にあるビルで、電車を下りて五分足らずで到着した。宏隆は、透明な自動ドアに写る自分の姿を見ながら、髪型やスーツの襟を整える。


 「よし、いくか」


 深呼吸を一つした後、意を決してビルの中へと入っていった。






 そのビジネスビルの七階が、宏隆の目的地であった。階段を上り、七階に到着する。階段を上りきりフロアに出ると、正面に半透明のガラスに覆われた事務所――――レイクブルーがそこにはあった。


 宏隆は、半透明のドアに覆われた入り口に立った。すると、急に音が鳴り、インターホンから声が聞こえてきた。


 「どちらさまでしょうか?」


 「本日面接の予定で来ました、真島宏隆と申します」


 「真島宏隆さんですね。お待ちしてました、どうぞ」


 インターホンが切れて、ドアが勝手に開いた。宏隆はその中をゆっくり進み、エントランスらしきところに出る。そこには女性が一人立っていた。二十代半ばくらいであろうか、ウェーブがかかった長い髪をした女性であった。


 「こちらです」


 女性は手招きしながら、廊下を歩き始める。宏隆はそれについていった。廊下の途中には様々な扉が見えたが、おかまいなしに女性は突き当りまで歩くと、立ち止まった。ドアノブを回して中に入る。宏隆もそれに続く。


 「失礼します」


 部屋の中は、小さな会議室のようになっていて、正方形をしたテーブルが真ん中にあり、パイプイスが手前に一つ、奥に二つあった。そのうち奥の一つは、既に男性が座っていた。年齢は五十代前半あたりの渋いおじ様、といった風貌をしていた。白髪が混じっているのも印象的である。


 「どうぞ、掛けてください」


 その男性は、笑顔でパイプイスの方へ手を差し出す。宏隆は、一礼して腰掛けた。女性が男性の隣に座ると同時に、男性は口を割った。


 「私は進藤圭助と言います。で、こちらは神園玲子さんです」


 「私は真島宏隆と申します。本日はどうぞ、よろしくお願いします」


 「まぁ、そんな堅くならんでいいですよ」


 圭助は微笑む。宏隆は思わず苦笑いをする。玲子が咳払いをして、口火を切った。


 「では、面接をはじめたいと思います」






 「どうでしたか、真島君は」


 玲子は、圭助に問いかける。面接が終わった小さな会議室には、玲子と圭助だけで、宏隆は既に帰路についていた。

 

 「いいですね。私は好印象でしたよ」


 圭助は玲子の方を向いて、笑う。圭助の手には、宏隆の履歴書が握られていた。


 「高校は偏差値が高い、難関校を出ているのに、難関国立大学を中退。そこからフリーターとして四年の間、様々な職種のアルバイトを経験」


 「それだけじゃなくて、簿記から危険物取扱責任者乙四種まで様々な資格を取得している」


 「面白い人間ですよね。希望理由も、今までやったことがない職種だから、アイドルの売れ行き次第で報酬が変わるから。というのも面白い……でも」


 「でも?」


 玲子が聞き返すと、圭助は頷いた。


 「なによりいい瞳をしている。気に入りましたよ」


 「では、採用でいいですね?」


 「はい。これで四人、丁度いいくらいでしょう」


 「あとは……アイドルの募集をかけるだけですね」


 「はい。楽しみですよ」


 圭助の満足した表情を、玲子は横目で見ていた。


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